映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

92歳のパリジェンヌ

2016年11月17日 | 映画(か行)
切実・・・



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リオネル・ジョスパン元フランス首相の母の人生を
その娘で作家のノエル・シャトレが描いた「最期の教え」を原案とした作品です。


パリに住むマドレーヌ、92歳。
助産師をしていましたが、今は引退。
夫には先立たれて、一人暮らし。
それでも娘や息子の家族たちがよく訪れ、穏やかな生活をしています。
けれども、さすがに老齢で、
ノートに書きつけている「一人でできないことリスト」がいっぱいになっています。
買い物。
階段を登ること。
車の運転・・・。
92歳の誕生日、お祝いに集まった家族の前で、マドレーヌは宣言します。
「2ヶ月後の10月17日に、死ぬことにした---」



家族たちは、なにも言えず、聞かなかったことにして無視したりします。
確かに、いきなりそんなことを言われても、どうしていいかわかりませんよね。
特に娘のディアーヌは、馬鹿なことを言わないで、と反発するのですが・・・。
でも、色々とお母さんの話を聞き、様子を見ているうちに、
母の望みを叶えさせてやろうと思うようになっていきます。



マドレーヌはその年令の女性としては珍しく、
仕事を持ち、社会運動に参加したりもする自立した女性だったのですね。
だから体が衰えて自分ではなにもできないことや、
おねしょでシーツを汚したりすることに耐えられないのです。
まだ自分の意識と意欲がしっかりしているうちに、
自分ですべてを終わらせたいと、心から思っているのです。
その気持はわかりすぎるくらいにわかるけれど、諸手を挙げて賛成することはできない。
とても難しい問題ですね・・・。


ディアーヌももちろん結婚もし、息子もいて仕事もしている、
すでにかなりの年齢ではありますが、
今、死のうとしている母を前に、なんだか幼い子どものように、
心もとなく寂しくなってしまうというシーンがありました。
いくつになっても母と娘。
やっぱりどこか心の支えにしている部分があるんですよね・・・、
少し前に母を亡くした私にはそんな心情がよくわかります。



家族の心情を抜きにすれば、私はマドレーヌの死に方が羨ましいというか、理想に思えます。
そんな風に死ねたらいいな・・・などと、常々思う。
本作、若い方ならそんなもんかなあ・・・くらいで済むでしょうけれど、
私くらいの年になると、ちょっと切実に過ぎますね・・・。
暗くなりがちなストーリーの中で、
おばあちゃん思いの孫の青年の存在が救いでした。


「92歳のパリジェンヌ」
2015年/フランス/106分
監督:パスカル・プザドゥー
原作:ノエル・シャトレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ビラロンガ、アントワーヌ・デュレリ、グレゴール・モンタナ、ジル・コーエン

切実度★★★★☆
満足度★★★★☆



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