コロナになってから阪急の特急に乗る時はなるべく連結部の近くの優先席に座る習慣になってしまった。
そこに座るのがいわゆるソーシャルディスタンスを確保できる可能性が最も高いと経験則でわかってきたから、、。
もちろん杖をついた人などがいらしたら優先席なのでゆずらなければならないと思うけれど、、、。
その優先席は連結部のドアに近いところにある。
連結部のドアには縦型のドアノブの形をしたセンサーがついていて、そのセンサーに軽く手を触れるとセンサーが反応して連結部のドアがあく。
軽く触れるというのがコツで強い力でドアノブの形のセンサーを握ったりするとセンサーは反応せずドアは開かない。
40歳くらいの女性が車両をツカツカと歩いてきて、連結部のそのドアノブを持ってドアを手動で開けようとした。
手動で開けようとするとそのドアノブ型のセンサーには強い力がかかるのでドアは開かない。
一瞬僕はセンサーに軽く手をかざしてドアを開けてあげようかと思ったけれどちょっと僕の座っている場所からドアまでは微妙な距離があった。
それで僕が思いとどまっているうちに女性はドアが開かないと見て、僕の横に50センチくらい間隔を開けてドシンと腰をおろした。やれやれという感じで。
女性がドアを開けるのを手伝えなかったという思いと、女性がドアが開かないのをあきらめて腰を下ろすまでの動作が早かったなという思いが心の中で交錯して僕はちょっと苦笑いした。
すると女性はそれに気づいて
「何笑っとるの」と僕に言った。
ちょっと強い独特の口調で、あ、この人、昔ヤンキーやったかもととっさに思った。
なんとなく相手に突っかかっていくような口調がくせになってしまっていて、僕にもとっさにそんな言い方をしてしまったという感じだった。
これはまずいと僕は思った。
「笑ってゴメン」と僕は言った。「ドアは強く開けようとしたらあかんねん。ノブにちょっと触れるだけにしな。僕があけるわ」と言って僕が連結部のドアの方に進むと女性も立ってそこまで来た。
僕がドアノブに軽く触れるとドアは自動でスッと開いた。もしドアがここで開かなかったら僕はもう一度謝らなくてはいけない場面だったけれど開いてくれて良かった。
女性も、あっ ドア開いたという感じの顔つきだった。
「こうすれば開くねん」と僕は言った。
「私この電車乗るの初めてやったんや」と女性は言った。
「まあ、ゴメン」と僕は言った。
女性はそのまま隣の車両の方に進んでいった。
まあ、僕もたまに阪急以外の私鉄に乗ったりするとき要領がわからないときがあるし、まあそれはお互い様だなと思う。