出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

版権交渉2 翻訳者

2014年04月23日 | 翻訳出版
原著の版元に「日本語版を出したい」とメールを送ったら、翌朝には返事が来ていた。「すべての権利は著者にあるので、直接話し合ってくれ」という。

たまたま珍しいケースに当たったのかと思って改めて見てみたら、なんと、ISBNコードが7桁の出版者だった。つまり、その出版者の書籍にふるコードはたったの10本である。うちでさえ100本(6桁の出版者)。そして、本を見るとその10本のうちの1本目、0がふられていた。米国の大学だったので、日本の何それ大学出版会みたいのを想像していたが、全然違った。もしかして、この著者にしつこく頼まれて急遽ISBNコードを取得したのか? 確か米国には取次はあるが日本のそれとは少々違って、どちらかというとチェーン書店の本部みたいな役割に似ていると、どこかで読んだ気がする。日本みたいに「勇み足」な話ではなかろう。ちなみに話はずれるが、HPを再度見てみたら、私が申し入れた本の後、2、3点出ていた。

改めて著者にメールを送ると、これまたすぐに「神に感謝!」となぜかスペイン語で返信が来た。が、よく見ると、翻訳出版の申し入れが来て感激と知人に送ったつもりの文章のようである。おっちょこちょいな著者なのかもしれないと一瞬思ったんだが、後にそれどころではないおっちょこちょいぶりを発揮してくれて、大変苦労した。

数分後、今度はちゃんとしたこちらへの返信が来た。原著が刊行されてからすでに4年も経っていたが、たまたまなのか、ちょうどスペインでの翻訳出版が決まったところだという。それはいいんだが、その版元に相談してみるという。何を相談するんだ?と思ったが、まだ海の物とも山の物とも…段階なので、「双方満足する契約になるように、どうぞ時間かけてください」と丁寧に返事をした。前の記事で書いたが、私の頭の中では「契約条件=主に印税率」だったので、そのあたりを相談するのだろうと推測したのだ。

すると間を空けずにまたメールが来て、翻訳者は誰だ?という。誰って、翻訳者は版権獲得する前にアタリを付けておくものなのだろうか? もしかすると、著名な翻訳家に頼めなどと言ってくるのか?権威主義か?とも思ったが、実は、私は自分で訳そうと心に決めていた。ところが、そう伝えた後、私の英語力と日本語力に関して、延々4時間、チャット状態でメールをやり取りが続いた。

自身も翻訳家でその品質に神経質なのは理解できるが、当方の文章力を客観的に説明なんてできない。英語力に関しては、元々翻訳業を営んでいたこと、チェックする人間は確保すること、そもそも英語でやり取りしてるので読んでりゃ分かることもあってどうにかなったが、翻訳された日本語の質について、しつこく聞いてくる。

テメエで言うのもなんだが、私は『日本でいちばん小さな出版社』の文章を複数の人に褒められたんで、「心配ない」くらいの実力はあると自負している。しかし、褒めてくれた書評などは当然すべて日本語で、私の日本語は大丈夫と第三者が英語で書いたものなどあるわけない。もしかして、出版社の版権交渉係かなんかと認識されてるのか?と思ったが、本1冊出したことがモノを言ったらしく、4時間後ようやく質問攻勢が終わりを告げた。というか、向こうは朝の4時になっていた。

明日からは条件の話になるかとホッとしていたら、翌日、今度は「エディターとしてチェックする人間の力量は?」と聞いてきた。それこそ、どうやって客観的に説明しろと言うのだ? というか、まだ誰にするかなんて考えてないんだけど。(つづく)

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