出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

昼休み

2008年06月30日 | 注文納品
なぜか最近、「トーハンと日販だけに行けばよい」という日が少なくて苦労している。何が苦労かというと、普段はトーハンの受品口の昼休み(12時半から13時半)だけを避ければいいんだが、そうもいかないからである。ちなみに日販の受品口では、昼休みのときも受け取ってもらえる。少人数体制でちゃんと開いていてくれる。

まずは地元本の納品を直接しているので、仮伝票の処理にお茶の水に行かなければならない。ここの昼休みは12時から13時。普通の昼休みなんだが、このタイミングは非常に行きづらい。いつも通りのルートで行くと、20分くらい待つはめになる。近所の本屋さんに営業に行けばいいということは置いといて、ちょっと困る。

受品口もいろいろで、大阪屋の昼休みもトーハンと同じかと思ってたら、こないだ「午後は1時から」の張り紙に撃沈された。知らなかった。今まで昼休みに引っかからなかったのは、ただの偶然だったらしい。

うちは太洋社の口座はないんだが、早く入れたいときは直接納品に行く。一方通行や二段階右折などの不便を考えると、大阪屋→太洋社→トーハンというルートがいちばんよろしい。トーハンの昼休みはちょっと遅いし、その太洋社の仮伝票をトーハンで処理してもらえる。ちょうどいいではないか。後のことも考えて、綿密に到着予定時間を決めた。

が、11時40分頃太洋社まで行くと、運送屋の車がいない。?と思って見ると、なんとガギガギ言いながらシャッターが降りてくるではないか。唖然。昼飯に出かけるおじさんにきいたら、昼休みは12時半までだという。50分間というところに良心を感じるべきか。

その日は、王子の日販からの帰りは東京の東のほうを通って用を済ませることになっていた。飯田橋に戻るとなると、結構なロスというか遠回り。どうすべきか決めかねながらトーハンに行った。

太洋社への納品も桶川に一旦行くのかときくと、やはり行くという。それでは「今日の納品」に比べて、3日か4日遅いことになってしまう。

悩んでいると、受品口のお兄さんが、「太洋社が開くまで、うちの社食で時間潰してます? チケットあるから」と言ってくれた。トーハンの社食! そいつはぜひ行ってみたい!

けれどもその後のスケジュールを考えて、それは諦めた。ついでにその日中に太洋社に行くことも諦めて、次の日同じルートを回った。

おそらく私以外の誰も必要としていないと思うが、ここに各社の昼休みをメモすることにする。

太洋社    11:40ー12:30
大阪屋    12:00ー13:00
日販(仮伝) 12:00ー13:00 
トーハン   12:30ー13:30

ちなみにトーハンの受品口の昼休みが遅いのは、他の社員の人たちと時間をずらしているからだそうな。

地方出版社と地元本

2008年06月14日 | 出版の雑談
なんとひと月ぶりになってしまった。なんとなくバタバタして放ってあるなという気はしてたんだが、まさか1ヶ月とは思わなかった。

理由を考えるに、本を作るのに夢中になっていたんだと思う。もちろん、今までの本もすべて作るときには入れ込んだし、大阪屋が増えてすることや考えることが増えたせいもある。

今回の本は、どうしたらより売れるかってことは考えないで作ったという意味で、すごく楽しかった。どうしたらより売れるかってのは、企画のときにすごく考えて、編集のときに頭の片隅に置いておいて、カバーのデザインのときにまた考えて、あとは売ってるときに考える。それでいいかは別として、私の頭の中で占める割合は、だいたいそんな感じ。

今回の本は、地元をテーマにしている。

小さい出版社の話になるともれなく付いてくるのが、地方の小さい出版社の話じゃなかろうか。でもって、その地域の文化を伝えるとか歴史がどうとかの本を作っていて、全国にも届けられるんだが(地方小とか)主に地元できっちりと売っていて、かつ重版もしている・・・なんて感じである。

そういう地方の出版社の話を読んで、いつもうらやましく思っていた。ちょっとは勉強したので、流通的不利とか、小さいところならどこでもたいがい抱えている問題は理解している。けど、地元のネタで本が何冊も出せちゃうということと、それが地元では売れるということに、地に足がついているイメージを受ける。博打的要素が少ないとまでは言わないが、「読みたいでしょ、読みたまえ!」と売るのではなくて、「読みたいんだけど作ってくれる?」「あいよ。ほら、できたよ」という感じだ。需要を生み出すのではなく、需要に応えてるとでも言おうか。

地方の出版社の人からそこの本について詳しく聞いたことはあるんだが、出版ポリシー的な話を聞いたことはあまりない。だから、需要を生み出す云々もただの私のイメージで間違ってるかもしれない。

それに、芸能関係なんかも需要に応えてるんだろうと考えると、ちょっとわからなくなる。ただ、あのいっぱい出ているビジネス書(どの会社を作ったすごい人とか何をどれだけ売ってすごい人とかの本)との比較として、「生み出す」感は低いと思う。

で、そのうらやむ気持ちのことはすっかり忘れていた。が、ちょうどタイミングが訪れたというか、うまい具合に話が進んで、今回の地元の本になった。

企画段階で「より売れる」ことを考えなかったのは、「主に地元できっちり売っていく」本だと思ったからである。読者層をどこに設定するかとか悩まない。年齢も性別も関係なくて、地元に住んでるという理由で買うだろう。うちの地元の本が出てしばらく経ってるし、地元ネタなら何でもよかったのである。何でもいいってのは極端な言い方だが、基本的な内容を著者と確認した後は、本当に好きに書いてもらって構わなかった。ネタをどう世に出すとか、こういう人たち向けだからこうしようとか、ほとんど悩まなかったのである。

とはいえ、さすがにカバー段階では、全国の書店での効果もちょっとは考えた。けどやっぱり、「地元の本なんだから、地元の私の好きなように作らせてくれ」という、ある意味自費出版に近いような感覚があって、だから、今回はめちゃくちゃ楽しかったのだ。

出版を始めた頃、「ジャンルを絞れ」とよく言われた。地方の小さい出版社のように(少なくとも私が持っているイメージのように)地元本だけに絞ることはできないだろうが、増やしてはいきたい。こんなに楽しいんだということがわかったし、今回の本がきっかけで企画を立てられるようになるかもしれない。

ジャンルを絞るとまではいかなくても、「絞られたジャンルをひとつ持つ」という感じにはできるかもしれない。・・・そこまで考えて、もしかすると地方の小さい出版社は、これまでにそういう道を歩んできたのかも、と思い至った。

出版を始めて7年。小さい規模なりの経営ってのはわかってきたような気がする。潰さない目処も立ったと思う。もしかして今回の本が、地方の出版社の地元本のように、堅実な経営のために力を発揮してくれるかもしれない。

まだ発売もしてないのでわからないけど、すごく前向きな気分になるくらい、作っていて楽しかったのである。

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記事には関係ないこと

 体育会さま、昇進おめでとうございます。
 こないだ見本納品に行って知りました。

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体育会が何なのか知りたい方は、『日本でいちばん小さな出版社』(晶文社)をお読みください。