出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

総量規制

2010年02月03日 | 発売前
一休みすると書いたとたんに、覚え書きでもいいから書いておきたいことが勃発した。ちょっと前からあちこちで言われていた日販の総量規制について。総量規制とは上手いネーミングだと思う。

うちでももちろん初回委託配本数は少ないが、「最近…」というより「徐々に」減ってきている。本によって多めのときもあるが、500部以上になることはない。が、見本出しのときに相変わらず聞き耳を立てていると、うちだけの話でもなさそうで、部決の電話で日販の人が答えている数が少ないことは感じていた。

うちの場合、1月中旬の見本出しのときに、言葉は違うが「規制するけどいいよね」と言われた。うちに限ったことかもしれないが、だいたい事前注文の4倍くらいとってくれるという印象がある。今回は事情があって指定短冊ゼロだったので、少なくて当たり前だし、「わざわざ断るなんて、この人(カウンターで会ったのは初めてだった)律儀だな」と思っただけである。いつものことだという認識だったのでなんとも思わなかったが、業界のあちこちで不満が出ていたらしい。

不満はないが、疑問がある。どうせ総量規制するなら、なんで点数規制にしなかったのか?

新刊点数が多すぎるというコメントはあちこちで聞くし、取次側もそう思ってるんじゃないかと思う。ただ今までは、「点数を押さえろなんて言えないんだろうな」と漠然と感じていた。自転車操業の話も聞くから、やはり潰すような行為には積極的には出られないのだろうと。

けれど、版元の売上は新刊委託も補充注文も変わらない。1冊は1冊。新刊委託の配本数を減らすなら、刊行点数を減らしても同じじゃないか。版元にとっては、営業で勝ち取らなければならない既刊の注文より新刊委託のほうがラクかもしれないが、それこそ取次は「自分たちばかりを頼るな」と言い返せば済む。

大手とか老舗にはそう言わないとしても、それは委託配本数の総量規制だって同じことだ。こないだ講談社の新刊点数を数えてみたら、書籍だけで100点くらいだった。でも、商売の規模からすると、そんなもんだろうという気がする。

日販の規模を考えたら、他の取次が規制しなくても点数規制は実現可能だろうし、もし例によって「足並みを揃えて」くれれば、それこそ業界全体で点数を控えることに繋がる。

なにやら、今回の規制の背景は、上からの命令が現場で極端な結果を生んでしまったということらしい。少しは元に戻るそうだが、騒がれ始めた頃からの「総新刊委託配本数」はずいぶん押さえられたことだろう。

せっかく減らしたんなら、点数減らせばよかったのに・・・と思うのである。