「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

荻野富士夫『特高警察』岩波新書で刊行

2012-05-26 23:30:33 | 多喜二研究の手引き

 

特高警察
荻野富士夫著
(新赤版1368)

 
 
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 悪名高き特高警察は、過去のもの?

 ワーキングプアが社会問題化するなか、『蟹工船』ブームがおきたのは、記憶に新しい。劣悪な環境で働かされる労働者を描き、当局の政治弾圧を批判した作者小林多喜二は、30歳で特高警察に虐殺された。

 1911年に創設され、1945年の敗戦により「解体」されたとされる特高警察。果たして「特高警察」は過去のものなのか。

 本書は、『特高警察関係資料集成』(全38巻)をまとめるなど、特高が残した大小さまざまな記録を読みこんだ著者が、その「生態」に迫ったものである。自分たちこそが国家を守っているとの使命感にもえる特高警察は、中央で、地方で、また「満州」や朝鮮で、いかなる行動をとってきたのか。

 日本に特殊かどうか、ドイツの秘密警察ゲシュタポとの比較も試みる。

 著者が「生態」と表現するように、生き物のごとく増殖し、しぶとく生き残り続けるさまが見てとれる。

 貧困問題、震災や原発事故など、さまざまな社会不安にゆれる現代日本でいま、「特高警察」を考えることに、不幸なことであろうがリアリティーがある。これからの未来のために、示唆に富む1冊である。

(岩波新書編集部 大山美佐子)
 
     
 

■著者紹介
荻野富士夫(おぎの・ふじお)1953年埼玉県生まれ。1975年早稲田大学文学部卒業。現在、小樽商科大学教授。専攻は、日本近現代史。
 著書に『特高警察体制史 増補版』(せきた書房)、『北の特高警察』(新日本出版社)、『戦後治安体制の確立』(岩波書店)、『思想検事』(岩波新書)、『外務省警察史』(校倉書房)ほか。
 編著に『治安維持法関係資料集』(全4巻、新日本出版社)、『特高警察関係資料集成』(全38巻、不二出版)ほか。

 
     
  ■目次  
 
 はじめに

 
 
I
特高警察の創設  
  1 特高警察の前史
2 大逆事件・「冬の時代」へ
3 特高警察体制の確立
   
 
II
いかなる組織か  
  1 「特別」な高等警察
2 特高の二層構造
3 一般警察官の「特高」化
4 思想検事・思想憲兵との競合
   
 
III
その生態に迫る  
  1 国家国体の衛護
2 特高の職務の流れ
3 治安法令の駆使
4 「拷問」の黙認
5 弾圧のための技術
6 特高の職務に駆り立てるもの
   
 
IV
総力戦体制の遂行のために  
  1 非常時下の特高警察
2 「共産主義運動」のえぐり出し
3 「民心」の監視と抑圧
4 敗戦に向けての治安維持
   
 
V
植民地・「満州国」における特高警察  
  1 朝鮮の「高等警察」
2 台湾の「高等警察」
3 「満州国」の「特務警察」
4 外務省警察
5 「東亜警察」の志向
   
 
VI
特高警察は日本に特殊か  
  1 ゲシュタポの概観
2 ゲシュタポとの比較
   
 
VII
特高警察の「解体」から「継承」へ  
 

1 敗戦後の治安維持
2 GHQの「人権指令」―しぶしぶの履行
3 「公安警察」としての復活

   
 

 結びに代えて

 主要参考文献
 おわりに


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