青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

温泉行きたくないですか!

2020年05月27日 17時00分00秒 | 温泉

(湯けむりの向こうに@野沢温泉・真湯)

全国に発令されていた緊急事態宣言が正式に解除になりました。解除と言っても、「これ以上自粛を求めて社会活動を止めたら経済も政権も持たない」という政治的思惑も絡めたなし崩し感はあります。当然世の中からウイルスが消えてなくなった訳でもなく、マスコミや政治は盛んに「もう元の生活には戻れない」「ウイルスと共存するのがアフターコロナ」などと喧伝しておりますが、それはもう受け入れなければならない事実なんでありましょう。街の姿を見ると、駅前のパチンコ屋は早速営業を開始し、ほぼ身の回りも平常に戻って来たような気がします。飲食は・・・まあ、店開けててもさすがに客足がすぐには戻っていない感じ。AC(アフターコロナ)時代の食事は、ウイルスの飛沫感染を防止するために、食事の際も向かい合わずに喋らずさっさと食い終われということらしいのだが、食事中は喋るな、喋るなら食事後にマスクをしてから、なんてルールを求められて誰が飲食店(特に居酒屋系だよね)に行くというのか。

それはそうと、さんざっぱら我々今までジシュクして来たわけですけど、今何がやりてえかって聞かれたら、小難しい事は抜きにして温泉行きたいっすよね。とりあえず「緊急事態宣言解除された」って聞いてから、俗っぽい私は早速手に入るはずの一人壱拾万円の給付金を軍資金にすべく、各地のホテルや旅館をアプリで検索してしまいましたですよ(笑)。旅館に着いて、女将さんのウエルカムトークをやりすごしつつ机の上のお茶請けなんか頂いてさ。女将さんが「どーぞごゆっくり」なんて言いつつ下に降りてったあと、何となくテレビをつけて地方のローカルの夕方ワイド番組を10分くらい眺めて、んじゃー風呂入るべか、ってんでいそいそとスリッパペタペタ突っかけて大浴場に向かいたいのよ俺は。

んでさ、誰もいない脱衣所で一人でイソイソと浴衣なんか脱いで、誰もいないから浴場の電気なんかも自分で点けてさ。んで、ケロリン桶で湯船からかけ湯を掬ってかぶったら、一番風呂なもんだからカッチンカッチンに湯が熱くて、「あっちいなオイ!」とか誰に言う訳でもなく叫んでみたいのよ。んで、湯を冷ますのに桶でかき混ぜたり、掃除用のホースみたいなのから強引に水持って来て埋めたりと一人でアワアワしながら、何とか浸かれる温度になった温泉に肩まで入って「ムヴァァー」みたいな不気味な溜息を吐いてみたいんさ。

んでさ、水で埋めてても新鮮な熱い湯がドンドコドンドコ流れ込んでくるからさ、結局5分も経たないうちにノックアウトされて湯船のふちに座ってフーフー言ってるわけだけども、そしたら浴室の高いところについた窓から爽やかな山の夕方の風が入って来て、それと一緒に旅館の厨房から流れて来る夕食の焼き物の匂いがぷーんとして、「そうだそうだメシが6時から1階の藤の間だって言ってたわ・・・」なんて女将さんが言ってたことをにわかに思い出して、思い立って洗い場行ってシャカシャカと体を洗ったり良く分かんない健康器具でカカトこすったりするんですよ。

湯上がりのホコホコした体に浴衣一枚羽織って、生乾きの髪の毛のままペタペタと藤の間へ。あれ、ねーじゃねーかなんて広間の中を探し回って、隅っこに置かれた一人用の「〇〇様」なんて書かれた名札を見て安心してさ。んで、よく見ると名札に去年のカレンダーの裏紙を使ってたりするのがご愛敬だったりするんだよ。とりあえず自分のシマに座ってテメエのテーブルの上に並べられた晩餐を眺めつつ、隣のグループの料理と比べてあっちはオカズのグレードが高いだの低いだの品数が多いだの少ないだの、肉があるのないのと勝手な品定めをしてしまうのは人の性だし、仲居のおばあちゃんに「お飲み物、何かございますか?」なんて聞かれてとりあえずスーパードライの中瓶を頼んでしまうのはお約束。とりあえず乾杯する相手もいないので一人で「Asahi」の小さいグラスにコポコポと手酌でおビール注いで、突き出しの三種盛りに箸を伸ばす午後6時15分・・・

最近はどうしてもカメラを握って鉄道を撮り歩くことが主眼になっちゃって、なるべく駅チカの安いビジホに泊まりながらメシは近場でパパっと・・・みたいな行動になってしまいがちなのだけど、上記のようなベタベタな温泉宿に泊まる旅もヒサビにやってみたいなあなんて思ったわけで。おそらくこのコロナ禍の中で、どこのお宿も相当に厳しい経営になっておるのは想像に難くなく。

体調管理と予防を万全にして。
ぜひ訪れたい、あんな宿やこんな宿があります。

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時を超えてもいい湯っこ

2019年02月11日 17時00分00秒 | 温泉

(津軽の名湯・日本の名湯@新屋温泉)

尾上高校前の地吹雪の中で約2時間。すっかり冷え切った体を温めるために、平賀の町はずれにある新屋(あらや)温泉にやって来ました。「みどりの天然温泉」のキャッチフレーズでツウ(マニア)な温泉愛好家の方々の高い評価を一身に集める津軽の名湯であります。一般的な旅行好きの人に「津軽の名湯」って聞いたら酸ヶ湯とか青荷とかそーいう話になるのかもしんないけど、ほら、ここはそーいう一般的な話をするブログではないのはココをお読みの紳士淑女にはお分かりいただけるはず…


この新屋温泉が「名湯」と評されるのは、やはりその泉質の良さに他ならない。浴場については撮影禁止になっていたため貰って来たパンフレットで失礼させていただきますが、まずこの湯の美しさ。クリアなミントリキュールを思わせるエメラルドに輝くお湯。そしてお湯から放たれる芳醇な硫黄臭と、少しガソリンを思わせる揮発性の刺激臭の合わさった複雑な香り。入ればツルツルと滑らかな肌触りで、湯上り後はポカポカと温まる。あまり温泉の良さを伝える語彙力に乏しいのであるが、ここの良さは入ってみなけりゃわがんねなあという事で(笑)。


ちなみにココに来たのは15年ぶり。当時のデジカメ画像を引っ張り出してみる。基本的な浴室の作りは今も特に変わっていない。浴槽の真ん中から突き出る温泉のボーリング用のケーシング管から、噴水のようにサワサワとお湯が注がれている光景もあの頃のままであった。平日の真昼間ではありましたが、浴室には私の他に常に2~3人の客がいて、代わる代わる湯あみを愉しんでいる。パンフレットにはエメラルドグリーンに輝くお湯が紹介されていますが、今回は少し白濁してクリームメロンソーダのような色。体を洗って少し深めの浴槽に身を沈めると、地吹雪で冷え切った足先からジワジワと溶けていくようで、思わず「あ゛ぁ~」と声にならない声が漏れた。


湯上がりに休憩所で飲む炭酸飲料の美味さよ。番台で番をしていたおかみさんと目が合って少し話をしたのだが、「お湯が『いつエメラルドグリーンになるんですか?』ってよく電話がかかって来るんですけど、こればっかりは分からないんですよね~」と言って笑っていた。神奈川県から夜行バスに乗って15年ぶりに訪れた事を伝えたら「それはそれは遠いところから…」とエラく驚いていたのだが、おそらく私のようなマニアは決して少なくないハズだ(笑)。


青森はとにかくこの新屋温泉のような温泉を使った銭湯がそこかしこにあるのだが、そのどれもが信じられないほど朝早くから開いていてそして安い。だいたい朝5時半からやってて料金350円と言うのがスタンダードか。そんな朝早くから開けて客なんか来るの?と思うんだけど、それがガッツリ客がいてオヤジどもがザッバザバお湯を使っているのだよね。「エクストリーム出社」なんて言葉が世に出る前に、青森の人々は「エクストリーム銭湯」をガッツリ決めて颯爽と仕事に向かっていたのであろう。ちなみにココ新屋温泉はさすがに冬の時期は9:00開店で朝湯はやってないそうだが、4/1からは朝5:30のオープンだそうだ。しかも朝湯だと湯銭は200円。そら毎日来る人が来るのも頷ける。

15年前の外観と今の外観を、ほぼ同じ位置から撮影してみる。
変わってないなあ~!!なんて思っていたのだが、よくよく見ると細かいところは変わっているね。
変わらないのはお湯の良さだけ、か。
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東鳴子感謝綴り

2018年09月02日 19時34分02秒 | 温泉

(在りし日の姿@まるみや旅館)

若い頃、いや今も一応気持ちは若いつもりでいるんだけど、休みになるとクルマで日本中を適当にブラブラして、風景を写真に撮ったりネタっぽい場所に行ってみたり酷道を走ったりなんか美味いもん食ってみたり…という事をやっていた。そんな折、東北地方を訪れる時に一時期よく泊まっていた東鳴子のお宿がとうとう宿を畳んだと風の噂で聞きまして、一抹の寂しさを感じているところではあります。平成も30年、来年は否応なしに新しい元号を抱かなくてはならないという節目に、決断して行く人と物事の何と多いことか。ご無沙汰したまま見送る事も出来ず、その行方を風の噂で聞くほど不義理なことはないなあと反省しきり。


ここは農閑期の農民の方であったり、三陸地域の漁業者の方々だったり、日々の骨休めとしての逗留客と、術後の回復や慢性疾病の改善を目指しての療養客など、ある程度の長期滞在を前提とした「湯治」のスタイルを貫いてきた宿でした。そのため基本的には宿泊料が安く抑えられていて、部屋代だけで安く泊まる事が出来ました。この宿を何で見付けたのかは忘れてしまいましたが、最初のきっかけは何だったっけかな。なんかあんまりその頃ココロもカラダも調子良くなくて、気晴らしに温泉でも行ってくるか!みたいな感じで調べたら出て来たんだよなあ。勢いで電話かけて予約しちゃった記憶がある(笑)。

 

部屋には台所や冷蔵庫があって、やりたければ自炊でメシを作って過ごすことも出来ました。今でいうキッチン付きのウィークリーマンションのようなものですが、1泊4,000円で六畳一間の温泉入り放題という分かりやすいスタイルが大いに気に入って、ここを根城に東北のあちらこちらを旅したものです。自炊もしたことあるけど、部屋から近所のラーメン屋に出前とか取れるんで結構楽だった(笑)。大学の時、雀荘からラーメンの出前を頼みながらマージャン打ってた事あるけど、あの感覚に近い事が宿で出来るというのも新鮮であった。


薬効の誉れ高い茶褐色の温泉。この茶色い味噌汁的な色の湯は運動器官系に良いと言われていたが、今行けば常に付きまとう肩凝りや腰痛に効いたろうか。いつ行ってもほぼ独占で、他の湯客と同浴になる事は極めて稀だったけども、たまに湯船で一緒になって話がはずんだりもした。話相手のおっちゃんが歌津(南三陸)の人で、風呂上がりに部屋に来なよなんて言われて余った刺身をいただいたこともいい思い出である。袖擦り合うも他生の縁というヤツですが、何と言ってもこの宿の良さは、ただただ広いウナギの寝床のような静かな館内で、誰に何を言われる事もなく布団を引きっぱなしにして、ダラダラと部屋と温泉の繰り返しで過ごすもよし、私のように連泊しつつ昼間は外で遊んでくるもよしという自由さ。常識の範囲の節度を守れば、やれ食事の時間は何時だとか風呂は何時までだと宿の都合に合わせなくてもよいというところであった。


こちらは透明な重曹泉の混浴大浴場。ツルツルして気持ちの良い温泉であった。ここのご主人はお話好きの快活な人で大変世話になったのだが、基本的には「お客様の自由にしてもらう」という方針の人で、チェックインとチェックアウトの間は放っておいてくれてそこが居心地よかった。チェックインもチェックアウトもあるんだかないんだかというような自由な宿で、厚意に甘えて帰る日なのに昼過ぎまで部屋でゴロゴロしてからやっとこ「そろそろ帰ります~」なんて帳場に声を掛けた事もある。延長料金など取られたこともなくて、それを聞いたら「ウチは基本『何晩泊まったか』だからねえ」とあっけらかんとしていたのを思い出します。


正直その頃仕事がクッソ忙しくて、休みを取ると何もかも忘れたくて、前の日に電話で予約を入れ、常磐道を北に向かって走っていたような気がする。あれから15年近く経ったけど、今思えば当時はずいぶんと無頼な生き方に憧れていたのかな。そういう世を拗ねたような気持ちと、一人になれる開放感にこの宿がマッチしていたのかもしれない。出来ればまた、今度は子供を連れて行ってみたかったけど、その夢は叶わず。

今となっては何も出来ないので、長年の営業ご苦労様でした、と感謝の気持ちだけ送らせていただきます。
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シュワッと奥会津

2018年06月08日 17時00分00秒 | 温泉

(癒しの名湯@大塩温泉)

ちょっと小難しい話から離れて、休止区間にある大塩温泉を訪ねてみる。会津盆地から遡ると、柳津温泉から始まって宮下、つるの湯、金山の八町・玉梨、湯倉、大塩、滝沢と、奥会津の只見川沿いには小さいながらも非常に雰囲気の良い素朴な共同浴場を持つ温泉が続いていて、この地域を訪れる楽しみの一つとなっています。どこも鉄分を含んだ濁り湯で、きず、やけど、婦人病などに効能。飲めば便秘にも良いそうだ。強い塩分を含みぺたぺたするのが特徴で、湯上りにタオルで体を拭くと沈殿した鉄分でタオルが真っ赤っかになるんだよね。それだけ成分の濃い証拠ではあるのだが。ちなみに最初は会津越川の手前の湯倉温泉に行こうと思ったんだけど、源泉のポンプが壊れてしまってしばらく休業だとか。再開をお待ちしています。


大塩温泉外観。以前はもっと簡素なスレート葺きの見てくれだったのだが、最近建て直されたらしくとてもきれいになりました。小さいながらも、只見川の流れを見渡せる露天風呂もついてこれで300円なのだから恐れ入る。これからの夏の季節には嬉しい、ちょっとぬるめの長風呂向きの大塩温泉。湯上りに少し休んだりする広間とかもありますので、ツーリングやドライブの途中の休憩にはうってつけ。この日も後からバイクのオジサマたちが何人か連れ立って入って来ましたね。


只見線の駅名にも「会津大塩」「会津塩沢」と「塩」の付く地名が続くこの地域。塩辛い温泉を含め、塩分を含んだ水の湧出が多く見られたことがその理由だと思われますが、ここ大塩には温泉の他にも天然の炭酸水が湧き出す場所があります。最近はコーラやサイダーではなく、日本でも飲用のスパークリングウォーターが流行っていますけど、天然モノとなると相当珍しい。以前はもっとひっそりとした森の中に入ってった場所にあった記憶があるんだけど、ずいぶんと整備されましたね。


これが大塩の炭酸井戸。石で囲まれた井戸の底から、それこそ大量のガス分を含んだ水がゴボゴボと湧き上がっています。備え付けのヒモ付きのヤカンを垂らして水を汲み出しますが、間違ってもペットボトルなんかを持って井戸の中に顔を突っ込んではいけません。おそらく溜まっているガスを吸い込んで中毒になってしまうこと請け合い。ヤカンからコップに注いで飲んでみると、飲み口は適度に冷たく抜群のシュワシュワ感と酸味にほのかな塩味があって、それこそウィルキンソンのハードな炭酸水のようで非常に美味しい。ここに白角とか持って来れば無限にハイボール作れるよなこれ…。


休止区間の探索を終えて会津川口に戻って来ました。この時間、9時半過ぎに425Dが到着した後は、12時半の返しの428Dが出るまで3時間近く列車の動きはありません。野尻川の低いガーター橋の向こうに、428Dと会津川口の駅構内が見えます。駅前食堂で昼メシを頂いて、午後の只見線撮影に向かうと致しますか。
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