出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

カバーデザイン

2005年03月30日 | 制作業務
「未公認なんですぅ」で、カバーデザインについての記事を読む。「カバーデザインはむずかしいっす」とある。

編集のプロが難しいと言ってるのにおこがましいが、私にとってカバーデザインは嬉しい仕事のひとつだ。

いや、難しいのはもちろんだ。が、とにかく「好きなように作れる」のに「コストがかからない」し、「やってて楽しい」のに「仕事である」というのは、これくらい。

ちなみに注文受けや納品も嬉しいが、カバーデザインほど楽しくはない。

私の場合、だいたい原稿が形になってきた時点で、周りに「ちょっと読んでみて」と声をかける。読んでもらってる間に、持ってるイメージをとりあえず描いてみる。

もうすぐ本が出来上がるというワクワク感もあって、どんどんイメージが膨らむ。どんどん膨らむが、膨らんだイメージが「ウケる」とは限らないのが、少々悲しい。

しかし、描いてる本人はその時点では「これしかないだろ!」と思ってるので、とりあえずのつもりがどんどん細部にこだわってしまう。1冊目のDTPを頼んだデザイン事務所の若いデザイナーが、チラシはささっと済ませて、会社案内なんかになると夜も寝ずにこだわってた気持ちがわかる。

イラストレーターとフォトショップを使う。トンボの付け方とか左横にCMYKとか付けることだけ、そのデザイン事務所の友人に教わった。あとは趣味を活かしている。(こう言うとカッコいい)

本文中のイラストを外注するときは、カバーのイラストも頼んでおく。けど、装丁(というのか、イラストをどうはめるとか全体とか)は、自分でやる。こういうときは、楽しさは80%くらいになる。

今回の本は、全部自分でやるから楽しさ100%! だけど、凝るわりにはものぐさなので、私のデザインはいつも、よく言えば「シンプル」、悪く言えば「誰でもできる」程度。

そして、大切なことがひとつある。

印刷屋は、注文した部数以外にカバーとスリップの予備も納品してくれる。はじめは知らなかったけど、書籍専門の印刷屋に出会ってからは、黙っててもしてくれる。オビがあるときはオビの予備も来る。

問題は、返本の消しゴム作戦(今後は紙やすり作戦、正しくは改装というらしい)のとき、自分でその予備カバーを折らなきゃいかんということ!

簡単そうに聞こえるだろうが、本屋に並んでいる新刊のようにビシッと折るのは意外と難しい。まず、背表紙が左右にズレる。折り返すところのサイズが小さすぎて本体の表紙が曲がったり、逆に大きいと緩くなる。

なので、最近は「折りやすさ」に結構重点を置いてデザインする。背表紙のバックの色を変えたり、ちょっと印をつけたり。そういう装丁デザイナーはあまりいないと思われる。威張ることじゃないが。

ISBNとかJANコードのところは、価格を決めるまでアタリだけ付けておく。

価格で思い出した。

恥ずかしいことに、私はカバーを二回刷り直している。

1回目は、消費税込みで千円の本のとき。本体価格が違うと、見本納品(部決でしたっけ)のときに言われてしまった。1週間後くらいに書店に並ぶと思ってたのにショック!で、慌てて刷り直した。もちろんコストもかかる。

消費税って、1円未満切捨てとか切り上げとか、売るほうで勝手に決めていいもんだと思い込んでいた。他の業界、そうじゃないですか? 知らんけど。

トーハンの仕入部の人の説明によると、書店のPOSレジがどうのこうの。どうのこうのって、要するに説明をちゃんと聞いてないんですけど、ムカついてもしょうがないらしかった。

2回目は、例の総額表示のとき。本体価格を入れてなかった。出版何とかの団体からガイドラインの手紙をもらっていたけど、すっかり忘れていた。後で見たら、ちゃんと本体価格も表示せよと書いてあった。これは自分のミスなので、ムカつくというよりは情けなくなったが、しょうがなかった。

印刷屋のお兄さんには呆れられている。「次は前もって仕入部に見せに行ったら」とまで言われた。このお兄さんは印刷屋だけど、出版について私なんかより全然詳しいので、いろいろ教えてくれる。(教えてくれるが、後から教えてくれるので、いつまでたっても「一つ一つ学んでいく」苦労は変わらない)

そうじゃなくても、作っているときに取次の意見を聞くのはいいことらしいので、今回は見てもらうことにする。

「久しぶりですね~」の嫌味を言われるのはわかっているが、見てもらわなくても部決のときに言われるので、嫌なことは先に済ませたほうが良かろう。

地方小

2005年03月28日 | 出版の雑談
出版に関する本を読んでいると、「編集者も書店回りをすべき」と書いてある。あるいは「営業と仲良くやりなさい、いろいろ教わりなさい」とも書いてある。

なので本当は営業嫌いだけど、新刊の出るときだけ、ちょこちょこっと書店を回る。が、出版の本に書いてあるような効果は、今のところない。

行く回数が、圧倒的に少なすぎるからだ。店員さんと仲良くなってどうのこうの…という話になるほど行かない。(行けばいいんだが、ホラ、注文受けとか搬入とか、次の本のこととかあるから)

せめて地元の書店だけでも仲良くなろうと思ったが、図書館より遠い地元の書店は、コミックと主婦向け雑誌がほとんどの、商店街にある小さい本屋。そこに、まったく毛色の違ううちの本を置いてもらうのは、どう考えても申し訳ない。

ちょっと足を伸ばして原付で10分くらいのところには、大きい書店もある。が、大きすぎて仲良くなれない。

それはそうとはじめの頃は、書店営業ができないなら取次を増やそうと考えた。で、大手2社以外をまず回った。で、断られた。今でもその話をすると、不思議がられることが多い。考えてみれば、取次が増えればその分搬入先も増えるわけで、今では逆に大手2社でよかったと思ってる。原チャリじゃ、そんなにあちこち行けないよ。

それでも3冊目を作ったとき、「これは地方都市や田舎の本屋にぜひ置いてもらいたい!」と思ったので、いろいろネットで調べた。

2ちゃんねるに、地方小云々と書かれていて、どうやら地方に卸してくれる取次のようだった。調べてみると地方・小出版流通センターという会社らしい。

おうっ! うちは小出版だ。おそらく日本で1番小さいぞ。これはきっと(気に入ってくれて)取引してくれるに違いない!

で、すぐ電話してみた。

今の状態とその3冊目(田舎の本屋に置いてもらいたい本)について、熱く説明する。

が!「うちはトーハン・日販さんと取引のある(ような、いっぱしの)版元さんはお断りです」

微妙に言葉は違うだろうけど、そういうニュアンスだ。うちだって小さいんです、たまたまトーハンがOKしてくれただけで云々と説明するが、ダメ。なんか、悲しくなってしまった。

確かに棚ぼた取次口座でも、あるとないのじゃスゴク違うらしい。けど、取れてしまった後は、お宅の言う「地方・小」と変わらないのに~。

こりゃあ、「大手と仲のいい大手」との取引を、大事に大事に守っていくしか道がないってことか・・・。

初めての経理 その4

2005年03月22日 | 出版経理
反応は薄いが、占めるウェイトとしては軽くないので、経理についてもう少し書く。

以前、トーハン日販以外の取次に取引申込に行ったとき、バカにしたような顔で「あなた、計算書作れる?」ときかれた。そのときは、請求書くらい作れるに決まってるだろ!と思って、ムッとした。

その面倒くささを考えると、きかれてもしょうがないかな、とは思う。が、自分で作ったルール(委託は何ヵ月後に支払いとか、注文も翌月と言いつつ一部保留とか)なんだから、取次側は作れて当たり前。

こっちは計算書が合っているか確認したいだけなのに、何がそんなに大変か。実は、ルールどおりじゃない。

例えば、「注文は翌月と言いつつ一部保留」という悲しいルールは、3割保留と契約書には書いてある。

が! 実際は、「3割くらい残るように、適当に支払金額を決める」というのが正しい。なので、突き合せるために自分で計算式を入れて作ったエクセルシートと、絶対一致しない。3割残して残高を出すんじゃなくて、取次様が払うといってくれた金額を引くのが正しい。

それまで溜め込んでいた計算書を、そうやって順番に確認していく。なんとか最新のものまでたどり着いた。売掛金は合ってたので、あの「出版の基礎」コースの講師が言ってたような心配はなさそうだ。

ホッとしたのもつかの間だった。そもそも、「出版の基礎」コースに行ったのは、法人会からの決算説明会のハガキでこりゃいかんと思ったから。つまり、決算の時期だってことだ。

まあ、出版に限ったことじゃないけど、棚卸しとか原価の計算とか、まったくもって面倒だ。返品引当金という余計な項目まで増えた。

おまけに、ちょっとでも出て行く金を減らそうと、消費税の簡易課税で「製造業」の恩恵を受けるために、わざわざ細かく分けるなんてこともしてしまう。

出版始めて以来、「自業自得」と思うことが、やたら増えた。トホホ・・・

新刊案内の謎

2005年03月17日 | 宣伝
FAXや書店訪問などの直接営業以外に、新刊案内なるものがあると知ったのは、3冊目を出すちょっと前だった。

こんな私でもパブというのはわかってて、2冊目のとき出来てきた本をチョロチョロ送った。出来てきたというのは、取次への本番納品の残りがうちに来るときのこと。だから「取り上げてもらえる時期&書店に置いてもらえる日数」の問題について知ったときは、ゲーッ、意味ないじゃんってなもんで、嫌になった。

で、新刊案内だ。きっかけは、日販から「日販速報」をとってくれと営業電話があったこと。出る新刊が全て載ってるという。年間2万円ちょっと。うちは地下鉄の出口から100メートルも離れてなくて、かつ最寄の書店より図書館のほうが近いので、ほんっと書店に行きづらい。それで、少しは書店行きをサボれるかと思って購読することに決めた。

最初の号が来た。ホントに新刊点数って多い! 雑誌もやたら始めたりやめたりしている。それはいいんだが、発刊日が2週間から2ヶ月先の本ばかり載っている。

こりゃ、見本納品に行ったときに端末に入れてるデータじゃないな。そう思って、日販に電話した。新刊案内は版元から送るものだという。CVSのファイルに書名とか価格とか書き込んで、メールで送るとのこと。

それならそうと、先に教えてくれよ。

それはそれで片付いた。で、足で回る書店営業が苦手&効率悪すぎなもんだから、オンライン書店への営業をすることにした。

まず大手アマゾンに行くと、面倒くさそうな「コンテンツの掲載」のページがある。言われるとおりにした。

そしたら、「本のデータがない」から載せられないと返事が来た。何事だ! 本のデータはこっちが初めて送ってるんだってば! 納得いかないので質問メールを送ると、取次の大阪屋と取引がないとダメだと言う。

頭に来たがしょうがないので、他のオンライン書店を当たる。一番親切だったのが、イーエスブックス、今の7&Yですか、あそこ。いや、親切だったのは態度だけで、「ありがとうございます。掲載します」とか何とか返事だけは来たけど、いつまでたっても載らなかった。bk1 も同じ。

チェックしていると、取次に見本納品をして2日後ぐらいに、ようやく載っていた。ってことは、あの「部決」に行かないとダメってことか? だって「予約受付中」とか書いてあるじゃないか。よくわからん。

どこかで、ブックスデータだったかマークスデータだったかを使ってると書いてあったので調べていくと、日本書籍出版協会データベースなるものにたどり着いた。メールで問い合わせると、IDとパスワードをくれた。なんだ、それならそうと言ってくれ。

で、4冊目のとき、先にそのデータベースに登録しておいた。

が! やっぱりオンライン書店には、「部決」の数日後しか載らない。おまけに、表紙画像があったりなかったり。細かいことだが、タイトルにサブタイトルがくっついちゃってるのもある。「部決」のときの担当者が、入れたとおりになってると見た。トーハンと日販で違うってことだ。

とにかく仕組がよくわからん。

それどころじゃない。bk1 からたどっていくと、図書館流通センターというところのデータだと言う。で、bk1 に載せてもらいたくて図書館流通センターに電話して「新刊案内FAX用紙」なるものを送ってもらった。するとなぜか、図書館流通センターから結構な数の注文が来た(実際は注文じゃなくて委託だった)。慌てて会社案内をよく見て、なるほど図書館か~と納得する。

喜んでいると、トーハンの図書館担当なる人から電話がかかってきて、見本納品のときにその注文も一緒に出せと言う。それはいいんだが、それを込みの部数が初回配本数になると言う。

なんか、自分で調べて取ってきた注文なのに、ごまかされた気がする。おまけに「次からは案内はこっち(図書館担当)にしてください」と言われる。こっちにしてほしいんだったら、最初に教えてくれよ。あちこちメールしまくって電話かけまくったのは何だったんだ。

どなたか、新刊案内について、私にレクチャーしてください。

初めての経理 その3

2005年03月14日 | 出版経理
出版経理の基礎のコース(ホントは基礎じゃなかった)に出て、ようやく毎日の伝票処理についてクリアになった。さっそく、それまでの伝票を引っ張り出す。

納品伝票は4枚つづりと書いたが、1枚は当然納品のときに取次に渡す。大きな出版社だと、残り3枚があちこちの部署に行くんだろうが、うちは1枚で充分。かといってちゃんと綴じられている紙をわざわざ取ることもないので、そのままにしておく。

返品伝票は、トーハンと日販で微妙に違う。伝票自体もそうだが、返本のおじさんに求められる受領印を押す場所も微妙に違う。で、この返品伝票も数枚と、伝票が何枚あるか書いた紙を置いていかれる。うちに必要なのはひとつの束につき1枚だけなので、それだけ別にする。

複写の分をよく見ると、「起票→出版社控→…」と書いてある。受領印を押した伝票をおじさんが持って帰るのに、また返すんかい! 当時とりあえずそれはそれで別にして取っておいた。が、返さなくても何も言ってこないので、今では全部捨ててしまってる。

あと、月に1回送られてくる計算書。これもきちんと来た順にファイルしてこれからの作業に備える。トーハンは1枚だが、日販はなぜか月二回締めてて、2枚来る。後日、月に二回支払ってもらえる版元もあるのだと知った。

その計算書には、返品運賃手数料の請求書もついている。日販の場合、その請求書の根拠になる返品の表もついている。返品だけでずいぶんいろんな紙がある。無駄に思える。

私の場合、何か始めるときビシッと環境が整っていると気持ちがいい。なので、まず納品返品を記録するためのソフトを作る。作ると言ってもたいしたことなくて、マイクロソフトのアクセスにちょろっとマクロを組んだぐらい。

作るのはたいしたことなかったが、入力が結構ある。なにしろ半年分ほうってあったから。キーパンチャーかなんかのお姉さんに頼めばいいんだけど、返品伝票が多いのが恥ずかしいので、自分で入力する。

ちなみに、自分で使うソフトを作るときは結構手抜きをするので、その分使うとき面倒なこともある。そのへんは、実はずぼらな性格との妥協点をみつける。

伝票を入力し終わったところで、取次から送られてくる計算書と付け合わすためのレポートの出力に取り掛かる。つまり、そういうレポートを出せるように、また自作ソフトをいじるわけだ。

経理コースの講師の言葉が頭に残っていたので、とりあえず契約書を引っ張り出して、取引条件どおりに作ったらどうなるか、やってみた。

委託と注文以外の、自分はあまり関係ないからよく話を聞いてない条件とかがあって、やたら面倒だった。挫折した。

考えてみれば、いつもトーハンから計算書が送られてくる封筒に、出版経理のソフトのチラシが入っている。結構なお値段だとにらんで無視してたが、う~ん、買ったほうがいいんだろうか。

それでも、出版に関してはケチ精神が固まりつつあったので、やっぱり自分で作ることにする。アクセスは面倒なので、納品と返品の数だけ出るレポートを作って、あとはエクセルで送られてくる計算書と同じものを作ってみる。

おいおい、またですか。ここでもトーハンと日販と、微妙に違う。消費税を別に計算するとか、返品が何種類かに分かれてるとか。送られてきた計算書どおりの計算式を入れるだけなのに、謎解きでもしてるような気がしてきた。

その日は、そこまで。疲れきってしまった。

初めての経理 その2

2005年03月10日 | 出版経理
出版経理の基礎のコースに申し込んで、当日、大船に乗った気で喜んで出かけた。なんか、古そうな出版社の2階、それもすっごい古そうな本が積んである棚の狭い隙間を通った、その奥の部屋。その出版社もその協会だか何だかの会員ってことか。

部屋自体は、普通の会議室だった。日本人の常で最前列が空いてたので、その真ん中に座る。講師の目の前だ。あわよくば知り合いになりたい。

始まるまで時間があったので周りを見渡すと、若い人が半分くらい。最近はクリエイティブな職業でなくてもスーツの着方がおかしい若い子が多いので、普通の若い子と区別はつかない。経理担当だからか。

あと半分はなぜか、4、50代の男性。法人会の決算説明会と同じで、毎年出てるのか。

コースが始まってからも、ほとんどの人は興味がなさそう。お仕事ってな感じで、かろうじて前を向いている。(最初の数分のあいだに、ちょっとよそ見してみた)

当時は消費税の総額表示が決まった頃で、まずその話。3%から5%に増えたときの出版社の苦労について初めて聞く。カバーにシールを貼るとか何とか。おおっ、確かに!って感じ。

それから、出版社は高額の飲み食いも交際費じゃなくて会合費や編集費で認められるという、おいしい話。

他に、「常備」の経理上の取り扱いについての詳しい説明。講師いわく、常備は売上じゃなくて預け在庫とのこと。

なんか、前に1冊そういう注文書が来た気がする。が、それっきりだ。きっと書店が勝手に、常備から委託か注文かに切り替えたに違いない。売れたかもしれないし、もう返本で戻ってきてるかもしれない。わからん。大きい出版社だと、日本中に常備とやらがあって、相当な金額に違いが出るだろうけど、うちは関係ない。

そんな感じで超専門的な話題で、コースが終わってしまった! これじゃ、出版経理の基礎じゃない!

講師が、「これで終わりです、ご質問は?」と言ったが、たずねることが多すぎるし恥ずかしいので、ここでは手は上げない。みんなが席を立った後、講師のそばまで行く。

「あの~、納品のときの伝票って○○○でいいんですか?」
当然のことながら、あんた何者?何きいてんの?ってな顔をされる。この反応にも慣れてきていた。

実は最近出版社になって…云々と説明する。そんなことも知らないでなったのかと怒られるので、なぜか取次口座が取れちゃったことも、強調しておく。

「あなた、もしかして取次からの計算書、確認してない? それ、いかんよ~。自分とこの数字と合わせなきゃ」
「計算書のとおり入金されてるから、ほってあります」

講師はあっけにとられ、それからいろいろ説明してくれた。納品、返品、清算(計算書との付き合せ)、それから入金のときの伝票の書き方を教わった。決算のときの調整は、もらった資料に書いてあるとのこと。だいたい見えてきた。

自分を税理士として雇いなさいよ、みたいなことに講師の話が変わってきたので、名刺をもらって礼を言って帰る。

税理士は要らない。
よし! 明日から伝票&計算書と格闘だ!

再版

2005年03月09日 | 出版の雑談
いつも勉強しに行ってる白取特急検車場で、再版の話がありました。

倉庫代とか売れる速度とか、うちとは規模やレベルが違う話だ。が、最近そのことを考えていたこともあって、議論に加わりたい気分。

出版を始めた頃、なんとなく「後世に残すのが出版の意義」「それが文化」みたいなことを聞きかじって、絶版にしないことに憧れを持ってた。当時は再版どころの騒ぎでなかったが、最近ようやく、ある本で初版が売り切れそうになった。

売り切れそうにはなったが、部数は少ない。出してすぐの話でもない。今後、ボチボチならどうにかなりそうだけど、印刷コストを考えると千部単位で刷らなきゃならない。

最初の頃の返本がトラウマになってて、本の束を見るのはあまり精神衛生上よくない。茶色の紙に包まれた新しい本でさえ、積んであるのを見るのは嫌だ。(うちは倉庫がないので、事務所のすみに積んである)

でもなにしろ絶版ゼロの「憧れ」があるので、すごく悩んだ。問題は、売れる速度もそうだけど、白鳥特急さんが言われるような良書じゃないってことだ。

うちは新刊点数が少ないので、私はどんな本でもめちゃくちゃ思い入れて作る。企画のときから他にない点で頭をいっぱいにして、思い込みの強さが逆に危ないくらいだと思う。

でもその本に限って言えば、ちょっと違った類書は多かった。3年経ったらただの類書が出そうなくらい、ジャンルとしてはありふれてた。

さあ、どうするか。印刷屋に見積もりをもらってからもしばらく悩んでた。そんな頃、どこかで古本の話を読んだ。

そうだ、出版初めてずっと新しい本ばかりに目が行ってたけど、世の中には古本屋ってもんがある。ブックオフはちとイメージと違うけど、神田とか。

年月が経っても手に入れたいと思ってくれる人は、古本屋に任そう。だって私は他に出したい本もあるけど資金の問題もあるし。いや、資金の問題っていうと、白鳥さんに怒られる版元と同じになっちゃうけど、優先順序ってものがある。(結局怒られるのは同じか・・・)

そうじゃなくて!

例えば、よく売れてるラーメンがあるとして、ラーメンは食べたらなくなる。「もっと食べたい」と言ってる消費者に、「コストがかかり過ぎるので、もう製造しません」と言ったらかわいそう。

でも、よく出版業界の難しさとかダメさの話に出てくる、「本はひとりで1冊しか必要ない」という話。あれを裏返せば、ラーメンじゃないんだから、版元の責任としてはある程度の数を世に出したらOKなんじゃないか。読んで、もう自分は要らないという人がいれば、どうにかなるんじゃないか。ここで資源ゴミに出すとか燃やしちゃうとかってのは、無視する。

そうだ、そうだ。

だから、最初に予想(期待)した読者の数に達するまでは、再版しようと決めた。うちの場合取次の条件がよくないので、「このくらいの読者はいる!」と自分でにらんでるほど、初回配本数は多くない。だから、それに達するまでは絶版しない。でも、きちんと行き渡ったはずと思ったら、後は古本屋に任す。

うん、そうしよう。

・・・と考えていたのでした。(もちろん、ワーッと売れたら勢いには乗りたいけど)

初めての経理

2005年03月08日 | 出版経理
個人の確定申告、会社の決算説明会と、やたら税務署近辺に用があるこの頃です。

私は2冊目を出した頃までの約半年、よくわからんので返本の束と一緒についてくる伝票をほうってあった。まとめてはあったけど、ずっと手付かずの状態。

ある日、法人会から来たその年の決算説明会のハガキを見て、いや~な気分になった。ゆっくり首を回して伝票の束を見る。ゲッ、これどうしよう・・・ やばい~。

考えてみたら、返本伝票だけじゃなくて納品伝票もある。おまけに出版は「製造業」だという。それまでのサービス業じゃ関係なかったけど、棚卸とかもしなきゃいけないような気がする。

実は、私は会社の経理を自分でしてます。起業の頃ひまだったので、伝票くらい切れなきゃと思って経理の勉強を始めて、そのままずっとやってる。

前にも書いたんですが、私はとてもノリやすい性格。どうせならと会計士の資格本から始め、税理士の資格本、簿記1級、2級と挫折を繰り返した。普通だんだん上級に上がってくんだけど、私はだいたい逆。よく言えば志は高いんですが、挫折も早い。でも、最終的に簿記2級くらいはわかるようになって、そのままやってる。商業簿記だけの知識でも、サービス業ならなんとかなるもんです。

ついでに「誰でもできる決算」「すぐわかる確定申告」みたいな本だけを頼りに、決算と申告と納税までひとりでやる。税理士もいない。

で、困ったのは出版だ。こういう場合、私はまず本を探す。「出版業の経理」・・・探しまくってもどこにもない。他の業種とか個人レベルとか、当時流行のNPOとかの経理の本は山のようにあるのに、出版業のはない!

すごすごと会社に戻って、とりあえず半年さかのぼって最初の委託納品の伝票を書いてみる。右が売上、左は売掛かな。不安になって一般的な経理の本を読むと、委託販売には「積送品」とやらの聞いたことのない科目が出てくる。いかん。これはわからん。人を頼るしかない。

当時入ってた社長の集まりみたいなMLに、出版の経理を教えてくれる人を紹介してほしいと投稿した。いない! 代わりに税理士を紹介すると言われるが、それは嫌だ。税理士なんかに何十万も払いたくない。何とか自分でしたい。

出版社の経理をしてたおばさんでも見つかれば…と思うが、業界に知り合いはいないし、友人知人はみんなサービス業。

困り果てていたが、出版専門のセミナー会社というか協会みたいなところで、「出版経理の基礎」のコースを見つけた! 受講料は1万円。これなら許せる。決算にも間に合うので、勇んで予約した。(続く)

出版企画をひねり出す

2005年03月07日 | 発売前
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

その知人の本を出せないことになって、一瞬めげたが、好きな本を出していいとも言えるので、あっという間に立ち直った。立ち直ったが、考えたらやっぱりそんなに簡単じゃない。

ちなみに取引申込で年間10冊くらい出すと言ったが、実際の契約では「6冊は出しなさいね、じゃないと代金払わんよ」と書いてある。

後になってわかったけど、この契約はいいかげん。実際は冊数ではなくて、売掛金だけがモノをう。売掛残高があるうちは、出さなくても大丈夫。出さなくても…というのは、ずいぶん後ろ向きな姿勢だが出すには金がいるので、うちは無理しない。

よく「売掛金の回収のために新刊を出して、自転車操業に陥る出版社」と言われる。けど、そういう業界知識を慌てて詰め込んだ私としては、現実の経営状況を把握する前に「次々出したらいかん!」というのが頭にこびりついている(笑)

とりあえず自分ひとりでじっくり作ってみて、何ヶ月かかるかやってみようと思った。3、4ヶ月くらいだろうと踏んだ。勝手に。たぶん年に3冊出せば文句言わんだろう。

皆さんは、「編集とか雇えばいいだろ」と思われるでしょうけど、ひとつ問題があった。取引開始の条件として1500万円の資金を作れとトーハンに言われてたが、本当は作ってなかったのだ。帳簿操作だけ。後は様子見と思ってた。何にも知らない業界に、大金つぎ込むか、普通?

1冊目の資格本くらいの予算なら、あと何回かいけそうだ。しかし、ということは、何回か出して生き残るためには印刷代以外に予算はかけられない。ということは、やっぱり私がひとりでやらないとダメだ。

けれども、本当の問題は予算じゃなかった。(この頃は)

例の知人が「いち抜けた」した後、出版企画というものを考えてはみました、本当は。

けれど!

芸能系にコネがあったが、アホタレントの本なんて嫌だ。文芸は、手を出さない方がいいらしい。個人的に「幸せになる」系の本は、好かん。経済系はいいんだけど、範囲が広すぎて悩む。ダイエット本は売れるらしいが、軽薄な気がする。

自分の会社の金だから、やりたいことができるのだが、あまりにもチョイスが多すぎて、これ!というのが思い浮かばない。お腹いっぱいのときに、「何でも好きなもの食べて」とずら~っと食べ物を並べられたような感じ。

後になって気がついたのだが、企画、企画といってもまっさらな状況から生まれるわけではない。前に出した本とか、誰かが会いに来るとか何かきっかけがあって「あ、これ面白いかな?」と思い、いろいろ調べてみて「イケルかも」となる。

私は「応用は得意だけど、ゼロから作れない」タイプではない。自分で言うのは恥ずかしいが、クリエイティブなほう。なのにというべきか、だからというべきか、企画で行き詰ってしまったのだ。

これまでの本との関わりは、あくまでも「読者」。突然作れと言われて(言われてないけど)困ってしまった。

出版社の器だけ残る

2005年03月06日 | 出版取次口座の取得
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

書店向けにFAXは送ったが、聞いたこともない資格の対策本なんで、どうも積極的に売り込む気持ちが湧かない。しばらくは、他の仕事の合間に納品や返本消しゴム作戦をのんびり片付けていた。

が!
出版の話を持ってきた例の知人が、普段と違う顔つきでうちの事務所までやって来た。なんと、倒産するはずだった出版社が息を吹き返したのでやっぱりそっちで本を出すと言う。

「それは困るよ、あの出版計画どうしてくれるんだ」と言っても、もう決ったとか何とか。

「うちも困るから、たくさんセミナーやってるんだったら資格2つくらい、うちから出してよ」と言っても、それはできないとか何とか。

どうやら、ただ息を吹き返したんじゃなくて、裏で知人と何らかの駆け引きがあったらしい。

知人は売り込みの押しが強い人間とは知っていたが、逃げるときの押し、いや退きとでもいうんでしょうか、そいつも強かった。

後には、器だけバッチリの出版社が残された。勢いで取れてしまった取次口座。しかし、出す本がない・・・

取次口座付きの会社は高く売れると聞いたことがある。ちなみに契約では、社名や役員の変更、営業権の譲渡は速やかに報告しろとある。報告しろってことは、売っちゃいかんという意味ではないのか。

でも会社を売るのは問題外としても、営業権だって非現実的だ。売ったと報告したとたん、取次が口座閉鎖を言い出さないとも限らない。なにしろ1冊出しただけで、取次がうちを「取引先」と認識してるかは怪しい。

一瞬、お先まっ暗と思ったが、持ち前のノー天気が出てくる。いろんな本を出してみたいと、私自身つい2ヶ月前に思ってたじゃないか。金を出して本を作るのはうちなんだから、誰かに迷惑かけるわけじゃないし。

よし! やってやろうじゃん、出版社!

あの仕入部で断られてた若者や1億の某県人にはちょっと申し訳ない気もするが、これも運だよ。

そう考えたら、ちょっとワクワクしてきた。実はこれが私の長所でもあり短所でもあるのだが、もちろんそのときは、そんなこと気にしない。明日じっくり本の企画でも考えてみよう♪ これがホントの苦労の始まりでした。