出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

複数の企画

2006年10月20日 | 制作業務
本題の前に、先週「来ないでほしい」とお願いしたトーハンの返本おじさんが今日来た。9月の頭に出した新刊の第1弾返品がまだだったので、山のように返ってきた。箱入りになってからは溜めて持ってくるようで、この返本おじさんに会うのは実に2ヶ月ぶりだ。

で、例によってハンコ本(献本)のチェックである。こちらは前科がないので、おじさんに説明してちょっと待ってもらった。ところが、正直なおじさんは、「そういうこともあるから、ちゃんと見たほうがいい」と言うのである。「そうですか、トーハンさんもありますか」なんて話しながら全部見たけど、結局1冊もなかった。仕入部の担当者次第なのか。

で、本題だが、昨日お会いした編集者の方は、若い頃には20冊以上の本を進行させていたそうだ。以前、どなただったかも、企画中のものも含めると10冊以上だと教えてくれた。

私の場合、出版を始めた頃は1冊ずつで精一杯だった。配本してPRして(この順序が逆なのも今となっては恥ずかしい)、ようやく次の企画について考え始めていた。とにかく、先のことなんか考えられなかったんだが、それはそれで、集中できてなかなかいいものだった。

ちょっと慣れてくると、取次の担当の人から「次はいつだ? どんな本だ?」ときかれたときにある程度答えられるように準備するようになった。準備と言っても、ただ「考えておく」だけだったので、その頃答えた企画はほとんど実現していない。

もっと慣れてくると、考えて作って見本納品して売って…という流れがルーティン的に身についてきて、少しは次の本のことも考えられるようになった。手をつけるわけじゃない。1冊出したらすぐ次に取り掛かれるように、とりあえず企画だけは決めておく程度。

私は非常にスケジュールコンシャスで、「何か起こるときのために、自分サイドのことはなるべく前倒し」する。「明日すればいいことを今日するな」とか、「今日できることは明日に持ち越すな」とか、人によって言うことは違う。私は片付けてしまいたいタイプってわけでもないけど、後から「あなたが遅かったから遅れた」と言われるのだけは避けたい。

で、著者の人も余裕があったほうがいいだろうと思って、確実に出すと決まった本に関しては早めに話をつけるようにした。気分的には、「著者の確保(だけ)しておいて進行中の本に集中し、それが出てから、お願いしておいた著者との仕事を始める」という感じだ。

ちなみに、来月出る本(Aとする)の原稿がほぼ見えてきた7月頃、次の本(Bとする)の著者にコンタクトをした。他に抱えている仕事との兼ね合いもあるから、前もってスケジュールに入れといてもらうために早めにお願いしたのだ。

これが、たまたま著作も多い「書き慣れた」著者だったからか、いろんなことがどんどん進んでしまう。

Aの本の原稿についてギャイギャイやってた8月頃、Bの本の著者から「こういう売り方もあるがどうか、打ち合わせをしたい」と言われた。とてもいい案で、その方向で…とお願いしておいた。Aの本がまとまってDTPに励んでいた先月、Bの著者から「とりあえず書いてみた」と連絡があって、原稿を受け取りに行った。そうなると当然なんだけど、Bもどんどん詰めたくなって、細かいことまで熱くなってしまう。

Aの本は来月頭に見本が上がってくる予定で、今までの私だとPRに精を出す予定なんだが、きっとその頃、Bの著者から「打ち合わせたとおりに書き直した」と、連絡が来る。

なんか「あちこち、あれこれ」という気分になる。決して「取り組みの熱意を分散させる」わけじゃないんだけど、なんかそうなりそうな不安を抱えながら仕事をしている雰囲気。2冊だけなのに、この体たらく。

他のことにだんだん慣れてきたように、同時進行にもこれから慣れていくんだろうか。それが「仕事ができるようになる」ということなのかもしれないけど、今の時点では、「慣れてしまいたくない」気もする。よくわからない。

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