出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

ボキャブラリー

2009年04月20日 | 制作業務
自分の本を書いたとき、担当の編集者からもらったアドバイスがとても役に立っている。自分の原稿へのアドバイスに留まらず、編集者とはこういうアドバイスをするのだとわかったことが、非常に大きい。

今回の新刊では、ちょうどテーマが「本人にしか語れない」ことだったこともあり、「自分がしてもらったことをする」という感じだった。

そのおかげか、著者から上がってくる原稿は本当に「要望どおりに書き換えてくれた」というもので、こんなに編集が楽しかったのは久しぶりとも言える。なんというか、楽しいのはいつも楽しいんだが、今回は「楽しいだけじゃなくラク」であった。

著者の文章力によるものが大きい。が、文章力というのは「書く」だけじゃないんだなとつくづく思った。つまり、こちらの要望&意図どおり書き直してくれる以前に、それを確実に理解してくれたのが毎回わかった。

要望&意図を理解してもらうなんていうとエラそうだが、国語の問題みたいな「文章理解度」のことではない。それだったらこちらの説明能力の話にもなるし。

数ヶ月やり取りをして、なんというか、ボキャブラリーが同じタイプだったのではないかと思う。こういうときにはこういう言葉を使うという癖みたいなもの。文体や言葉の選び方、強調の仕方なども同じ系統で、ちょうど上手い具合に伝わるというか。だから、もらった原稿そのものも、「私にとってめちゃくちゃ読みやすい文章」であった。

あと、書き手とその文章にはいろんな個性があって、なるべく活かしたいという気持ちは常にある。でも、やっぱり好みというものはあって、読者としての自分の好みと違うとき、編集者としての能力を総動員しないといけない。

今回はたまたま、ボキャブラリーが同じで、読者としての好みにもピッタリだったのではなかろうかと思う。こんな「楽しいのにラク」な編集は、そうしょっちゅうはないだろうなあ。

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