人生こんなに悩んだことがあっただろうか
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坂で転がり落ち、検査入院することになった整。
その病院で出会った謎の美少女・ライカの言葉に導かれて動く内に、
整は不穏な都市伝説に遭遇する。
子どもを救う“炎の天使”とは一体――!?
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整くんが検査入院した病院で知り合った謎めいた美少女ライカ。
そして、おかしな縁で時々話をするようになった“カエル”こと陸(ろく)さんとの話になります。
親に虐待を受けている子どもが壁にある印を書くと、
天使が来て親を炎で殺してくれる・・・
そんな物騒な都市伝説めいた話がネットで話題になります。
そしてその話とよく似た事件が実際に数件起こっている。
どうやら陸さんがその事件に関わっているらしい・・・と、
TVドラマにもあったエピソード。
でも陸さんが慕っている香音人(かねと)青年が実は・・・!
という所は、ドラマを見ていても全く想像もつかなかったところで、
このストーリーには驚かされました。
散々虐待を繰り返した親をどうするのか。
「天使」は、その判断を子ども自身に委ねます。
しかし、整くんはそれこそが子どもへの虐待だという。
子ども自身が親を殺すことを天使に依頼し、それを天使が実行したとしても、
結局子どもには「自分が親を殺した」という思いが残ってしまう。
そしてその思いが以後ずっと自分を苦しめる。
そんな苦しみを背負い続けてきて、
すでに精神崩壊寸前のところにいたのが陸さんであるわけです。
親による児童虐待は、本作の底辺にずっとある大きなテーマなのでしょう。
心に刺さるエピソードです。
さて、本作中で気になった整くんの言葉。
「土下座」を強要する人について。
「本当に土下座でいいんですか?
だって土下座ってただの動作だから。
簡単でお金もかからなくて、心がこもってなくてもべつなこと考えてても
できることなんですけど。
土下座に意味があると思うということは、
あなたはそうしろと言われるのがすごくイヤなんだということですね」
最近の、記者会見で土下座して見せた某社長を思い出してしまいました。
その姿を見ても全く心に響きませんでしたが、それは整くんが言うとおりですね。
私はむしろ、こういうことをする人は、
きっと何かことがあるたびに、相手に土下座を強要する人なのではないかと思った次第。
また、ライカに「ちょっとしたクリスマスプレゼントの交換をしよう」と言われた整くんは、
いったいライカさんに何をプレゼントしていいものやら、悩みに悩んでしまうのです。
悩みすぎて息も絶え絶えになってしまう。
「人生こんなに悩んだことがあっただろうか」
こんなだから、整くんが大好きです!!
でもこのときライカにもらった赤いオーナメントが
結局整くんを救うことになるわけで、
全く、ストーリー作りがうまいなあ、と感嘆させられるのでした。
そして、小学校の教師を目指す整くんは
「僕はいつもいろんなことに気づきたいと思っています。
僕のクラスに陸さんがいたら、家で何かがおこっていることに必ず気づくと思います。
僕のクラスに香音人さんがいたとしたら、その異変に絶対気づきます」
と、強くきっぱりと言い切ります。
確かに彼は、人が気づかないようなことにきちんと気づく
(気づきすぎてウザいと言われるくらい)ヤツなので、
この言葉は単なる希望的観測ではないのです。
本当に、教師になって欲しいなあ、整くん。
「ミステリと言う勿れ 5」田村由美 フラワーコミックスα
満足度★★★★★
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