原題:『WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常』
監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖(脚本協力 矢口純子)
撮影:芦澤明子
出演:染谷将太/長澤まさみ/伊藤英明/優香/西田尚美/マキタスポーツ/柄本明
2014年/日本
肉食系が草食系に「成長」する物語について
危ういネタはあるとしてもコメディ映画としてはギリギリ及第点をクリアしたといったところだろうか。私が気になった点は主人公の平野勇気の性欲の問題である。大学受験に失敗した平野はたまたま目にした、石井直紀が表紙に写っている林業研修プログラムのパンフレットを見て、彼女に会えると思って気軽な気持ちで三重県の神去(=かむさり)村に赴く。
やがて一年間の研修を修了して東京に戻る際に、平野が渡した「愛羅武勇(I Love You)」のロゴが入ったタオルを振る石井を車窓から見たはずである。ところが東京に戻った平野が神去村に戻るきっかけとなったものは石井の「ラブコール」ではなく、近所に新築中の家の木の香りによるものなのである。
それはこの映画自体にも言えることで、子作りに励んでいる伊藤英明と優香のキスシーンにも色気のようなものは感じられず、クライマックスの男根を暗示する大木と、それを下で受け止める縄で作られた輪っかの「結合」にも色気を感じられない。あくまでもセックスが快楽ではなく子作りのためだけの営みであるというのならば構わないのであるが、本作が、肉食系男子が草食系男子に「成長」する物語というのであるならば、なかなか考えさせられる奥深さをはらんでいるのか、あるいは平野本人同様に何も深く考えずに脚本が練られているのか微妙なところである。