5月22日(月)
【おさびし十首ぐらい選 塔5月号①】
「よきかな」と微笑む河の神様のやう九ヶ月ぶりに会ふ父(岡本伸香)
海見えてあれはあなたの言ふのとは違ふけれどもきらめいてゐる(白石瑞紀)
借り物の体 借り物の感性 だからこれほど雪が冷たい(空岡邦昴)
筆順を追いて「飛」の字は九画と確かめるとき整う心(小林文夫)
そこだけが桜の木々に囲まれてぽっかり浮かんどる保育園(長谷川麟)
ドクダミの葉っぱがあおう生い茂る祖母の他界を知らんこの庭(長谷川麟)
雪沓に踏めば苦しむ雪のこゑしんしんと夜の団地にひびく(千葉優作)
ひえびえと水道管をめぐらせて建つあかつきの集合住宅【ルビ:アパートメント】
(千葉優作)
銀行に杖を忘れて引き返す母は確かに走りていたり(大木恵理子)
うるみたる眼にゆふぐれはうつすらとねずみ色なり底知れぬいろ(河原篤子)
二人とも足の小さな人だつた夕陽に向かふバスに乗りくる(新井蜜)
埋み火がほのあたたかい雪の夜はけものみちより亡きひとも来て(澄田広枝)
②につづく予定