出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

アマゾンその後

2008年08月27日 | 営業
前回は「ほとんど仕事をしていない」と書いたが、まだ100%復帰とは言えない。威張ることじゃないんだが、これが自営業のいいところ。

以前アマゾンの苦労について書いたので、フォロー記事を書いておくことにする。これまでのあらすじは、「書誌の登録自体がよくわかんない」→「取次との関係だと知る」→「大阪屋に取引申し込みする」→「何度も断られる」→「アマゾンだけはどうにかならないか」→「大阪屋のEC部署に行けとアドバイスされる」→「トーニッパンがあるのでダメ、通常の口座を開けと言われる」→「再度申し込みするがダメ」→「突如、コネを頼ることになる」→「大阪屋と取引開始」・・・といったところである。

アマゾンのある部署からトーハンの書誌データを使っている(から、出ないのは変なので確認しておく)と言われたこともあったし、日販のどこそこの部署へ連絡しろとアドバイスされた(結果らちがあかなかった)こともあった。とにかく、大阪屋との取引が始まった時点で、まずは既刊の登録をしてもらった。当時、アマゾンでは「発刊後数ヶ月経ってなぜか出る」状態だったので、既刊はすべてクリアしていた。ただ、その「数ヶ月経つ」ことが今後はなくなるだろうということで、ホッとしていた。

が、当然、書誌は出ているが在庫がない状態である。何週間もかかると買う気が失せるお客さんがいるそうで、そこをどうにかしなきゃならない。が、大阪屋からも「今度の新刊から」と言われてたので、ま、それでいいだろうと考えていた。コネの方からの突っ込みもあったんだが、なにしろ「出て数ヶ月(どころか数年)の本ばっかりだったので、次の新刊で!と思っていたのだ。

市場在庫がほとんどなくブックライナーに頼り切ってるわりに客注がちょろちょろ…という本があって、今までもアマゾンからそういう注文は来ていた。「待ってでも何でも、どうしてもアマゾンで!」というお客さんじゃないかと想像するんだが、その本の注文がちょっと続いた。

何が変わったのかと言えば、「ただの在庫なし」が、「この商品は、Amazon.co.jp が販売、発送します。」に変わったということだけである。そんなにアマゾンで買いたいのか。マーケットプレースの「版元が発送する新品」じゃ、そんなに嫌なのか。どっちにしろ他のオンライン書店なら問題ないんだけど・・・などと考えていた。

そうこうしているうちに、からくりは一切わからないんだが結論を言うと、いつの間にか、その本がアマゾンで在庫ありに変わっていた。以前はアマゾンからの注文は、大阪屋からのFAXか、いかにも客注(待ってでもの客)という短冊(トーハン経由)だったので、なんとなく理解できた。が、こうなるとわからない。

思い返すと、大阪屋のおみくじおにいさん(さいきんはおばさん)のところでもらうアマゾン短冊には、いろんな色がある。知らないうちに、つまり「待ってでも」の注文だと思って納品していたのが、実はアマゾンの在庫分だったということは考えられる。

ようするに、売れる本なら仕入れてくれるということである。

が、「この商品は、Amazon.co.jp が…」以前はそんなに頻繁に注文がなかったし、ちょっとくらい売れても在庫分を注文してもらえなかったことを考えると、やはり「この商品は、Amazon.co.jp が…」は大きな違いを生んでいたのだ。言い方を変えると、大阪屋の存在はやっぱり大問題だったということだ。

ちなみに今度から!と勇んでいた新刊は、出るちょっと前に日販に変わったというニュースが出て、よくわかんないから放っておいたらうまく行った。他のオンライン書店と同じように、在庫ありで、急げば翌日届くみたいな文面も載っていた。

細かい話をすると、「普通の本屋さんと楽天に行くと思っていた分にアマゾンが増えるなら、その分新刊委託配本数が増えるのかと思ったら大間違い」という悩みもあるんだが、まあよしとする。

話をまとめると、営業が苦手な私にとって「やはり取次はありがたい」の一言に尽きる。もっといろいろ「どこへどう営業する」云々の話もあるんだろうが、それは今の状態以上の展開を望む場合のこと。とりあえず「読者に届けやすくする」だけのことなら、目的は達成されたような気がする。

で、「じゃあ、仕入れてもらえる本を・・・」という話になって、それは普通の本屋さんも同じことなんだが、それでこの1ヶ月考え続けていたことがあって、それを次回書きます。

何よりも本を愛す

2008年08月14日 | 出版の雑談
前回エラそうなことを書いておいて、じゃあ何してるんだというと、エラそうな記事を書いた7月25日以降、ほとんど仕事をしていない。3年に1回の地元の祭りと、毎年来る誕生日(ただしぞろ目+αは20年ぶり)と、4年に1回のオリンピックのせいで、毎日のように「仕事より○○だろう!」を繰り返している。

仕事と言ったら、とりあえず休めない搬入の旅と本屋のバイトだけ。というわけで、本日も本屋のバイトには行った。

昨日が休配日初日で、通常通りの仕事を済ませると、何もすることがない。普段できない引き出しの整理とか、あまり意味のない「客注商品の並び替え」とかをして時間をつぶすが、お客さん自体が少ない。店の名誉のために言っておくと、開店から昼までの客数はあまり変わらないが、昼ご飯を食べた後に来る近所のオフィスビルのお客さんが少ない。盆休みなので当然だろう。

なので、本日はもっと暇だろう(掃除もやり尽くした)、帰ってもいいって言ってくれないかなと期待しながら行ったんだが、初っ端から「のんびりやりましょう」と言われてしまった。のんびり・・・って、レジ打ちなんか、のんびりしてればしてるほど疲れちゃうのに。

さて私は、普段は何かと言うと「本を読め」と思うタイプである。親殺しが増えたとかうつ病が増えたとか子どもの学力がどうとか、ネガティブなニュースのほとんどのケースで「本を読んどらんからだ!」と憤ってしまう。それが発展して「良書が云々」の話になるとそこまでは…と思ってしまうが、まあ「自分の周りの世界以外のことを知っておく」には本が一番だし、今はこういう商売なので、世間のみなさまには本をどんどん読んでいただきたいわけです。

が、本というか出版から完全に頭が離れてしまっている本日、なんで店長に帰ってもいいと言ってほしかったかと言うと、北島を観たかったからである。

それが叶わないとわかった時点でできることは一つ。ラジオをオリンピックに合わせること。

ちなみにうちの店では、レジのカウンターの下にラジカセ(今だとラジCDって言うのか?)を置いてある。私(朝番)がバイトを始めた頃は無音だったのだが、夜なんかはCDをかけるらしかった。社員の入れ替わりがあって新たに来た人は元野球少年で、選抜に合わせてくれと言われてラジオをかけ始めた。その後、ニュースも聞けるもんだから毎日つけることにしたんだが、普段はJーWAVEとかの軟弱な局を選んでいる。

と、これがなんとAMが入らない。しょうがないのでTV局の音声に合わせて、ちょっとボリュームを大きくした。

耳を傾けると、目は近くでなくてあらぬ方向を見たりしませんか? で、目に入ってきたのが、あちこちの書棚に張り付いているお客さん(4人くらい)。

そのとき私が思ったのは、「おいおい、家帰ってテレビ観ろよ! 連覇だよ、金2個目だよ!」ということである。こっちは泣く泣く働いてるんだ、こんなところで何してるんだよ。

おまけに勝ったとたんにワーッと騒ぎたいんだが、本屋は静かな所である。拍手もできない。もうストレスたまりまくり。祭りのときも、神輿を担いでいて休憩が店の近くであったのでちょっと挨拶と思って入ったら「普通の営業」をしていて、しらけたものだった。

しかし、北島を見たい人がいれば、本を買いたい人もいる。祭り中に本を選んでいる人もいる。いろんな人がいるのは当然だし、普段本を読め読めと言っている人間としては、「北島より本」ってな人にも拍手はしたい。

が、ストレスでもある。ただの「私のわがまま」なんだが・・・。