映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アイネクライネナハトムジーク

2020年12月05日 | 映画(あ行)

ドロボウも殺人もないけど

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伊坂幸太郎さん原作で、読んだこともありまして、
でも例によって内容はほとんど忘れていたので十分楽しめました。
というより本作、もちろん三浦春馬さん追悼の意をこめて見たわけです。

仙台駅前で街頭アンケートを集めていた佐藤(三浦春馬)。
ふとしたきっかけでアンケートに応えてくれた紗季(多部未華子)と付き合うようになります。
その10年後、共に暮らしていた2人でしたが、
佐藤は意を決して紗季にプロポーズしますが・・・。

という2人のストーリーが本筋ではありますが、
本作は2人と関連した周囲の人々の群像劇でもあります。

美人の同級生由美と結婚し、幸せな家庭を築いている、佐藤の親友・一真(矢本悠馬)

ある日突然、妻子に逃げられた男・藤間(原田泰造)

声でしか知らない男に恋をする美容師・美奈子(貫地谷しほり)

等々。

それがまたそれぞれ、
たった一度ボクシングヘビー級世界タイトルを取ったボクサー、
ウィンストン小野との関連も見えてくるあたり、
泥棒も殺人もなくても、
やはり伊坂幸太郎さんらしい伏線の張り巡らされたストーリーで、
とても興味深く見ました。

出会いとは。
恋とは。
結婚とは。
ごく普通の生活を営む人々から、ほろりと転げ落ちる本音がいい。

いつもちゃらんぽらんで、なんでこいつがこんな美人で聡明な人と
結婚できたのかと思わせる一真。
でもその裏話には、感動させられます。

そんな風に、実は誰にでも「奇跡」と呼べるような瞬間があるのかもしれません。

顔中でくしゃっと笑う、三浦春馬さんの笑顔が胸に痛い・・・。

<WOWOW視聴にて>

「アイネクライネナハトムジーク」

2019年/日本/119分

監督:今泉力哉

原作:伊坂幸太郎

出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐理、貫地谷しほり、原田泰造