青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

平賀郷雪屏風

2019年02月19日 17時00分00秒 | 弘南鉄道

(夜の帳に冴える@柏農高校前駅)

この日の宿泊は、弘前の郊外にあるビジネス旅館で寝るだけの素泊まりなので、チェックインは遅くてもOK。旅へ出ればゆっくりと宿で寛いで、地元の美味に舌鼓を打ちながら一献やるのもそりゃ結構だろうけど、そーいう意味ではまだまだ自分は落ち着きがないのだろう。雪の夜の雰囲気も捨てがたく、弘南線高校シリーズは朝の東高前から尾上高校前、そして最後はこちら柏農高校前駅にやって来た。こちらも尾高前の駅と同じく雪原の中、水銀灯が光り輝く停車場。


弘前行きの電車が到着して、真っ白な雪原の中の停車場に光が零れる。「柏農(はくのう)高校」とありますが、最寄りの高校の正式名称は青森県立柏木農業高校。「柏木」という行政地名は現在は消滅していますが、昭和30年まで現在の平賀駅を中心とした地域が南津軽郡柏木町だった事に由来します。平賀駅から10分くらい歩いた場所に柏木温泉なんてのもあったりしますね。

 

昼間ほどではないけれど、相変わらず強い風と共に舞い上がるビロードのような横殴りの雪が降っている。軽く乾いた雪なので、強い風に雪が転がって勝手に無数の小さな雪だるまが出来ている。誰もいないホームから見渡す一面の雪原は周囲の街灯りを拾ってほの明るいのだけど、その雪原のはるか向こうから、吹き付ける雪を突いて列車がやって来た。


黒石行き43列車、定刻に到着。下車客1名、柏農高校前の駅を去る。


風がしのげるだけでも暖かそうな柏農高校前の駅の待合室は、高校生のデザインなのか「LOUNGE」の文字が掲げられ、きれいに整備されている。列車が去ってしまうと、吹き付ける雪はますます強くなった。冬の津軽の風は北風ではなく西風だ。低気圧が発達をしながら日本海を通過する際に、日本海から津軽平野に吹き込む強い西風が、低温の軽く乾いた雪を巻き上げ地吹雪となるのだ。

降り積もる雪 雪 雪 また雪よ
津軽には 七つの 雪が降るとか
こな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪
みず雪 かた雪 春待つこおり雪
(新沼謙治「津軽恋女」)

遮るもののない場所で地吹雪に巻かれ立ちすくんでいると、改めて冬の津軽を頭の中で新沼謙治が歌ってくれる。
風と雪が、ホームを歩く私の足跡を、あっという間に消してしまった。
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