映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」村上春樹・柴田元幸

2019年04月12日 | 本(解説)

反社会性だけではない

翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)
村上 春樹,柴田 元幸
文藝春秋

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サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が、
翻訳仲間の柴田元幸と共にその魅力、謎、すべてを語り尽くす。
ホールデン少年が語りかける「君」とはいったい誰なのか?
村上が小説の魔術(マジック)を明かせば、
柴田はホールデン語で、アメリカ文学の流れのなかの『キャッチャー』を語ってのける。
永遠の青春文学の怖さ、ほんとうの面白さがわかる決定版です。
「幻の訳者解説」併録。

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先に村上春樹さんによる翻訳の、サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読んだのですが、
本当はそこに載せるはずだった「解説」が
契約の都合で載せられなくなったということが書いてありました。
ぜひ読みたかったと思っていたのですが、
この本に載っていることを知り、早速手に取りました。


その「幻の訳者解説」部分には、サリンジャーの生涯についてが触れられていまして、
私は、映画「ライ麦畑の反逆児」を見ていたので、
それほど目新しい話ではありませんでしたけれど・・・。
それと、1980年ジョン・レノンの殺害犯、及び1981年レーガン大統領狙撃犯が、
それぞれ「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を愛読していた件にも触れています。
それにより本作の「反社会性」を取り沙汰されることも多々あるわけですが・・・。
本作、「翻訳夜話」ではありますが、翻訳上のことのみならず、
内容についてもたっぷり深い話をしてくれています。
そんな中で村上春樹氏は言う。


本作は高校生の男の子が若者的に純粋で社会の偽善性のようなものと闘うとか、
大人の価値観に刃向かって苦しんだり悩むストーリーととらえられることが多いようなのだけれど、
本当はこの小説の中心的な意味合いはホールデンの内面的葛藤というか、
「自己存在をどこにもっていくか」という個人的な闘いぶりにあったのではないかーーー。


全く同感です。
少なくとも村上春樹さん訳ではそういう方向性を大事にしていると思う・・・。
だから、本作に刺激されて暴挙に出るような若者は、
この本を本当にわかっていないのでは・・・などと思う次第。
まあ、人は文章を自分の都合のいいように読むものですけれど。

それから、本作の中で私も謎に思っていたアントリーニ先生のこと。
ホールデンはニューヨークをあちこちさまよい歩いた挙げ句、
ようやくただ一人信頼できそうなアントリーニ先生の家にたどり着きます。
ところが、夜中に目を覚ますと先生がホールデンの頭をなでている・・・。
ホールデンは先生を同性愛者だと思い、すぐにそこから逃げ出すのです。


本当に先生は同性愛者だったのか・・・? 
頭をなでていただけなので、ホールデンの早とちりというか自意識過剰とも思われますが・・・。
そこのところは村上氏、柴田氏共にやはり文章中だけではわからない、と・・・。
残念。
ただ村上氏は、
アントリーニ先生はホールデンを彼の考えている有効なシステムの中にあてはめていこうとしている。
しかしホールデンは自分のあり方をそのまま理解してほしいと思っている。
そのすれ違い感の結果ではないか、
といっています。


そしてもう一つ。
作中でホールデンが呼びかけている「君」とは誰なのか。
それについては、
本当はどこかにいるはずのだけれどどこにもいない友だち。
感覚や価値観を共有する友だち。
・・・でも実は彼の頭の中にしかいない友だち。
もう一人の自分、とも言えるか。


いろいろな読み方ができるものですね。
もう一度読みたくなりました。


図書館蔵書にて
「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」村上春樹・柴田元幸  文春新書
満足度★★★★.5

 


孤狼の血

2019年04月11日 | 映画(か行)

警察小説×『仁義なき戦い』

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私、ヤクザ映画はどちらかというと避けるジャンルではありますが、
役所広司さん、松坂桃李さん出演ということに興味を惹かれ、見てみました。
ところが冒頭から強烈なバイオレンスシーン。
やっぱり見るのやめようかと一瞬思いましたが・・・。

広島県の架空都市呉原。
昭和63年暴力団対策法成立直前。
尾谷組が支配していた一帯に広島の巨大組織五十子会系加古村組が進出。
双方の抗争がくすぶり始めています。
そんな時、加古村組関連の金融会社社員が疾走。
所轄署に配属となった新人刑事日岡(松坂桃李)は、
ベテラン刑事大上(役所広司)と組み、捜査にあたります。
ところがこの大上は、暴力団と癒着し、金、女、暴力、手段を選ばない強引な手法を見せます。
そんな彼に嫌悪と反発を覚える日岡。
そんな中で、尾谷組と加古村組の抗争は更に激化していく・・・。



見るのをやめようかと思ったのもつかの間、次第に引き込まれていきます。
原作は「警察小説×『仁義なき戦い』」とうたわれていたそうですが、なるほど納得。



日岡は単なる正義感を持つ新人刑事ではなく、
ある別の使命を秘めていたという多層構造がミソです。
そして、どうにもならない悪徳刑事と見えていた大上の秘めた信念こそが、
私たちの胸を打つ。
「孤狼」とはつまり誰を指すのか。
まあ、“読み”の上でも明らかではありますが。


正義を実行するはずの警察組織も次第に闇の力に飲み込まれていく。
そんなときにでも本当の正義を胸の奥底にいだき続けることの強さと孤独。
・・・かっこいいです。

さて、ヤクザを演じる皆さんのなんとも迫力のあること。
男性俳優の方は、いつかこんな役をやってみたかった、
と思っていたのではないかな。



江口洋介さん、音尾琢真さん・・・堂に入っている! 
おや、中村倫也さんまで。

そして、ピエール瀧さんがいい役どころで出演していました!
本作、2~3ヶ月前くらいのWOWOW放送を録画してあったものなのです。
もう少しあとなら、放送中止になっていたのかもしれません。
こういう役どころができる人ってそう多くはないので、
やはりぜひとも、いつか戻ってきてほしいです!


孤狼の血 [DVD]
役所広司,松坂桃李,真木よう子,中村獅童,竹野内豊
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

「孤狼の血」
2018年/日本/126分
監督:白石和彌
原作:柚月裕子
出演:役所広司、松坂桃李、真木よう子、滝藤賢一、音尾琢真、中村倫也、江口洋介、ピエール瀧

壮絶度★★★★☆
満足度★★★★☆


「あの映画見た?」井上荒野×江國香織

2019年04月10日 | 本(エッセイ)

その映画、見てない・・・

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映画の話をしているはずが、
いつのまにか自分たちの何かを語ってしまっている。
「ねえねえ、あれ観た?」「うわー、それ観たい!」
映画と物語をこよなく愛し、生活に不可欠なものと断言する仲良しの女性作家ふたりが、
いい女、いやな女、食べもの、三角関係、いい男、老人、子供、ラブシーン
などのテーマで選んだ100作以上の映画について語り尽くす一冊。
読んだらきっと、観たくなる!

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井上荒野さんと江國香織さんの映画にまつわる対談集。
一本の映画について詳しくというよりも、
「いい女」、「食べ物」、「ロードムービー」などテーマを決め、
それにまつわるいくつかの作品について触れていきます。


私は人よりも多く映画を見ていると自分では思っていますが、
それを始めたのがせいぜいここ15年くらい。
しかるに彼女らは若かりし頃からずーっとコンスタントに見ているようですね。
もちろん、DVDなどで見たものも含まれているとは思いますが。
そんなことで、古今の作品について触れられている本書中、
私が見ていないものも多々あります。
そしてまた彼女らの好みが、「ハートウォーミング」はダメ、と結構手厳しい。
私、精神年齢がお子ちゃまなので、
やはり幸せを感じるエンディングのほうが嬉しいですし・・・。


でもまあ、物語の語り手である彼女たちがそのように言うのはもっともだなあ、
と納得はできます。
そして、映画の一シーンで多くのことを語ることができるのは素晴らしいと
彼女たちは言います。
これを文章で表そうとしたら、ものすごく多くのことを描かなければならい、と。
映画なら、画面の明るさ、音楽、背景、
例えば空の青さだけでも多くのことを語りかけるといいます。
確かに、そうですね。
だから監督の手腕が問われたりするわけだ。


対談中に登場した作品については、いつの誰の作品であるのかなど
簡単な説明もついているので、映画選びの参考として十分活用できます。
私も見てみたいものがたくさん!

図書館蔵書にて
「あの映画見た?」井上荒野×江國香織 新潮社
満足度★★★.5


オリーブの樹は呼んでいる

2019年04月09日 | 映画(あ行)

樹齢2000年の古木と最新テクノロジー

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スペインのバレンシア。
20歳のアルマは、オリーブ農園を営む祖父と子供の頃から強い絆で結ばれていました。
中でも樹齢2000年の、ローマ人が植えたというオリーブの大木が二人のお気に入り。
子供の頃のアルマは、いつもその樹のところで祖父とともに過ごしたものでした。

ところが、農園の経営難から、アルマの父がその樹を売り払ってしまったのです。
それ以後祖父は認知が進み、言葉も話さず、最近は食事も喉を通らなくなってきました。
そんな時アルマは、ドイツの大手電力会社のロビーにその樹が据えられていることを知り、
なんとか取り戻そうと思います。

無理やり彼氏と叔父を仲間に引き入れ、
スペイン、バレンシアからドイツ、デュッセルドルフまでの旅に出ますが・・・。

思い込んだら一直線のアルマの行動力がすごい。
しかしあまりにも行き当たりばったりで無計画でもあったのです。
おまけに同行の二人には、ドイツの教会の中庭に植えられている樹を
返してもらえる話がついていると、嘘をついていて・・・。

実際には、電力会社に話を聞いてもらいたくても連絡さえ取れていなかったのです。
しかしアルマの思いとこの行動はSNSで流されており、
地元はもちろん、ドイツのデュッセルドルフにも興味を示す人々がいたのです。
また、この電力会社はオリーブの大木をイメージとし、
再生可能エネルギーなどと耳障りの良いPRをしながら、
その実かなりの環境破壊に加担しているというところもミソです。



樹齢2000年のオリーブの樹と、まさに最先端の現代。
その取り合わせが面白く、素敵な作品。



アルマを取り巻く友人や家族たちがまたいい。
それでもって、彼氏もなかなか良いぞ!
スペイン→フランス→ドイツという行程の旅なのですが、
どこにも検問はなく、スルーで行けてしまうのにはちょっと驚きました・・・。
(今どきのジョーシキ?)

オリーブの樹は呼んでいる [DVD]
アンナ・カスティーリョ,ハビエル・グティエレス,ペップ・アンブロス,マヌエル・クカラ,ミゲル・アンヘル・アラドレン
Happinet

<WOWOW視聴にて>
2016年/スペイン/99分
監督:イシアル・ボジャイン
出演:アンナ・カスティーリョ、ハビエル・グティエレス、ペップ・アンブロス、マヌエル・クカラ

無鉄砲度★★★★☆
祖父への愛度★★★★★
満足度★★★★★


マイ・ブックショップ

2019年04月08日 | 映画(ま行)

女の敵は女

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1959年イギリス、とある海岸地方の小さな町。
フローレンス(エミリー・モーティマー)は戦争で夫を亡くした未亡人。
以前夫とともに書店を開くのが夢だったことを果たそうと、
古い一軒家を買い取り、書店を開く決心をしました。
しかし保守的なこの町で、女性の起業は奇異なこととして受け止められてしまいます。
それでもなんとか開店までこぎつけたフローレンス。



40年以上自宅に引きこもって読書をしている老紳士ブランディッシュ(ビル・ナイ)と親しくなり、
彼の応援も受けるようになります。

また、近所の少女クリスティーンもバイトで手伝ってくれることになり、
まずまずの滑り出しだったのですが・・・。
フローレンスをよく思わない地元の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が
書店を潰そうと画策を始めるのです。

本屋を開きたい、というのは私の幼少のときの夢でもあったので
(私は本屋の“お嫁さん”になりたいと思っていた・・・)
フローレンスにはすごく親近感を持ちます。
小さな町の、年季の入った建物の小さなお店・・・、いいですよねえ。
しかしこれがやはり、時代が悪い。
女が社会進出をしようとしたときの周囲の反発。
本作はつまりそういう物語なのです。


フローレンスが女でなければ、おそらくこの書店は周囲からも歓迎されたことでしょう。
この町に本屋はなかったのですから。
けれど女性の起業ということで、銀行も融資を渋るし、
周りの男性もなんだか浮かない顔。
ところが、男性以上に敵意を燃え上がらせたのが同じ女性であった、
というのがまたすごくリアルな気がするのです。
女のくせに、貧乏人のくせに、未亡人のくせに・・・と。
女性の敵はやはり女性なんですね。
表面上穏やかで、内心敵意丸出しなガマート夫人が怖い怖い・・・。



ガマート夫人は、この家を「芸術センター」にするつもりだったと主張するわけですが、
おそらくそれは後付の理屈で、
とにかくフローレンスの行動が気に入らなくて仕方なかったのだと思います。
しかし金持ちの嫉妬心を馬鹿にしてはいけない。
お金と権力であらゆる嫌がらせや攻撃を仕掛けてくる・・・。
せめてブランディッシュ氏が引きこもりでなく
もう少し押しの強い人物で、健康であれば・・・と思わずにいられないのですが・・・。
(そんな人物ならそれほど本好きにはならないか・・・。)
でもフローレンスも女ひとりで最後の最後、どうにも立ち回らなくなってしまうまで
よく頑張りました。
孤立無援の中で、女一人で生きるためには
ある意味男性より強くならなくてはならなかった・・・。



しかし、意表を突くラストで若干溜飲が下がったのは良かった。
クリスティーンに拍手!!


<シアターキノにて>
「マイ・ブックショップ」
2017年/スペイン/112分
監督:イザベル・コイシュ
出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン、オナー・ニークシー
理不尽度★★★★☆
満足度★★★★☆


「宇喜多の楽土」木下昌輝

2019年04月06日 | 本(その他)

史実に挑む小説家の手腕

宇喜多の楽土
木下 昌輝
文藝春秋

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秀吉の寵愛を受けた俊才・宇喜多秀家。
絶体絶命の関ヶ原。
心優しきリーダーの選択とは。

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豊臣秀吉の5大老の一人であった宇喜多秀家の生涯を描きます。
宇喜多秀家・・・。
歴女には程遠い私には、聞いたことはあるけどどういう人?という程度。
読みながらもちょっと地味だなあ・・・と思っていました。
ラスト付近の驚愕の出会いのシーンまでは。

戦国武将としては似つかわしくなく、父親から受け継いだ干拓事業で
民を豊かにしたいという志を持っていた秀家。
少年時代にその優しさから、有り得べからぬ行動をしてしまいます。
ところが秀吉はそのことを利用し、彼を生涯いいように使いまくる。
「人たらし」などと言われる秀吉ではありますが、
その実の奥底の酷薄さ・・・。
秀吉の描き方もうまいですね。


秀吉により多くの戦に駆り出され、朝鮮戦役ではこの世の地獄を見る。
そして秀吉には彼亡き後の秀頼の行く末を頼まれる・・・。
やがて秀吉が没し、関ヶ原の戦いとなります。
圧倒的な徳川方の勝利。
命からがら戦場を脱し、落ち延びようとする秀家に今また敵方の兵が・・・! 
というその時に、驚きの出逢いが!!


それこそが、あの少年の日の行動につながるという、アンビリバボーな展開で、
私はここで鳥肌が立ってしまいました・・・。
これこそが史実に挑む小説家の手腕。


そもそも、宇喜多秀家がどのような最期を迎えるのかも知らなかった私ですが、
本作を楽しむためにはむしろ知らなくてよかった。
その後の経緯については作中も簡単な記述があるだけですが、
つまり関ヶ原からはなんとか逃げ出すことができて、
その後も何箇所かで匿ってもらいながら、
結局八丈島へ島流しになり、そのままずいぶん長生きしたようです。

うーん、面白い!
木下昌輝さん、やみつきになるかも、です。

図書館蔵書にて
「宇喜多の楽土」木下昌輝 文藝春秋

満足度★★★★.5


スプリット

2019年04月05日 | 映画(さ行)

まるごとの人格変異

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M・ナイト・シャマラン監督によるサイコスリラー。


見知らぬ男に拉致され、密室に閉じ込められた3人の女子高校生。
男はどこか神経質そうな様子。
しばらくして、ドアの外から男女の会話が聞こえます。
彼女たちは助けを求めて声を上げますが、
ドアを開けて現れたのは女性の口調で話す先程の男だったのです。
男・ケビン(ジェームズ・マカボイ)には23もの人格があり、
リーダー格の男や9歳の少年、女性などの人格が次々に入れ替わっていたのでした。
そして新たにまた現れた24番目の人格とは・・・?

3人の女子高生のうちの一人・ケイシー(アニヤ・テイラー=ジョイ)は、
幼い頃からのトラウマを抱えており、人となじまないクールな女子。
だからこの度の対処も他の二人とは異なっているのです。
常に冷静に、状況を見極めようとします。
ケビンが9歳の少年になっているときに、なんとか味方につけようとしたりもする。 
本作は結果的に彼女のトラウマからの覚醒と開放を物語っている
というところはなかなか良かった。



さてしかし、これはM・ナイト・シャマラン監督作品なので、
ただ単に多重人格のストーリーで終わるはずがありません。
本作のキーパーソンとなる女性心理学者は言う。
ケビンの人格が変わっているときは、性格だけではなく身体的能力までもが入れ替わっている。
力の強さなどだけではなく、アレルギー反応までもがそれぞれに異なって出るのだと・・・。
そこで新たな24番目の人格というのが、
通常の人間の能力を超えた“超人”であるということなのですね。
そこで健やかな精神性を持っていればまさにスーパーマンなわけですが、そうではなくて・・・。



心の奥の問題は最も身近でありながら、実際にはわからないことだらけ。
ミステリアスだなあ・・・。

ラストに登場したブルース・ウィリス。
何やら本作は同監督の「アンブレイカブル」と「ミスター・ガラス」につながるところがありそうなのです。
アンブレイカブルは確か、見たのだけれど・・・と調べてみてショックを受けました。
このブログの開始以前なので記事がありません。
・・・というか、私はM・ナイト・シャマラン監督作品ほとんど見ているのですが、
多くはこのブログ開始以前に見たので全然記事がない。
が~ん。
自分の見た作品のデータベースとしての役割だけは機能していると自負していたのに・・・。
改めて見ますかね・・・。
でも実のところ「シックス・センス」以外はそれほど面白くはないのだけれど。
というか、初めて見た「シックス・センス」にものすごく驚かされてしまい、
その時以上の衝撃を感じるものはない、というべきか・・・。


<WOWOW視聴にて>
2017年/アメリカ/117分
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカボイ、アニヤ・テイラー・ジョイ、ベティ・バックリー、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ジェシカ・スーラ、ブルース・ウィリス

ミステリアス度★★★★☆
満足度★★.5


ブラック・クランズマン

2019年04月04日 | 映画(は行)

強烈なメッセージ性

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黒人刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」に
潜入捜査をしたという実話に基づいています。



1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署に
初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)。
新聞広告のKKKメンバー募集に勢いで電話をし、
口からでまかせに黒人への差別発言をして、入団面接にこぎつけます。
もちろん本人が出向くことはできないので、
同僚の白人刑事フリップ(アダム・ドライバー)が現場へ。
ロンとフリップは二人で一人の人物になりすまし、やがてKKKの過激な動きを探り出しますが・・・。

コミカルではありますが、ラストには実にシニカルな実録映像などもあり、
キョーレツなメッセージ性を持った作品になっています。
本作中、フリップはユダヤ人というところがまた、ハラハラ感を生み出しています。
KKKは白人と同じくユダヤ人も敵視しているので、
黒人でないことは見てわかりますが、何度も「ユダヤ人ではないのだな?」と念を押され、
嘘発見器にまでかけられそうに。
そんな危機を脱する助けをするのがロンで、いい感じのバディ・ムービーでもあるわけです。



フリップ自身、これまで自分がユダヤ人ということをほとんど意識したことがなかったけれど、
この潜入捜査によって、逆にユダヤ人の文化を意識するようになった、
というシーンがあって、グッと来ます。
一体何なのでしょうね、白人至上主義のその意味不明の自信はどこからくるものなのだろう・・・?

はじめて黒人刑事を受け入れたという時代性を考えると、
ここの警察署の職員の対応は少し出来過ぎのような気もしました。
一人、あからさまな差別主義者がいただけで・・・。
まあ、そうでなくては話は進まないか。
エンタメでありながら、強いメッセージ性を持つ、楽しめる作品。

ジョン・デビッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子さんだそうです。

<ディノスシネマズにて>
「ブラック・クランズマン」
2018年/アメリカ/135分
監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバー、トファー・グレイス、ヤスペル・ベーコネン
メッセージ性★★★★★
満足度★★★★☆


「7日じゃ映画は撮れません」真藤順丈

2019年04月03日 | 本(その他)

映画愛爆発

七日じゃ映画は撮れません (実業之日本社文庫)
真藤 順丈
実業之日本社

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映画への制御不可能な愛と情熱が迸る圧倒的巨編。
亡き恩師からいわくつきの脚本を託された若き映画監督・安達雄矢。
"天使"にまつわる物語を本編として完成させるべく、安達は奔走。
助監督、撮影・録音・衣装・美術・照明を担う異能の映画職人たち、
個性派俳優、プロデューサーが集結する。
クランクアップを阻む数多の妨害に翻弄される彼らの、
全人生を賭けた奮闘を描きだした、群像劇にしてスペクタクルな職業小説!

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とにかく、著者の映画愛爆発という感じの一作。
著者の「宝島」が直木賞を受賞しまして、
けれども例によって図書館予約では何年先に順番が回ってくるかわからないので、
とりあえずこちらを読んでみました。


若き映画監督・安達が亡き恩師からいわくつきの脚本を託されるのですが、
望まれる最高のスタッフ、キャストを集め、本編を完成させようという悪戦苦闘の物語。
スタッフ、というよりも映画職人ですね。
助監督、録音、衣装、美術、照明・・・
それぞれ超個性的なメンバー一人ひとりの記述がまた詳しい! 
私などは映画を見てもほとんど俳優ばかりに注目してしまっているのですが、
確かに、エンドロールを見ても分かる通り、
実の多くの人々が結集して映画は出来上がっているのですよね。
そういうことをもっとリスペクトして拝見しよう!と今更ながら思いました。


さて、メンバーが集ったところでいよいよ撮影開始、
というところからまた、ほとんど絶望的とも言える困難が山積みになります。
「群像劇にしてスペクタクルな職業小説」、なるほど、うまいこと言うなあ・・・。


アチラコチラに映画に関しての括弧付き注釈があるのですが、
なにしろハズキルーペを持っていない私にとっては読めない!!
そこは残念でした・・・。
すごく熱中してのめり込んでしまう部分もあるのですが、
そうでない部分もあったり、
結果、著者の他の作品を全部読んでみたいというほどの気持ちにはならなかったのですが・・・、
いや、でもまず「宝島」ですよね。
いつになるかはわかりませんが、きっと読んでみます。

「7日じゃ映画は撮れません」真藤順丈 実業之日本社文庫
満足度★★★☆☆


ベスト・バディ

2019年04月02日 | 映画(は行)

危機感が薄い・・・

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リタイアした紳士淑女が余生を満喫する楽園リゾートビラ・カプリ。
デューク(モーガン・フリーマン)は、
総支配人として人々にも慕われ、楽しい毎日を過ごしていました。
ある時そこへ新たな入居者、謎めいたカウボーイのレオ(トミー・リー・ジョーンズ)がやってきます。
彼は何かとデュークと張り合い、優位に立とうとします。
デュークも負けていられないとばかり、対決ムードを増す二人。

そんなところへ、本社から送り込まれた女性ボス・スージー(レネ・ルッソ)が現れ、
二人のライバル意識は余計に悪化。
さて実はデュークの今の立場はワケありで、
かつて彼が裏切ったギャングにこの居所を突き止められてしまい、
彼に刺客が放たれたのです。
そんな事情を知ったレオはいつしかデュークと手を結び、
共に危機を乗り越えることに・・・。

互いにはりあいつつ、次第に友情で結ばれていくベスト・バディの物語。
他愛なく、楽しめます。
それにしても、殺人者がデュークに迫っているという危機感があまりにもなさすぎ。
いくらコメディでも、もう少し緩急つけないとね・・・。

 

ベスト・バディ [DVD]
モーガン・フリーマン,トミー・リー・ジョーンズ,レネ・ルッソ
Happinet

<WOWOW視聴にて>
「ベスト・バディ」
2017年/アメリカ/92分
監督:ロン・シェルトン
出演:モーガン・フリーマン、トミー・リー・ジョーンズ、レネ・ルッソ、ジョー・パントリアーノ、グレン・ヘドリー

バディ・ムービー度★★★☆☆
満足度★★.5