出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

読者の・・・

2007年05月25日 | 制作業務
昨日書いたことは、ここんとこずっと頭にこびりついている。で、最近いろんな編集者の方のブログで、企画について読む。

曰く、「自分でいいと思った企画は視点を変えて検討してみよ」、「読者が求めているか、再度考えてみよ」。

昔はこういうアドバイスを読むたびに、なるほどと思っていた。が、最近はよくわからない。なぜかというと、「読者」の考えやニーズは、私なんかには分からないからである。

自分自身よく本を読むほうだが、一般的な読者なのかも分からない。読む数は多いだろうと思うが、最近晶文社さんのおかげで身近に感じるようになった「巷の本好き」かというと、それは違う。巷の本好きは、あるジャンルというか世界の本が好きなようだ。が、私はそういうのとはちょっと違う。エラそうに書いてるが、ようするに「ただ自分が好きなものをドンドン読む」という感じだ。かといって、「売れてる本から読んでみる」というタイプでもない。

で、企画だが、編集者が思い込んで企画を立てても、もう一度見直してみる必要があるという。「ひとりよがりになっていないか」ということらしい。

私は自分の思い込みで本を作っているが、それは思い込みじゃなくて思い入れと呼びたい。

だいたい、ひとりよがりかどうかなんて、出してみなきゃ分からない。出してそうだとわかったとしても、それを出したかったら出したわけで、採算さえとれれば構わない。もともと、「大勢と同じなのは嫌い」なので、どのみち「ひとりよがり度」は高いと思われる。

そこのところはうちの勝手だとしても、読者のニーズというのもよく分からない。

売れている本にニーズがあるのか。よく、パブラインとかで類書を検討という話を読む。それは一瞬「ニーズに合わせる」行動のための調査に思えるが、結局「こういう本が売れているから、君も買いたまえ」という、出版社側からのアクションじゃなかろうか。

ニーズに合わせると言いながら、実はトレンドを作っているのは出す側…とでも言おうか。売れてると言って煽ったり、売れてる本の隣に並べてもらったりするのは、すべて出版社側の行為だ。

世の中に、「売れてるらしいから買う」という人が多いってことを、ニーズと言いかえるのはちょっと違うような気がする。「ニーズ=必要」ってことにこだわりすぎてるのかもしれないが。

ただ、そういうことを突き詰めていくと、古い出版人の「読者をリードするべし」ってな話になっちゃいそうで、それはそれでおこがましい。

とにかく、私には視点を変えるのも読者の立場になるのも難しい。

『日本でいちばん…」のおかげで「出版業界にいるが知らないことがあった」と褒められる。ひとり出版社の特徴でありがたいんだが、読者のニーズとなると八方塞だ。いや、もちろん、書店さんと仲良くなってきいたり、マーケット調査をしたりという課題は残っている。

が、一度、レベルも高くて政治的にも難しい企画会議なんてものがある規模の出版社で、修行をさせてもらったほうがいいんじゃないかとも思う。

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