映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フランス組曲

2016年01月27日 | 映画(は行)
単に禁断の恋ではなく・・・



* * * * * * * * * *

1942年にアウシュビッツで亡くなった女性作家、
イレーヌ・ネミロフスキーによる未完の小説を映画化したものです。
著者は当時フランスの人気作家であったのですが、
本作主人公と同じく、ナチスのフランス侵攻で大きく運命が変わってしまいました。
本作は疎開生活をしている間に書き綴られたものだそうですが、
ナチスに協力したフランス憲兵により捕らえられてアウシュビッツに送られたのです。
この原稿を娘さんが保管してあったのですが、
60年後の2004年にようやく出版されたもの。
本作は、こういう作品背景抜きには、やはり語れない作品だと思います。



物語の舞台は、1940年ドイツ占領下のフランスの田舎町。
ちょうど著者の疎開した町をそのままイメージしたのかもしれません。
出征した夫の帰りを待つリュシル(ミシェル・ウィリアムズ)は、
厳格な夫の母(クリスティン・スコット・トーマス)とともに大きな屋敷で暮らしています。
そんな時、パリを占領したドイツ軍が、とうとうこの町にもやってきた。
この屋敷は、ドイツ軍中尉・ブルーノ(マティアス・スーナールツ)の居所として割り当てられます。

リュシルは憎い敵国の将校を受け入れることなどできないと思っていたのですが、
それでも、軍人のイメージとは遠く
礼儀正しく音楽を愛するブルーノに次第に惹かれていきます。
そしてブルーノもまた・・・。



禁断の恋? 
いいえ、あえてそのドイツ兵と親しくなるフランスの女性たちも多くいたわけです。
若い男性がみな戦争に行ってしまっている中で、ドイツの若い兵士がステキに見える。
彼らと仲良くなることで、様々な特典もある。
でもまあこの場合、リュシルは人妻でもありますし、
何よりもこの姑に知れたらただ事で済みそうにない・・・。



しかし、その姑が留守になる日、
ブルーノと逢瀬を約束したリュシルには自然と笑みがこぼれてしまう・・・。
この辺りで、ちょっといやな感じがしてしまうのです。
結局はただの浮気のストーリーなのか、なんて愚かな女・・・と。
でも、その直後、彼女のこの笑みを凍りつかせる事件が起きて、
彼女は目覚めるのです。
(はー、よかった・・・)


この先の彼女の行動は、多分にこうしたことの罪悪感の裏返しのようにも思えます。
やはり、愛を交わすことはできない・・・と。
ブルーノもまた、兵士には全く向かない男性なんですね。
だからちょっと軍の中でも浮いている感じ。
ドイツ兵だって同じ人間、個々の人間の集まり。
それぞれにはそれぞれの事情がある・・・。
著者自らを苦境においい入れたドイツ兵にこういう人物を配置できるというのが凄いと言うか、
プロの作家魂ですね。



敵方へ隣人を密告する住民たちや、
ドイツ兵と占領下の若い女たちのこと・・・
おそらく当時のことを人々はあまり語りたがらないのでしょうけれど、
占領下の生々しいフランスの姿も映しだされています。
平時には考えられないエゴ丸出しの姿が、
こんな時に見えてしまうというのもなかなかキツイですね・・・。

「フランス組曲」
2014年/イギリス・フランス・ベルギー/107分
監督:ソウル・ディブ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリスティン・スコット・トーマス、マティアス・スーナールツ、サム・ライリー、ルース・ウィルソン

占領下のフランスの真実度★★★★☆
ロマンス度★★★☆☆
満足度★★★☆☆


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