出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

慣習

2008年03月10日 | 出版の雑談
大阪屋の件、落着。さっそく注文納品に行ったが、あの坂はどうにかならないものでしょうか。確か出版を始めた頃、なぜか1回納品に行ったことがある。当時は原チャリじゃなかったので、腹とあごが心配で心配で・・・、気をつけて駐車したものの結局腹をこすって頭に来た。

今回は原チャリだから問題ないと思ったんだが、大間違い。なんと、あの坂に停めるのは原チャリでさえ難しい。他の車の邪魔にならないように縦に停めると、スタンドがなんとなく安定しない感じ。離れている間にガチャンといったら大変である。しょうがないので、歩道に縦列駐車することにした。

受品口では、いろいろ新しい発見があってすごく面白い。規模から来るものもあると思うが、取次によっていろいろ違って新鮮だ。ちなみに私は、取引はなくても大洋社の受品口の人とは仲がいい。納期短縮のために直納することがあって、もちろんイレギュラーなのは承知なのだが、何度か行くうちに慣れてもらった気がする。

話変わって、最近あちこちの業界で値上げのニュースが出る。「原材料の価格が上がって、消費者には悪いが・・・」というもの。本も原材料は上がっているが、どこかの大手が値上げなんて話はないんだろうか。

以前読んだ本に、紙が値上がりしたとき便乗値上げをした版元がいると書いてあった。著者はそういう版元に対して怒っていて、モラルがどうのこうのといって嘆いていた。

紙の価格が上がったらどの出版社も大変だろうから、「便乗」という意味がよくわからない。後から「うちも、うちも・・・」となるのがそんなに納得いかなかったんだろうか。

どちらかというと私は、「便乗値上げ」という言葉に、戦後の混乱期みたいな潔さを感じる。生き残るためにはOKでしょう!みたいな。出版不況と言われてずいぶん経つが、今は「だったら値上げ!」というより「でも本体価格上げると売れないし・・・(めそめそ)」のようなひ弱さを感じる。

上げたきゃ上げればいいのに。いや、ちまたの出版社は、上げたいとは思ってないのか。

他には、ネスレ(だったと思う、ネッスルだっけ?)が卸業者からの返品を受け取るのをやめて、その代わり別ルートの販売とかを支援するってなニュースもあった。「ネスレ」を「○○出版社」に、「卸業者」を「取次」に、「菓子業界」を「出版業界」に変えても、そのまま何の違和感もなく読めるような記事で、笑ってしまった。「日本では中間業者(卸)の果たす役割が大きく、そのためある程度の返品も当然である」というような説明がついていて、製造業に詳しくないのでちょっと驚いた。

出版を始めてから、この業界のことばかり勉強しているので、頭が偏ってきているような気がする。特殊だ特殊だとあちこちで読むせいで、「こんなに返品がまかり通るのは出版業界だけ」みたいな気になってしまう。だけっていうのは違うとしても、業界独自の流通形態とかなんとか、「メリットもデメリットもあるがしょうがない」という理屈に慣れきっている。本当は私自身は別に問題だと思ってるわけではない。ただうちの返品率は下げなきゃなと思うだけなんだが、それでも「ゼロは無理だろう」のような甘えはある。

そうか、他の製造業でもある話なのか。今度「業界シリーズ ー 菓子業界」みたいな本でも読んでみるか。その本にも閉鎖的とか慣習に縛られるとか書いてあったら、またまたちょっと笑っちゃう気がする。