2月22日(木)
【おさびし十首選 塔2月号①】
待ち受けの猫を褒めおりてきとーに褒める女と思われながら(朝井さとる)
これから先出会ふであらうあたたかなおほきな匙を思つて眠る(金田光世)
空が言ふ、雨に言葉を借りながら。言いよどみつつやがてはげしく(金田光世)
空にもつと言葉はあると思ひたしにんげんがまだ知ることのない(金田光世)
地に落ちるときには同じ低く咲く草の花また梢の花も(川本千栄)
どんぶりをカツの最後のひと切れでぬぐいてすべて食べ終わりたり(垣野俊一郎)
ことばもてわかりあふとふ困難よつるつるすべる柿の皮むく(吉田京子)
まるで水のつづきのように水の上に睡蓮ひらく冬の温室(福西直美)
窓はある、それでも窓がないようなあなたの部屋にともす夕焼(澄田広枝)
まぶしいと思ふだらうかいくつものトンネルにつらぬかれて山は(千葉優作)