出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

カバーイラスト、募集!

2005年09月27日 | 制作業務
先日、カバーイラストを自分で描いてみようと思ってワクワクしたと書いた。半分その気になってたんだが、昨日例の売れっ子イラストレーターの友人と飲んでいて、もっと楽しもうよということになった。

彼は書籍専門というわけではないが、とてもビッグなメディアの表紙をずっと描いていて、出版については非常に詳しい。

それで、どうデビューしたのかとか、ずっと前に受けた指名コンペ(というのかな?)について根掘り葉掘りきいていた。昔、講談社から「イラストレーター・オブ・ザ・イヤー」みたいな本が毎年出てて、それに取り上げられるとチャンスが急に増えてきたとか。

けど、やっともらった仕事と思って張り切っても、暇つぶしに書いた絵のほうがよかったりすることがあるらしい。彼曰く、「要はイラストって楽しまないとダメなんだよ」。この理由でカバーイラストを断られたんだが、本当にそうだということが何となく分かってきた。

つまり、私は自分とこの本だから誰にも迷惑かけないと思って気軽にやるから、逆に何とか見られる絵になっているらしい。

で、「露出機会もほしいだろうし、描きたいって人いたら描かせてあげよう」、「マニュアル本じゃないから、分かりやすさとかは関係ない」、「誰か、描きたい人いる?ってきいてみよう」ということで盛り上がってしまった。

以前ある本の本文イラストを依頼したときは、ネットでフリーのイラストレーターを調べまくって、気に入った人にコンタクトした。その人のタッチを確認した後だったし、親切に相場をHPに書いてくれていたので、すぐ仕事を発注した。こちらは納品されたイラストにすごく満足だったけど、その人にとっては「特に楽しくない」仕事だったんじゃなかろうか。

そんなことを考えながら飲んでたら、例の友人が盛り上がってきた。

「だから、よかったら採用しようくらいの感覚で、あえて高い賞金とかつけないほうがいいんだよ。なんだったら○○さんも参加すればいいじゃん、名前伏せてさ。好きで描いてる人のイラストが1番だよ」

「じゃあ、××ちゃん、選評書いてくれる?」

「いいよ。でも俺、けなすの嫌だから、ここがいいとかしか言わないよ」・・・こういうところが、この人のいいところ。

というわけで、近いうちに応募要項みたいのを決める。もし興味ある人いたら、メッセージください。

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この記事は、2005年に書かれたもので、現在は特に募集はしておりません。売り込みなどは常に歓迎しておりますが、基本的に「できるだけ自分でやっちゃいたい」タイプなので、あまり外注することはありません。

だんだん上手くなる

2005年09月22日 | 制作業務
今、著者の手伝いをしている。・・・と書くと聞こえがいいが、ゴーストライティングだ。

出版業を始める前は、政治家とか芸能人の本以外は、みんな自分で書いてるんだと思っていた。いろんな人に会って話を聞くうちに、すごい裏事情がだんだん分かってきた。

以前、「どこの牛肉か気にするのに、本なら気にならないのか。名前だけの著者というのは本来は詐欺に近い」と知り合いに言われて、うーん確かにと思ったことはある。

私の場合、まず最初の本は自分で書いた。資格本で公式テキストの焼き直しだったので、何の問題もなし。ある団体が著者ということになってたが、ゴーストをしているという自覚はなかった。

2冊目は著者の要望もあって結構書き直しをしたが、編集作業をしているような気でいた。当時はリライトという言葉も知らなかった。

あと、思い入れ企画をそのまま作ってペンネームをつけたこともあるし、聞き書きもある。

こうして見てみると、原稿を完成させてくれた著者がひとりもいない。そういう著者にお願いしてないからだと言えばそれまでだが、やってて楽しいってこともある。

一応、文章の書き方みたいなことは、きちっと勉強した。詩や小説なんかだと才能がモノをいいそうだが、文芸以外の「伝える力」は、結構トレーニングで上達する。客観的判断は、社員や知人に協力をしてもらっている。書店のお客さんに失礼でないレベルには、一応達してると思っている。

それでも、「編集者はかくあるべき」なんて人からすると、とんでもないことかもしれない。

が、コストがかからない、ということもある。

これが大きい。ほとんど癖になってしまっている。以前、編集者の集まりで「ゴーストに200万払う」という話を聞いて、ビックリ仰天したことがある。うちなら200万あれば、3冊は確実に出せる。

ところで私は、ある程度原稿に目処が立ってくると、すぐカバーのことを考えたくなってしまう。基本的に、文章書くよりイラストとか装丁の仕事のほうが好きだ。で、今回の本だが、やっぱりカバーのことがちらちら頭によぎるようになってきた。

実は売れっ子イラストレーターの友人がいて、仕事と全然関係ないところでこの友人の絵を見たり使ったりしていたのだが、今回の本にイメージがピッタリだと前から思っていた。

で、連絡してみたら「仕事絡めるとつまんないじゃん。遊び仲間なんだからさ~」と言う。

じゃあ、ただでやってくれるのかと一瞬思ったが、私もそういうのは好きじゃない。プロなんだから払いたい。それに、遊びだと双方で決めてすることを、後から仕事で使うってことにも抵抗がある。当然と言えば当然。

ただ、企画段階からこの友人の絵のイメージがあったので、今さら他のイラストレーターというのもピンと来ない。「どうしよう、描いてみようかな~」と、ふとつぶやいたら、友人が楽しそうに「そうしなよ! そうしなよ!」と言った。ちなみに、この友人が私の絵を見たことはない。

簡単なカットを描いたこともあるが、たまたまその本には「簡単さ」が合うと思って描いてみたら、周りがいいと言うので使っただけだ。

今回のカバーイラストのイメージは、ちょっと違う。

が、それでもきっと「最終的には自分で描いてしまうんだろうな」と想像がつく。一応、まだ原稿に取り掛かってる段階だし、いろんなイラストレーターの絵を見てみようとは思っている。

けれども、「自分で描く」誘惑はめちゃくちゃ強い。コスト云々を抜きにしても、強い。

結論。文章だってトレーニングしたら上手になった。きっと絵も何度も描けば、タッチとか落ち着いてくるだろう(イメージはあるんだから)。というわけで、とにかく原稿をあげて、著者にいじってもらう間に絵の修行をすることにする。

こいつは楽しみだ♪

避けたい自費出版

2005年09月20日 | 制作業務
最近、いわゆる自費出版というものに関わった。

ご存知のとおり、うちは「棚ぼた取次口座」で始めたので、儲けるために特殊なことをするって感覚は非常に薄い。書店直販もそうだし、電子出版もそうだ。なんとなく、正常ルート&普通の出版を、楽しみながらやりたいと思っている。わざわざ「大変そうなこと」や「出版の人にあざ笑われそうなこと」をする気にはなれない。

すべての自費出版が「あざ笑われそうなこと」とは言わない。

が、前回の本のように、人によっては「あざ笑う一歩手前」みたいな反応をする人がいるのは事実。あれは無名の著者だったし内容がそういうジャンルだったので、ある程度は覚悟していた。でも、手塩にかけて作ったので、そういう反応をされるとちょっとムカつく。

それはいいとして、「本当の」自費出版。

以前うちで出した著者がもう1冊出したいといってきたんだけど、うちで出せるような本じゃなかったので断ったら、金を出すからと言ってきた。あんまりそういうことに関わりたくなかったので、社内の別の人間に作ってもらった。

あと私自身が最近、ある出版社の自費出版のDTPだけを請け負った。

やってみた感想は、とにかく面倒だ。

なんというかプロの著者やライターと、こだわるところが違う。何が違うって説明するのは難しいんだが、「売ることに直結してない」と言うべきか。

文芸作品なんかは別として(っていうかやったことないので知らないが)、編集者が出す要望は「分かりやすく」も「読みやすく」も「ターゲットが云々」もすべて、売るためのことだと思う。ヒットを狙ってあこぎなことをするなんて場合じゃなくても、同じ。つまり「いい本を作る」ための要望と「売れる本を作る」要望は、ある程度一致するんじゃないか。(ここでコスト云々のパフォーマンス的話は無視する) で、プロの著者やライターは(こちらの要望に応えてくれるかは別として)それを分かってくれる。

が、自分の本を出すために金を出す人々は、あまり意見を言ってもらいたくないようだ。

けれども、「金を出すのは自分なんだから黙ってろ」とか、「とにかく好きなように作らせてくれ」というのとは、微妙に違う。そういう人は、きっとこっちも分かりやすいと思う。はい、わかりました、「どうぞご勝手に」なり、「他へ行って」なり、対応も決めやすい。

そうじゃなくて、「彼らなりに売れる本を作るための考えがあって、そこんとこの議論はしたくない」って感じだろうか。セミナーとか取引先とか彼らの守備範囲の例を出して、とにかく譲らない。

彼らの守備範囲でめちゃくちゃ売れるんだったら問題ない。というより、守備範囲でめちゃくちゃ売れるようなときは、書店売りでも「その系統で間違いない」ってなことになったりする。

で、めちゃくちゃは売れない人たち。原稿を前に話してるときは「議論はしたくない」んだが、その後飲みに行ったりすると、「たくさん売りたい」だの「○○さんからいろいろ教わりたい」だのと言う。

そうですね、なんて相槌は打つが、ハッキリ言って非常に面倒だ。

できれば避けたい自費出版。きっとそう思わない人たちが、バカスカ儲けているんだろう。

印刷所

2005年09月07日 | 制作業務
STUDIO CELLOさんに言われて、地方の印刷所のほうが高いと初めて知った。配送料なんかを別にすると、地方のほうが安いのだと思っていた。

ところで印刷料金の話じゃないけど、地方の出版社はどうやって納品しているのか、非常に興味がある。特に、1冊だけの注文。

それはそうと印刷所。過去の記事に書いたことではあるが、右も左も分からなかった1冊目、広告デザイン業をしている友人に「DTP&印刷」で発注して、ずいぶん高かった。

なんか違うな~と思ったのだが、どこをどう頼めば安くなるのか、よくわからなかった。私は元土建屋なので、「よく解って発注すると安くなる」ことだけは知ってた。要するに、同業者同士で競争はあるだろうけど、ただアイミツをとるだけじゃ、安くならないとわかっていたのだ。

で、まず印刷のことを勉強した。

それから、手持ちの本を見たり本屋に行って奥付ばっかり調べまくって、よく出てくる業者の名前を覚えておいた。とはいえ、凸版印刷なんて取引開始のときうるさそうだし、何も行動は起こさなかった。

ちなみに、ほとんど趣味なのだが、昔例の広告デザインの友人の手伝いをしたことがあった。それで中途半端な知識ではあるけど「できそう」と思ってしまって、DTPを自分ですることにした。失敗を繰り返しながら、外注しなければそれだけコストもかからないので、そのスタイルが続いている。本文もカバーもスリップも全部私がする。

ただ、活版とか古いことは何もわからなくて、何でもみんな「データを作ってフィルムを出力する」んだと思い込んでいた。

ところが刷版とかなんとか忘れたが、その辺のいろんな工程でいろんな業者が工夫をしていて「印刷価格革命」をしているってのが分かってきた。

で、ブックフェア。最近は「出展してください」宣伝がうるさくて行く気にもならないが、初めて案内をもらったとき、覚えておいた業者の名前をみつけて、いさんで出かけてった。

出展業者からしたら、飛んで火にいる夏の虫。でもフェアが終わると、「お客さんなのに喜んで名刺を渡すおかしな出版社」にみんな挨拶に来た。

ようやく「出版に詳しい」、「出版がメインの」印刷業者との付き合いが始まった。

・・・というわけで、安い印刷所のみつけ方なんて知りません、すみません。

けど元土建屋の知識を駆使すると、例えばスケジュールに余裕を持つと、地方でも東京の「出版メイン」の業者を使えると思う。データのやり取りと校正に時間的余裕を持てば、無理に「お近くの」業者を使う必要はないんじゃないか。

確かに、「朝一で平河で見本受け取って、その足でトーハンに持ってって、ダメだし食らって、速攻で平河に引き返して修正を頼んで…」ってなことは、できなくなるけど。でも、これは私がバカ過ぎるせいだから、普通は必要じゃないだろう。

最後に、他の出版社はどうか知らないけど、私が個人的に気をつけていること。

あまり単価が変わらないからと言って、不必要にいっぱい刷らない。単価が上がったってしょうがない。売れる分しか刷らない。

イマドキの印刷屋はみんな、「小部数に対応しています!」なんて威張ってるから、こっちも威張って小部数を発注する。

事務所に山積みの本を見て胃を痛くするより、ずっとましだと思ってる。

彼らにとっては「流通革命」らしい

2005年09月01日 | 返本
本当は返本のことなんか書きたくないんだが、最近いろいろ動きがあったようなので(よくわからない、しょっちゅう動きがあるのかもしれないが)少し書く。

おそらく大手の出版社では、動きがある前に取次から「ご説明に伺」って「ご賛同いただい」てることだろうけど、後手後手のうちとしては最近の出来事だ。

まず、なんか新しい流通センターがどうのこうの…という話は去年から聞いていた。聞いたといっても、新刊のときに本を納品してくれる運送屋のオヤジから聞いたんですが。で、それはスゴク遠いところになるけど雑誌専用で、私の細々とした注文納品には影響なさそうだったので忘れていた。

今年度に入ってから、日販から「返品は全部の取次と共同でする」みたいな「ご報告」が来た。うちは新刊が出てすぐを除くと、おじさんが1冊持って…なんてこともよくある。だから、トーハンと日販がまとめて持ってきてくれるならそりゃ結構と思っていた。

が、何も変わらなかった。

7月の終わりに新しい返品センターの説明会をするから来いと、トーハンからお達しが来た。あんまり関係なさそうだったが、わざわざ呼んでくれたんだから邪魔にはされないだろうと思って、久しぶりに本社まで出向いた。

もしかすると日販の言ってた共同返品か?と思ったけど、全然違った。自慢の新しい流通センターの一部が返品センターで、その説明だけだった。ただ、バーコード管理になって書店ごとの返品のデータも取れる云々の話に、私以外の参加者が反応していた。

私としては書店ごとの返品がわかっても、日本全国の書店に営業なんていけないので、あまり意味がない。まして当然のことながら、そのデータはただではもらえない。

うちに関係することといえば、今までみたいに紐で結わいてくるんじゃなくて、箱に入れて返品したいから了承してほしいと言われた。箱といってもプラスチックの、何ていうか瓶ビールの箱みたいなヤツ、名前を忘れた。本が傷みさえしなければ全然問題ない。

ついでに、紐で結わいた束ひとつにつきいくらだった返品手数料が、箱1個につき…に変わるとのこと。箱がいっぱいじゃないときは割合で…というから、うちの場合お得になるかもしれない。

と思ってたら、今度は日販から「返品手数料を束ひとつにつきいくらでなくて、1冊いくらに変更するので了承しろ」というお達しが来た。今年の3月だったか4月だったかそのあたりの3ヶ月間の平均手数料を、わざわざ計算してくれていた。

その期間は返品が少ない時期だったので、試しに検算してみた。ちょうどそのとき暇だったせいもある。総返品手数料を総返本数で割ったら、合っていた。合ってはいたが、「おじさんが1冊持ってくる」ことが多い時期だったので、ちょっと不利な気がする。それでもお達しはお達しなので、了承印を押した。

と思っているうちに、日販の返品についてくる伝票が突然変わった。それまでの何枚複写の薄い紙じゃなくて、A4の普通の紙に印刷してある。それを、相変わらず何枚も置いていく。システムが変わったなら、ついでにそのあたりのコストセーブもすればいいのにと思う。

よく見ると、トーハン、大阪屋、太洋社など、他の取次の欄もある。他の出版社には、本当にまとめて返品されてきてるんだろうか。それぞれの欄に数字の入った伝票になってるんだろうか。返品おじさんにきいたら、「知らない」とのこと。ルートが違うのか。

結局、今までトーハンと日販の両方の返品伝票をためてたファイルの他に、日販用にA4判のファイルが必要になったこと以外、変わったことはない。

ただ先日、日販から「受領印をもらった伝票がない」と電話がかかってきた。調べてみるとこちらの控えもないので、本自体も受け取ってないだろうと答えておいた。

さっそく「混乱して」いるらしい。