青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

源平の 歴史に残る 逆落とし。

2023年07月28日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(鵯越の坂落とし@鵯越駅)

時は1184年(元暦元年)。数々の戦いの中で功を遂げ、朝廷に近い位置に上り詰めて権勢栄華を極める平家一族。傍若無人さを極める圧政に苦しむ中、平家の総大将ともいえる平清盛に立ち向かったのが源頼朝・義経を中心にした源氏の一族。国を東西に分かつ戦いの中で、両軍が相まみえた摂津国一ノ谷。陣を張る平家側の兵士たちを、松明をくくりつけた鹿とともに断崖絶壁の上から急襲し平家側を撃破した源氏軍。その危険を顧みぬ勇猛な進撃は、「鵯越の坂落とし」と呼ばれ、後世に語り継がれる源平の戦いの一幕ともなっています。

そんな歴史に名を遺す「鵯越」の地を、50‰の急勾配で越えて行く神鉄の電車たち。トンネルの向こうのレールが見えないあたりに、その勾配の厳しさが窺い知れます。神鉄の勾配は最大で50‰となっていて、1kmで50mを登るくらいの坂道が最大値になっています。急勾配をどこもきっちり50‰で収めているところを見ると、おそらく最大で50‰を超えないような規格で建設されたと思われるのですが、神鉄の恐ろしいところは総延長約70kmの営業距離の約8割が勾配区間で、そのうち2割が50‰。ひたすら山坂を上り下りしている路線ということになる。なんともまあ、足腰の鍛えられる路線だこと。

準急は通過し、たまに思い出したように普通列車がやって来て、六甲山系に登るハイカーたちを降ろしていく。この駅から登るのであれば、菊水山だろうか。菊水山と言えば、それこそ鵯越から鈴蘭台にかけての六甲山中に菊水山駅という秘境駅があったのですが、平成17年に休止。ほぼ、菊水山に上るハイカーしか使わなかったと聞き及びますが、どっこい駅は廃駅となった今でも設備が現存していて、車窓からその姿をお手軽に見ることが出来ます。

駅前にあった「ひよどり商店」という茶店兼酒店。昔ながらのコカ・コーラの看板があって、いかにも古くからの街の景色を見守っているようだった。休日はやっていないようだったけど、かつてはハイカーたちの喉を潤し、一服つけるような駅前のオアシスだったのだろうか。以前来たときは、人の暮らしと住民の顔がもう少し見えたように思う鵯越の駅。「里山キッチン」の看板を掲げた弁当屋をはじめ、周辺の店も軒並みシャッターが降りていて、かなり利用状況には厳しさがあるのは気がかりなところ。

リバイバル塗装が、歴史の谷を越えて行きます。


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