出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

発刊中止の影響

2012年03月15日 | 発売前
このブログの更新がほとんどない理由は、こちらのエントリをご覧下さい。

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昨年末、ある著者の本が発刊中止になった。すでに近刊情報として世に出て、事前注文を受けるべく書店にFAXまでした後であった。

昨年近刊情報センターというところで手続きしたので、今は以前からしている書協への登録を済ますとそちらへもデータが流れる。予告として一部の書店などにも流れて、そのまた一部の書店では予約を取り始めてくれる。出てから勝負というか、事前営業なんてものとあまり縁のないうちとしては、とてもありがたい新システムである。

事前注文取りのFAXはだいたい印刷会社への入稿の10日から2週間くらい前なので、実損を食らうことはなかった。刷ってしまっていたらと思うと恐ろしい。しかし書店へ送ったFAXに返信(注文)をもらっていたので、ごめんなさいの連絡をしなければならなかった。

刊行中止が決まった後、まずはその近刊情報を扱っているところへ連絡し、データを削除してもらった。それは問題無し。ISBNを管理している日本図書コード管理センターというところと人員?組織?が重なっているようなので、あとどうするか…みたいなアドバイスももらえた。

どうするかっていうのは、ようするに「出なくなった本に一旦振ってしまったISBNをどうするか」ということである。その人が言うには、「後日出ることになる可能性が残っているのなら、そのままにしておけ。絶対出ないなら、使いたまえ」ということであった。

気にならない人は気にならないだろうが、うちのように刊行数が少ないとISBNは結構キレイに出した順になっているし、かつ出版者記号6桁の版元としては、ひとつも無駄にしたくないような気もする。そんなタイミングで無理を言ってくる著者と二度と関わりたくないので、うちから絶対出ないのは確実なことである。つまり、とっとと使いたい。

それでも一応、次の本にはその次の番号を振っておいた。問題があるかもしれないというリスクを回避したんだが、実際のところ、どういう問題が起こるかもしれないか、その時点ではよくわからなかった。近刊情報をアマゾンが使ってくれてるのは知っていたので、「問題があるならそこ。うちは構わないが、著者がうるさいと嫌だ」という理由であった。大きな書店であるのは確かだが、販売機会の喪失より、アマアマうるさい著者のほうが苦痛である。

で、その次の次の本はうちが編者となって作ったので問題なかろうと、今回「発刊中止になった本に一旦振ったISBN」を振ってみた。

結論を言うと、取次搬入2日後にして、アマゾンでは出ない。うちの委託配本規模で何もしないとだいたい3冊くらい行くはずなんだが、書誌自体が出ない。裏のベンダーセントラルでは「No List」というステイタスつきで見つかるが、これまた別の問題があって、商品情報をいじることができない。紀伊國屋ブックウェブではタイトルが正しくて画像が古い(中止の本)という事態だったが、本日連絡をしたらすぐに対応してくれた。他の書店は、「なんかいつもより出てくるの遅い気がする」ところと、「何にも問題なく、正しい書誌及び画像が出ている」ところに分かれる。近刊情報をどう使っているか(使っていないか)で分かれたのだろうと思われる。

書店さん、読者のみなさん、すみませんでした。

が、自分の過ちは反省するとして、ちょっと言いたいこともある。

上にも書いたが、書協でデータ削除をしてくれて、あとどうすべきか教えてくれたのは、近刊情報センターにも関わってるというか真ん中の人なのである。書店に使って使ってと営業をかけていた組織で「どの書店でどうデータが使われるか」は、わかっていたのではないかと推測される。「ここでは予約受付もしてくれる」とか、「ここはデータを受け取ってくれるが、実際取次から来るまでは放っておく」とか。

本当にテメエの失策を棚に上げた話で申し訳ないが、あのとき「もう使わないほうがいいでしょう」と言ってくれてたら・・・と思ってしまう。。。

ところで昨日、業界の先輩にこの話をしたら、「そんなもん、言われたとおりにしなくてもいいのに」と呆れられた。問題は、この業界には「言われたとおりにしたほうがいいこと」と「しなくてもいいこと」の両方があるということだ。まあ、どこの業界も同じかもしれないが。

でもって、そのどちらなのか…ということは、経験を積むか、直接関わりなくてもいろいろ経験を積んで予測できるようになるかしないと、判断できないのである。

新規に学ぶことが減ってきたという理由でこのブログも放ったらかしにしていたが、やはり学ぶことは多い。