出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

初めての返本

2005年03月03日 | 返本
よくお分かりだと思うけど、私は1冊目を出すまで何の努力もしていない。棚ぼたの取次口座に、人任せの本作り。委託の納品が終わって、ちょろちょろと注文が入って、めちゃくちゃいい気になっていた。

が!
委託納品の日の2週間後、日販のトラックがやって来た。20冊の束を3つくらい置いていった。ええっ、こんなに!・・・と驚いているのもつかの間、その2日後トーハンも来て、同じようにドサッと置いていった。

これが恐怖の返品だ。

それまでは、委託期間は6ヶ月と聞いて、なんとなく6ヵ月後に売れ残りを精算と思っていた。どうせ委託販売の売上は6ヵ月後にしか入ってこないんだから、そのときに「納品した数-返品数」の入金があって、売れ残った本がちょっと返ってくる…という感じを想像してた。

とんでもございません。山のように返ってくる。最初に日販のトラックのおじさんが来てから3週間くらい、トーハンも日販も、毎回3つも4つも束を置いてった。

ここでノー天気な私も「こりゃ、いかん!」と思った。作ってしまった本はしょうがないとして、売上のためにはもう少し出版業そのものについて勉強せにゃならん。ここでようやく、出版に関する本を読み始める。ネットでも調べ始める。

すると、返品というのは、奥の深~い問題だとわかってきた。そこから芋づる式に業界のいろいろもわかってきた。

しかし業界のことがわかったって、あまり役には立たない。いや、もともと何にも知識がなかったんだから知ったという意味では役に立ったんだけど。

「くだらない本をたくさん発刊し過ぎる版元」、「新刊が多過ぎて、取次からの箱から出しもせずに返品する書店」、そんなことわかったって、じゃあ私はどうすればいいのって簡単にはわからないでしょ。

流通の膿とかなんとか言ったって、へえ~ってなもんで、うちの最初に出した1冊の返品が減るってモンじゃなし。ま、次回以降に生かすための雑多な知識というところか。

で、しばらく返品の束も一緒についてくる伝票もほうっておいたが、さすがにいかんと思うようになった。どうすればいいのかわからないが、とりあえず伝票だけ別にしてとっておくことにした。

前にも書いた気がしますが、品物を扱った経験がなくて、伝票とか納品書とかどうも馴染みがなかったんですよ。

で、汚い紙のついた返品の束、もともと汚いんじゃなくてトラックで運ぶ間とかに汚れるんでしょうけど、その束がドサッとあると見た目にも汚らしいので片付けることにする。

ほどいてみると、束だけでなくて本自体も汚れている。紐の痕がついてたり、オビが切れてたり。普通返品って、きれいなモノしかしないでしょう! 「使用後でも返品できます」なんて怪しい化粧品じゃあるまいし。

しかし出版業界の返品ってのは、そういうもんらしい。

怒ってもしょうがないのでどうしようと考えていた頃、「一家総出で返本にグラインドをかけた」とある本で読んだ。おうっ、これか。グラインドというのは研ぐとかいう意味だから、ブックオフのレジの奥でガーガーやってるあれに違いない。

しかし想像するだけであの機械は高そうで、メーカーから見積もりを取る気にもならない。しょうがないから、消しゴムで周りをきれいにする。ちなみに本の周りの横は小口、上は天とかいうらしい。

どこで付いたのか、たまに赤い線が付いている。悲しいことに、これは消しゴムでは消えない。

カバーが傷んでいるもの、本体が傷んでいるものと分けて、消しゴム組にキレイなカバーをかけ直して作ったキレイ組を次回からの注文納品に当てることにする。

ついでに言うと、書籍メインの印刷屋は、カバーとかオビの予備を刷ってくれるが、そのときはそんなこと知らない。

6 コメント

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紙やすり使ってました (あまろ~ね)
2005-03-03 13:50:54
こんにちは。

以前、営業部にいたときは、倉庫での返品の改装(グラインド)が間にあわないと、自分で紙やすりで天地と小口を磨いて、荷造りしてたりしました。

返品はほんと、心臓に悪いですよね。
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コメントありがとうございます (白取)
2005-03-03 14:26:36
出版は一人でも始められる事業です。でも編集から営業まで全て一人でこなすのは、至難の業です。そこで例えば経理くらいは家族に任せ、親戚の若いのを返品処理や改装に…なんてところから、小さな小さな出版社は始まっていくというパターンが昔は多かったようです。今は、そういった中小ですらない零細版元と、大手版元との格差は広がるばかりですね。

自分がかつて零細出版社にいた頃は、版下作業をしつつ電話が鳴ると書店からの受注を受け、電注伝票を切って立ち上がり、その本を出して席に戻る、そんな感じでした。当然改装は全て紙ヤスリで、細かい紙の粉で真っ白になったものです。よく塵肺にならなかったな、とも思いますね…

大変だと思いますが(他人がこういうのは本当に簡単)、ご検討をお祈りします。あと、心と体の健康は最も大切なことですので、ご自愛ください。
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Unknown (タミオ)
2005-03-04 10:21:50
あまろ~ねさん、白取さん、コメントありがとうございます。



そっか~! 紙ヤスリか~!

そりゃ消しゴムよりいいですよね。今度からそうしよう。(山のように買った砂消しをどうするか・・・)
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ご検討(笑) (白取)
2005-03-04 16:21:52
じゃなくて、ご健闘をお祈りいたします。



紙ヤスリ、5-7cm四方くらいに切ったのをたくさんストックしておいて、A5版くらいの本なら5冊くらいまとめて小口やらをシャカシャカシャカ!とやると綺麗になりますよ。早いし。コツは細かくゴシゴシやらず、カンナをかけるように一方向へ広い面積を一度にやるような感じです。あと本の角が削れないように気をつけてください(笑)。
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受注の経験から (tyokutaka)
2005-03-07 11:58:49
お久しぶりです。



本屋勤務のころ、淀長さん(淀川長治)の映画の本を

汚いから出版社にいって取り替えてくれと言ってきた客がいました。幸い、客注にしてくれたので、とりかえて、買ってもらえないという事態ではなかったです。

でも、本当に本屋に本を並べているだけで、汚くなってきますね。それで購買意欲をなくす原因にもなるという・・・

汚いから返本というのもありました。

そういえば、ある客から版元品切れと出ている本を、もう一回調べてくれといわれて、調べたことがありました。確かに品切れなのですが、少し汚いけど、そんな本ならあるよと言われて、取り寄せたことがありました。

実にいろんな事情があります。
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汚れ (タミオ)
2005-03-07 13:53:46
tyokutakaさん、こんにちは。



本屋に並べておくだけで汚くなる…

それしょうがないですよね。どこかに、出版社の営業が、オビを付け替えに書店を回るって書いてあって、すごいな~と思いました。



でも、日焼けした本が返されてくると、もちろん返本は悲しいのですが、ああ置いといてくれたんだな~と少しうれしくなります。そんなことでうれしがってちゃダメなんですが。



うちの同じ本を直接リピートで買ってくださるお客さんは、版元によってボロボロの本が多いところがあるって言ってました。まさかボロを出荷しないから、立ち読みが多いんでしょうか。



うちにも、書店には流せないけど捨てるに忍びない本あります。「それでもいい」なんて言ってくれるのは、セミナーで売ってる著者くらいです。
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