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ジョーンの秘密

2022年04月19日 | 映画(さ行)

50年前の行為が露呈して・・・

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スパイ容疑で逮捕された80代女性の数奇な実話を元にした作品。

夫に先立たれ、イギリス郊外で穏やかな一人暮らしを送っていた
ジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)。
ある日突然、MI5に逮捕されてしまいます。
半世紀以上前、ロシアのKGBに核開発の機密情報を漏洩した、というスパイ容疑です。
ジョーンは始めそのことを否定しながらも、
約50年前の若かりし頃の出来事を語り始めます。

彼女は、大学で物理学を学んでいました。
そして卒業後、英国の原子爆弾開発チームに加わることになるのです。
始めは、研究内容を理解する秘書的な役割だったのですが、
彼女の能力はチームの一員として十分に通じるものでした。

あらら、先日「太陽の子」を見たばかり。
意図して選んだわけではなかったのですが、ここでも出てきた原子爆弾の開発・・・。
やはり、遠心分離が必要不可欠らしい・・・。

ジョーンには恋人がいて、それがソ連出身のレオ(トム・ヒューズ)。
彼は共産主義の先導者でもあります。
ジョーンはそのシンパというわけではないけれど、
当時の学生たちの風潮と同じく、ちょっとした興味半分くらいの気持ちで、
集会などにも出席していたのでした。

でも、研究内容を他に漏らしてはならないという誓約書にサインもしたジョーンは、
かたくなにレオにはその話はしないことにしていたのです、始めのうちは。
ところが、アメリカが先に原爆を完成させて日本に投下。
その恐ろしい威力をジョーンは目の当たりにするのです。
そして彼女は思う。
今、ソ連もこの原爆についての情報を切実に欲している。
核兵器についての情報は、特定の国だけが持っているよりも、
各国で共有した方がいいのではないか?
その方が互いに牽制作用が働いて、核を使用することがなくなるのでは・・・?
レオに情報を渡せば確実にKGBへ内容が伝わることを承知で、
彼女は機密を渡してしまうのです・・・。

結局その行為は表沙汰になることがなく半世紀が経過。
それがなぜ今頃取り調べられることになったかと言えば、
当時レオとともに関わりのあった人物、現在は外務次官のW・ミッチェル卿が亡くなり、
そのため見つかった資料からジョーンのことが発覚したというわけ・・・。
まあ、彼女がその時機密を漏らさなくても、
必ずどこかから漏れるか、もしくはソ連独自の研究が実って、
ソ連も核兵器を持つことになっただろうとは思いますが。
でも実際にこんな情報漏洩があったというのは恐ろしいことではあります・・・。

いくら世界の未来を考えたといっても、
個人の考え一つでこんなことをしてしまうというのは
軽はずみとしかいいようがないかも・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「ジョーンの秘密」

2018年/イギリス/101分

監督:トレバー・ナン

原作:ジェルー・ルーニー

出演:ジュディ・デンチ、スティーブン・キャンベル・ムーア、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、ベン・マイルズ

歴史発掘度★★★★★

満足度★★★.5

 



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