出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

こすいと感じること

2009年07月22日 | 注文納品
書店でのバイトを経験してから、書店側の立場や考え方がちっとはわかるようになったと思っている。バイトとは関係なしに誰かから教わることもあるし、さすがに何年もやってるとわかってくるということもある。

でも、版元がそれぞれなのと同じで、書店もいろいろだ。だから今でも発見はあるんだが、今はギョッとしたことはここには書きづらい。身元がバレたせいだ。それでしばらく放っておいた発見があったんだが、やっぱり書くことにする。まだ匿名ブログの体裁は保っているし、ギョッとしたのは事実だからしょうがない。

うちでは採用品の対象になるのは1点しかなくて、数校(数書店)からしか注文は来ない。ここ2年ほど著者の学校の成績が悪い(返本が多い)せいで、ちょっと神経質になっている。今年は日販の担当の人がちゃんと相談に乗ってくれて、注文通り出荷しなかったんだが、やっぱり返品は来た。返品は構わないんだが、その前に受け取った「返品入帳のお願い」で、ひっかかることが。

注文数10、献本数1、返品数5と書いてあるんだが、うちは献本はしないのである。いつも同じ学校だし、たかだか10冊に1冊オマケつける気にならないので、書店には悪いがそういうリベートは無しである。

私が記名して返信した「返品入帳のお願い」の紙が取次に行くんだろうが、この献本分はどうなるのであろうか。「1冊は献本だったということで、返品数は4」ということだろうか。そうとは思うんだが、それは書店と取次の間の話である。

たまに1冊だけ「返品入帳のお願い」に包まれた本が返品に混じっていることがあるが、そういうのは小さい書店からの返品だ。こういう複数冊の返品(採用品の成績は悪かったので、実際は5冊より多い)の場合、まとめてどさっと返ってくる。大手の書店だからかどうか知らないが、そんな紙は付いてこない。となると、うちに返ってくるこの「返品入帳のお願いの分の返品」は、確実に5冊分である。

例によって細かいことばかり気にしているが、そういうことが気になってしまうのである。書店が得するのか、取次が損するのか、うちが損するのか。しつこく書くが、いつも書店も取次もありがたいと思っている。が、「献本が返品」のときと同じく、裏でこすいことされるのは嫌なのである。

別件。ある書店の「何それに出稿すると、それ用の棚に置いてくれる」というサービスを初めて利用した。知り合いの出版社の人から「せいぜい元が取れるかどうかくらい」とちゃんと聞いていたので、多大な期待はしないで済んだ。

その分の返品が来て、消しゴム作戦をした。納品するときにつけた「掲載商品のご出荷の際には必ず商品への添付をお願い申し上げます」という紙が本に挟まれていたので見ると、余白に「外しました。店出しするか決めて下さい。」とメモ書きされている。ピンク色のペン。いかにも若い女性っぽい丸文字。

何それの出稿は何それが目的であって、それ用の棚はオマケのサービスということかもしれない。が、それ用の棚用とハッキリ書かれた注文が来たのである。「せいぜい元が・・・」と教えてくれた人も、「何それはともかく、営業に行かないでもその分の注文をもらえることが大きい」と言っていた。私もそのつもりである。

サービス提供側、あるいはその支店がどう考えているのか知らないが、出版社からしたら「置いてもらえるから金払っている」のである。「店出しするか」後から決められちゃ、話が違うと思ってしまう。

もちろん通常の営業であれば、「番線押した=並べる」わけではないのはないのはわかる。が、今回は金払ってるんだから、ほとんど家賃みたいに考えていた。

できれば、「何それについてよく知らない新人店員が気を遣ってメモ書きしたが決まりなので並べておいたうちの1冊が返ってきた」と思いたい。でなきゃ、2度と利用しませんから。

書店と取次は?

2009年07月14日 | 出版の雑談
今年も共同出展という形で参加できた、東京国際ブックフェア。昨年の反省を活かす…というか昨年の経験から期待値を設定していたので、満足であった。が、本日は、うちがどうしたという話でなくて、単純な感想を書く。

平日2日は業界向け、土日は一般のお客さんが多いということは知っていた。招待状にも、土日が一般公開日だと書いてある。書店向けのチラシを用意してあったんだが、やはり木金に減っていたし、土日は普通のお客さんが多かった。

そこで気になったのは、木金と土日で「あまり展示が違ってない」ことである。これは、どの業界エキジビションでも同じなんだろうか。モーターショーか建設関係か福祉機器展くらいしか行ったことないが、一般客と業界向けの両方とも見るなんてことは滅多にないので、よくわからない。

わからないが、ちっとは変えたら面白いのに、とは思う。ブックフェアに関して言えば、タイムセールをするとかアテンド要員を増やすという違いはあっても、ほとんどのブースが4日間同じことをしていた。(人のことに文句を付けているわけではない。うちも同じだ。)

もっと小さい規模のイベントでは、もう少し小回りを利かせていたのがあった。区の主催による区内の事業者の展示会。平日はキッチリと受発注を意識していたし、土日は子ども向け体験会や販売会ばかりだった。ブックフェアでもそういうことしたら、面白いだろうと思う。

印刷製本会社なんかの展示は、我々には勉強になるけど、土日も同じことをしてる。最近は自費出版したい人も多いみたいだし、「一般向け&業界向け価格ってのは存在するが」という前提で、セミナーなんかやってあげたら喜んでくる人いるんじゃなかろうか。デジタルパブリッシング系もしかり。いや、「実際に個人一般と取引するか」は置いとくとしても。

それで気がついたんだが、出版社だけでなく、印刷製本会社、物流業者、権利関係の団体?、編集プロダクション、ソフトハウスやいろんな機械の会社、学校などなど、いろんな業界関連企業がいるのに、取次がいない。昔はいたんだろうか。

こないだ王子の見学会に行ったとき、何か忘れたが工程の関係で質問が出て、「そういう話は説明会をしてくれるといい」という見学者側からのコメントに対して、「しょっちゅう開いている」と、来ないほうが悪いというニュアンスの答が返ってきた。あんな「キレイに作ったビデオ」なんか(桶川も同じだが)、ずっとブックフェアで流してればいいのに。

あと、「15分限定、何でも質問会」とかしたら、小さい版元がずらっと行列を作るんじゃなかろうか。いや、ちゃんとした相談は、改めてアポを取ってきちんとするという前提で。

上に書いた「一般向けも業界向けも同じ」ということの絡みで言えば、子どもやお母さん向けに「あなたに本が届くまで」なんていうショーをやってもらいたい。本好きの男性も来るだろう。そして、見た人は「そうか、本(書籍)ってこういうことだったのか。そりゃ、取り寄せても1日じゃ来ないな」とわかるかもしれない。書店で「2週間かかる」と言われるのと違って、好意的に受け取ってくれるかもしれない。

そういえば、書店もいない! 版元と取次と書店が業界3者という感じなのに。

出展料が高すぎるからだろうか。でも、そうなると、業界あげてのお祭りとして機能するように、もう少し工夫できる気がする。少なくとも、版元の割引販売はやめて、出店してくれる書店があるならそこで割引販売できるように掛け率変えるとか。実際の店舗みたいな品揃えはできないだろうから、ブックフェア限定仕入れをしてもらって、その版元に出展料をちょっとカバーしてもらうとか。売るのは本屋さんでいいと思う。そうすると、版元は売り場を作らなくていいから、もっとちっさいスペースでいいし、寄ってくれたお客さんに本を売るんじゃなくて会社を売り込める。

つまり、このブックフェアは、日頃業界人が語ってる「業界」のエキジビションになってない。「読者(購買者)向けのアピールをみんなでする」ことを、ちょっとでいいから協力してやったほうがいいと思う。出展するしないは企業の勝手だからしょうがないし、出展社もそれぞれ思惑があるとしても。

いや、つらつら書いたけど、毎回ちゃんと見て回ってるわけではないし、ちゃんと行ったのは去年と今年だけだ。「なかなかそうもいかない」いろんな事情があるんだろうと思う。

もし来年も出展したら、(どうせ暇なので)いろんな人にこの疑問をぶつけてみよう。そうしよう。