映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

君のためなら千回でも

2008年03月23日 | 映画(か行)

アフガニスタンの空に上がるたくさんの凧。
2人の少年アミールとハッサン。
アミールは裕福な家の子で、ハッサンはそこの召使の子。
しかし、2人は熱い友情でつながっています。
凧合戦は、互いにタコ糸を切りあうというなかなかテクニックの必要なものですが、
二人はチームワーク良く、ついに最終の勝者に。
まるで、自分こそが空にも舞い上がるような高揚感。
ハッサンは、最後の敵の凧を拾うため、凧を探しに行くのですが、
その時の彼の言葉が、「君のためなら千回でも(凧を探してくる)!」

その直後に、一転、事件が起こります。
なかなか戻らないハッサンを探しにいったアミールは、ハッサンが年上の少年たちに暴行されているのを目撃してしまいます。
アミールは気が弱い子で、体力にも自信が無く、いつもハッサンに助けられていたのです。
このときも、ついにハッサンを助けに入る勇気がもてなくて、見捨ててしまいました。
ハッサンはアミールとの友情を貫くために闘っていたというのに・・・。
この罪悪感に耐え切れないアミールは、また、卑怯な方法で、彼ら召使親子を屋敷から追い出してしまうのです。

その後、アフガニスタンにソ連が進攻。
アミールと父は身の危険を感じ、アメリカへ亡命します。
アミールはハッサンとの出来事を心の底のしこりとしたまま、カリフォルニアで成長。
小説家となりました。

さて、その頃、アフガニスタンは今度はタリバン政権の支配下。
ところが、ハッサンは戦乱で命を亡くし、その一人息子が孤児院にいる、ということが耳に入ります。
アミールはハッサンへの贖罪のため、今は荒れ果て、変わり果てた故郷へ向かうのです。

この心弱い少年を誰も攻めることはできないでしょう。
むしろ、たいていの人は、そう勇敢にはふるまえないものですよね。
アミールの父というのがまた、男らしい勇気ある人物で、その父から見るとアミールはいかにもひ弱で、実は気に入らないのです。
父はアミールとハッサンと比較し、ハッサンを気に入っているように見える。
そんなハッサンへの嫉妬もちょっぴりあったのかも知れません。

しかし、長じたアミールは、今度は逃げないと決めた。
ハッサンの信頼にこたえるのは今しかない。
立ち入るのさえ危険なアフガニスタンに、乗り込んでいくのです。

これは友情の物語でもあり、自己の尊厳の物語でもあります。
また、アフガニスタンという舞台が、これまでにない鮮烈さで迫ってきます。
ソ連のアフガニスタン侵攻。
私はあの、モスクワオリンピックのボイコット騒ぎがあったことで、記憶にとどまっている程度、という体たらくですが、
そのために、人生が大きく変わった、こういう人たちがいる。
タリバン・・・これは、いまや悪の代名詞みたいなことになっていますが・・・。
でも、宗教も何もかもあんなに理解しがたいと思っていた国の人々は、やはり、私たちと同じ考え方をする、同じ人々なんですよね。
特に、子供の元気さ、残酷さ、どこの国でもやはり同じなんです。
個人レベルならすぐに分かり合えるのに、国レベルになると関係がおかしくなってしまう・・・。

この映画のラストシーンは、やはり凧揚げなのですが、それは平和なカリフォルニアの空。
どこの国でも、こんな風に、のどかに凧揚げや凧合戦を楽しめる日が来るといい。

2007年/アメリカ/129分
監督:マーク・フォースター
出演:ハリド・アダブラ、ホマユン・エルシャディ、ショーン・トーブ、アトッサ・レオーニ

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