映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ボクたちはみんな大人になれなかった

2021年11月15日 | 映画(は行)

自分は今、なりたかった自分になれているか

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2020年、テレビ業界の片隅で働き続けている佐藤誠(森山未來)。
何もかも投げやりで、惰性のように感じているこの頃。
本作は、そんな彼のことが、少しずつ時間を巻き戻しながら描かれています。
始めは小説家になりたいと思っていた。
でも志していたようにはなれず、テレビ番組のフリップ作成という仕事に就く。
やがて仕事の力はついてきて、女性遍歴も幾度かあった。
けれど、忙しく作り上げたものも、むなしいくらいに流れては消えていく。
女性たちも彼の元を通り過ぎていくだけ。

自分は、昔「なりたかった大人」になれているのだろうか・・・?

そうして彼が思い出すのは、初めて付き合った彼女・加藤かおり(伊藤沙莉)のこと。
1995年。
かおりとは文通で知り合った。
待ち合わせて初めて対面した時の緊張感・・・。
「会ったらきっとがっかりするよ」と言っていた彼女。
初めて入った料金安めのラブホテル。
天井には星空が描かれている。
このとき彼女は初体験。

・・・なんというか、こんなに純真でおずおずとして
尊い感じのラブホテルシーンを見たのは初めてのような気がします。
ここは本当は「はじまり」のシーンなのだけれど、
時間を遡って描写することで、終盤に描かれていたのは大成功です。

その数年後、かおりはある日突然、
理由も行方も告げないままに姿を消してしまうのです。
佐藤はその時の苦く切ない思いをずっと引きずっていたように思えます。

40半ばにして、若く初々しかった頃を思う。
その頃に見ていた未来にはほど遠い自分。
でも、彼の中で何かが少し変わったようでもありますね。

若き日とその25年後の佐藤、森山未來さんの演技力が光ります。

<サツゲキにて>

「ボクたちはみんな大人になれなかった」

2021年/日本/124分

監督:森義仁

原作:燃え殻

脚本:高田亮

出演:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、篠原篤、大島優子、萩原聖人

 

若き日の思い度★★★★☆

ラブホテル情景度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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