谷崎光 中国日記  official blog  

北京発! 2018年9月3日で北京在住18年目に突入。

歴史読本11月号 老北京 景泰藍  

2013年09月28日 | 老北京
 自分も染織をやっていたぐらいで、工芸の好きな私、基本的に中国の工芸品は全部、好きなんですが、ひとつだけ苦手なのがありました。
ハイ。あの王府井のお土産売り場などにある、極彩色の巨大な悪趣味なツボです。子供の身長ぐらいなのもある。




 ……うっわー。目が汚れる。



 今回、取材したり調べてよくわかりました。
 これを景泰藍(中国の琺瑯の工芸品)だと思うのは、浅草で売っている KIMONOを見て、日本の和服を語るようなもの。
 西陣の人、怒るわな。


 景泰藍はいい時代の本物はそれはきれいです。
 トルコ石とか、宝石(半輝石)を砕いて顔料にしてました。

 故宮博物館 清朝のポット

 故宮博物館所蔵 琺瑯(景泰藍)


 今の制作現場も見てきました。






後継者難で、国が聾唖の若い女性を送りこんでいました。
 身ぶり手ぶりで技術の継承。
 こういう顔料って、けっこう毒性が高いので、ちょっと心配でした。(顔料の制作所もだから工場から移したそうです)。
 あいかわらずディープな中国様。
 日本の西陣とかって、奈良、平安の技術も色も全部、再現できるんですが(資料も保存)、景泰藍は清朝のものでさえ、全部、途絶えています。


 今回の歴史読本の写真は、財政難の故宮から追い出され、外国人に売る景泰藍を必死で作る人々を活写した一枚。
 ぜひご覧ください!



中国でiPhone5s 5cがサムスンに勝てない、本当の理由

2013年09月10日 | その他
(5月12日 追記!)

 中国でも、iPhone5s 5c 9月11日に発売(予約開始)になりましたね!
 値下がりするかも、と言われていたのに、5cで4488元(約7万2千円)-裸機ー通信会社と契約なしーで、高くてブーイングの嵐、というのは、皆さん、もうご存じかと思います。
 しかしちょっと待て。
 声の高さ(現代においてはネットの書きこみ等?)= 実際の消費行動 とは限りません。 発表当日夜、携帯販売における中国の有力サイト、京東商城の予約販売数は、
 5s 5288元(約8万4千円)  1万個
 5c 4488元(約7万2千円)  2400個

 でした。そりゃ安くないが、現在の中国の携帯市場において、4000元から5000元というのは、充分な購買層があり、この価格帯の携帯もまた多いです。その主力がサムスン。その携帯の特徴は「大きい」です。

 中国において、携帯の大きさと収入はある程度、比例する、とは、巨大な国産携帯も多いので言いきれませんが、農民の携帯はたいてい小さい。

 値段の高いほうから売れていることを見ても、ポイントは価格だけではないと思います。というより、中国人にすれば、そこまで出して、iPhone いらない、ですね。
 なら、今は国産でも1000元ぐらいでいいスマホあるし、2000元出せばブランドメーカーの定番普及品が買える。こなれていて品質よし。
 2000元ぐらいなら、かっこいいと思ってたから、買ってもいいなぁ、という若者はある程度いるが、4,5000元の、いつも新しい携帯を買うプチ富裕層の心はつかめませんでした。
 

 結局、大陸でサムスン躍進、iPhoneがシェアを落としている本当の理由は、

 1. iPhoneは中国人には小さい!!! んですよ。

  コンパクトであることが、何ら美徳にならない国、中国……。
 
  中国で暮らしていると、いわゆる先進国で普通サイズのものが非常に小さく感じます。あと、大きい方が、なんでもクラスがあるイメージ。
 外国人からすれば、ただの道具の携帯にクラス? 好きなのえらべばいいんじゃないの、と思いますが中国人には大事です。
 

 2.次に用途。
 中国人にすれば、映画やドラマなどのソフトは何でもタダであるんだから(!)、画面が大きいほうがいい。再生機でもあるんですね。あとゲーム機としての使用。中国人の、あのひとつの電子機器使いまわしを知らねばならない。

 3.機能
 アプリは非常に発達しており、現在、私もたとえば旅行ならホテル予約から飛行機チケットの支払いまで全部スマホです。なら大きいほうが便利。中国では、携帯自体がちまちまいろんな事ができるより、大きくてとにかく早い! が大事。安定性は、どうせ通信もアプリもビミョーなので、そんな期待してない。

 そしてこれをうまくつかんだのが、サムソンです。大きくて高級感のある、スピードの速い中国人好みのスマホをたくさん出したんですね。
 早くから値ごろ感のあるのも出しました。国産スマホが品質不安定、iPhoneはやっぱりまだ高い(初期はもっと高かった)中、スマホにのりかえる中国人の心をつかんだ。
 

 4.で、通信会社の問題もあります。

 そもそも中国のiphoneは一番最初は、聯通しか使えなかった(今は中国電信とも提携)。
 この聯通というのは、今でこそ人気の通信会社ですが、10年前、中国の携帯普及初期は、「低品質、つながらない、だけど通話料金安い! 」と言うことで学生が主なユーザーでした。
 商用とかまともな大人? は移動派だったんですよ。大昔のJALみたいなもん。
 で、数年後に徐々にその状況は解消され、さらに聯通はiPhoneの権利を得たこと、新しく出た3G通信が早いことで、一気に若者ユーザーをつかみます。でもおじさん、おばさん(になった人)はiPhoneを買えるお金があっても、中国移動からあまりのりかえなかったんですね。二つ番号持つ人、二代持ちもいるけど、まあ一部。
 現在でも中国移動のユーザーは7億人で全体の65%です。
 
 
 5.だけどスマホは使いたい、に食い込んだサムソン

 しかしそのJAL的な中国移動は、3G通信は乗り遅れ、今なお速度も遅いです。
 移動ユーザーだった私もスマホ時代になり、聯通にしよう、iPhoneにしようと何度も思ったんですが、でも番号変えに抵抗があり、その揺れる消費者心理をついて、移動の3G通信方式と提携したスマホが出てきます。
 初期は国産が多かったんですが、サムスンはこの移動3G専用機の高価格帯にくいこみました
 当時、10万円近くしたサムスンの移動専用スマホの売りは、ズバリ、大きい! でした。
 
 デザインも良くて、中国人男性ビジネスマンに良く売れてました。ギャラクシーシリーズですね。女性ユーザーも多い。
 彼らにすらば、男があんなちっちゃいiPhoneなんぞでちまちまやってられるか、というより、さほど好きにならないと思う。
  iPhoneも人気はありますが、ユーザーは圧倒的に若者です。
 中国人のよくいう档次(クラス)感はサムソンのほうが演出上手かも。

6.そして値段が高かった。出た当初はやはり4,5000元。すでに書いた通り、それを買う層は充分いるんですが、彼らの好みにはさほど合わなかった。

 現在、中国の携帯のシェア、トップはサムスン20%、それに国産のスマホメーカーが続いて(安い、大きい、いろいろある)、iPhoneは5%に落ち込んだ。

 金色が出ようが、ちょっとぐらい安くなろうが、
 iphoneがiphoneであるかぎり、中国で全面勝利は難しい。
 一部の若者は買うでしょうが、おじさん、おばさん、若くても地方ならまだ結婚式の引き出物は大きくて重いほうがいい(比喩)、という世界に住んでいるのが中国。先進国でスマートでかっこいいがゆえに、負ける。
 
 
 さあ、どこまで巻き返せるか。
 中国の国産携帯も大躍進中です。
 
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 付記  私の中国携帯遍歴(2001年ー2013年)

モトローラ―(アメリカ) →偽造証書販売取材中に、囲まれてカバンから抜かれた。
ALCATEL(フランス) →現在もお客様用に保管して現役。デザイン良くて、一番好きだった。
ソニーエリクソン(日本+アメリカ)→盗難。音が良かった。
ノキア (フィンランド)   →スマホ 騙されて買ってほぼ使わず。詳しくは中国人の裏ルール参照。
三星(サムスンー韓国)→スマホ 現在使用中。iPhoneより一回り大きいが、次はもっと大きいのを買いたい(笑)。

 なんかアホですな。財布は無くしたこと、ないんだけどな……。
 ノキアの前に、海外の友人に頼まれ、買って郵送したのが、サムスンのスマホ。スマホの始まりの中で、値段、品質ともに、一番こなれてたんですね。
 現在、日本メーカーの中国での携帯はほぼ全滅しました。ソニーがほんの少しあるぐらい。
 携帯メールは中国から使いだしたため、今も日本の携帯のメールが使えず、帰国すると変換候補をそのまま使う「帰る、遅い。ご飯、先、食べろ」しか打てず、実家の人から「中国人のメールが来た」と言われてます。