出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

組版

2009年04月07日 | 制作業務
先日、組版で必要なこと…のようなセミナーに行ってきた。うちも出版業を初めてもうすぐ8年。創業当時から持っていた古いソフトに替えてCS3なるものを入れたので、ついでに勉強というわけである。

ちなみに、印刷会社は古い分にはOKみたいで、古いソフトで入稿しても何の問題もない。けど、いかんせんパソコン本体がいかれるのが心配だ。ファイル自体は保存してあるけど、古いパソコンを諦めることになったとき、データ作成中なんてことになったら悲惨だ。なので、今のうちに…ということで手をつけた。

本日新刊のデータ入稿をしたんだがそちらは新しいソフトで、数日前にした重版は古いソフト。画面を切り替えながら作業していると混乱する、というのが面倒といえば面倒だが、そのうち慣れるだろう。

で、パソコンの環境が整い、やってる本人も慣れてきたので、以前からの懸案事項である「組版」の勉強に行ったのである。

なぜ懸案だったかというと、正式なものを知らないから。自分でデータを作っていてわからないことがあると調べるんだが、何やら意味不明のことがときどき出てくる。多くは活版印刷の頃からある約束事みたいなものらしく、これを一度ちゃんと学んでおかないといかんと前から思っていたのだ。

私は個人的には、活版印刷の紙面のほうがより美しいとか読みやすいとかは思わない。なんちゅうか、ノスタルジーを感じることはあっても、「それが王道」みたいなことを言われると、ケッ!と思うタイプである。特に最近の文庫の「文字を大きくしたのはいいが、かえって読みづらい」のは勘弁してもらいたい。

けど、昔の約束を知ってて無視する(私がいいと思うようにする)のと、知らないのとではやはり違うだろうと、なんとなく思う。例えば個人的には、カッコがどうとか句読点が頭に来ないってのはわかるが、ある行の頭が「る。・・・」というふうになっているのは好きじゃない。好きじゃないからいじるんだが、いじるときに「うちはこれでよいのだ」といじりたい。

想像していたとおり、セミナーの講師は活版印刷の頃からのプロで、「岩波さんあたりだと・・・」を連発する人であった。今回は「古くからの約束」を学ぶために行ったので真面目に聞いたし、非常に勉強になった。

が、やっぱり、「ホントにそのほうが読みやすいかあ?」と思うのも事実。講師曰くの「最近の本」も読み慣れているせいか、私はそうなってなくても違和感はない。頭が「る。」のほうがよっぽど違和感がある。

コンピュータの発展をありがたがっている身としては、むしろ、「昔できなかったからって、それじゃなきゃっていうのはどうよ」と思う。つまり、昔からいろいろできていて、その結果「古い約束」が美しく読みやすいのならわかるが、「限られた中で」より読みやすいのを生み出しただけなのであれば、そんなにこだわることある?と感じるのである。

だって、「版面からはみ出るのは絶対おかしいからやめる」と言ったって句読点ははみ出すんだし、結局、「当時できたこととだけが基本なんじゃん」と思う。

私は出版を初めて3、4年くらい経った頃、「古いのがベストとは限らん」とムキになった(そしていろいろ失敗した)ことがある。そうならないように、今回はちゃんと講師の言っていたことを噛み砕いて、「より読みやすい」本を作っていきたい。(美しいってのはどうかなあ? ビジュアル本ならともかく、情報を伝えるための「たかが書籍」で、それっておこがましくないか?)

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