MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』

2014-12-25 00:09:52 | goo映画レビュー

原題:『Herb and Dorothy』
監督:佐々木芽生
撮影:アクセル・ボーマン
出演:ハーバート(ハーブ)・ヴォーゲル/ドロシー・ヴォーゲル
2010年/アメリカ

「パトロン」の財力によって変わるアート作品について

 ニューヨーク在住の郵便局員のハーブと図書館司書のドロシーのヴォーゲル夫妻が安い給料の中から工面してこつこつと買い上げていったアート作品は4000点を超えて、雑誌「ニューヨーク」にはそれまで豊富な蓄財でジャスパー・ジョーンズなどのモダンアート作品を収集していたエセルとロバートのスカル(Scull)夫妻に代わって好意的に迎えられることになる(スカル夫妻は離婚後、作品をオークションに出してしまうのであるが)。
 ヴォーゲル夫妻が収集する作品は古典派から印象派へと続く絵画のメインストリームに位置するものではなく、見ようによってはゴミとして扱われてもおかしくない「儚いもの(temporary piece)」である。ハーブの、作品を観る目があると思わせるシーンがある。夫妻がアーティストのリチャード・タトル(Richard Tuttle)と一つの作品に関して話し合っているシーンである。ノートのようなものに描いていた作品をどのように扱えばいいのか迷っていたリチャードに対して、ハーブはその内の2作品は必要ないから譲ってくれと言いだす。リチャードは彼の真意を測りかねてバラして並べてみると全6作品の内、4作品を合わせると描かれている色が左から右に流れているように見えるが、ハーブが欲しがっていた2作品はその流れに与していないことが分かるのである。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『アオハライド』 | トップ | 『ザ・メキシカン』 »
最新の画像もっと見る

goo映画レビュー」カテゴリの最新記事