MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ミッドサマー』

2020-03-23 12:51:07 | goo映画レビュー

原題:『Midsommar』
監督:アリ・アリスター
脚本:アリ・アリスター
撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
出演:エローラ・トルキア/ウィル・ポールター/アーチー・マデクウェ/ジャック・レイナー
2019年/アメリカ

グリム童話の「原点」について

 アリ・アリスター監督の前作『ヘレディタリー/継承』(2018年)は本作と同じカルト集団を扱っているものの、最後のオチがあやふやでいまいち意味が分からなかったのだが、その点本作は改善されているように見える。
 それは主人公でアメリカの大学の博士課程に在学しているダニー・アルドールが家族内のトラブルに悩まされている時には比較的画面が暗いが、彼女がボーイフレンドのクリスチャン・ヒューズや友人と一緒に行ったスウェーデンが舞台になったとたんに画面がポップで明るくなった一方で描写は残酷になり、それは絵本内で殺戮が起こるというような対照性が際立つからである。
 エンディング曲のザ・ウォーカー・ブラザーズの「ザ・サン・エイント・ゴナ・シャイン・エニモアー」を和訳しておきたい。ダニーの立場と歌詞の内容が不気味にリンクしているところが秀逸。

「The Sun Ain't Gonna Shine Anymore」 The Walker Brothers 日本語訳

孤独とは君が纏っている仮面
群青の影がいつもそこにある
もう太陽が輝くことはない
空に月が上ることもない
君が愛と無縁の時には
いつも涙が君の瞳を覆っている

空虚こそが君の居場所
負けることはなくなったがもはや勝つこともない
もう太陽が輝くことはない
空に月が上ることもない
君が愛と無縁の時には
いつも涙が君の瞳を覆っている

君がいなければ寂しい
僕には君が必要なんだ
このままではやっていけないよ

もう太陽が輝くことはない
空に月が上ることもない
君が愛と無縁の時には
もう太陽が輝くことはなく
いつも涙が君の瞳を覆っている

もう太陽が輝くことはない

The Walker Brothers - The Sun Ain't Gonna Shine Anymore! (1966) 4K


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『ジュディ 虹の彼方に』

2020-03-23 00:41:10 | goo映画レビュー

原題:『Judy』
監督:ルパート・グールド
脚本:トム・エッジ
撮影:オーレ・ブラット・バークランド
出演:レネー・ゼルウィガー/ルーファス・シーウェル/マイケル・ガンボン/フィン・ウィットロック
2019年/アメリカ・イギリス

伝記映画には収まらないスーパースターについて

 ジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーの熱演は十分に伝わってくるのだが、例えば、娘のライザ・ミネリとの関係など詳細に描かれることはなく、その他にも華やかな有名人との交流は描かれないまま、晩年の落ちぶれた時にフォーカスが当てられているために、これがジュディ・ガーランドだと誤解されることに杞憂してしまう。
 子役に覚醒剤を与えて働かせていたというハリウッドの暗部が明るみにされているが、それよりも個人的には『ティファニーで朝食を』(ブレイク・エドワーズ監督 1961年)でユニオシという悪名高い日系アメリカ人を演じたミッキー・ルーニーが子役時代にガーランドと並ぶ人気を博していたことに驚いた。
 ここではガーランド全盛期の『若草の頃(Meet Me in St. Louis)』(ヴィンセント・ミネリ監督 1944年)の「ザ・トロリー・ソング」を和訳しておきたい。

「The Trolley Song」 Judy Garland 日本語訳

路面電車がカラン、カラン、カランと走っていった
リン、リン、リンとベルが鳴った
ジン、ジン、ジンと私の琴線が鳴った
私たちがハンティントンの小さな谷に向かっていた時だった

ダッダッダッとモーターが鳴った
ガッガッガッとブレーキがかけられた
ジャン、ジャン、ジャンと私の琴線が鳴った
私たちがハンティントンの湖になだらかに進んでいた時だった

晴天で空気は爽やかだった
スイカズラの香りが私を芯からうっとりとさせた
私は歌わずにいられなかったけれど歌は下手だった
実際は私は気分が昂りすぎて声も出せなかったのだ

ブー、ブー、ブーと汽笛が鳴った
終点の時だ
降りる時だと私の琴線が鳴った
私たちがハンティントン公園で降りた時だった

糊のきいた高い襟とハイトップのスニーカーを身に付け
頭に髪を盛り上げて
私は浮かれないようしていた
路面電車に乗っている内に
私は意気消沈していた

明るい茶色の山高帽と明るい緑色のネクタイを身に付け
彼はこの世で一番のハンサムだった
私は渇望し出したから
十まで数えた後
また十まで数えた

路面電車がカラン、カラン、カランと走っていった
リン、リン、リンとベルが鳴った
ジン、ジン、ジンと私の琴線が鳴った
その間じゅう私は彼を見て落ちたのだ

ダッダッダッとモーターが鳴った
ガッガッガッとブレーキがかけられた
ジャン、ジャン、ジャンと私の琴線が鳴った
彼が笑った時に車両が揺れた感じがした

彼は帽子を脱ぐと席に座った
彼は私の足を踏まないようにしたいと言った
彼は私に名前を尋ねたから私はかたずを飲んだ
私は言葉が出なかった
だって私は死ぬほどびっくりしたから

ダッダッダッとモーターが鳴った
シュー、シュー、シューと車輪が回った
ドク、ドク、ドクと私の琴線が鳴った
彼が立ち上がると
私はようやく分かった
宇宙が揺らぐ時にはどのように感じるのかを

晴天で空気は爽やかだった
スイカズラの香りが私を芯からうっとりとさせた
私は歌わずにいられなかったけれど歌は下手だった
実際は私は気分が昂りすぎて声も出せなかったのだ

ダッダッダッとモーターが鳴った
シュー、シュー、シューと車輪が回った
ドク、ドク、ドクと私の琴線が鳴った
彼が行こうとした時
私は手で彼の袖を握り
あたかも計画通りだったように
彼は私のそばにいてくれた
ただ二人で立っていることだけが最も重要だった
終点まで彼は腕で私を抱きしめてくれた

Meet Me In St. Louis (1944) – The Trolley Song


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