一頭のオスジカの侵入は、和宮様のご令嬢夫妻が一日かけて構築された防獣網を数分のうちにほぼすべてを破壊した。網のスタート地点隣にあった桜の囲みも見事?になぎ倒した。ここにはなんども若芽や幼枝を食害されてきたが、囲いのおかげでようやく大きくなってきたばかりだった。さいわい、桜の木は折れてはいなかった。ただし、買って間もない花桃の若い枝が二か所だけ折れたのが最大の損傷だった。
それにしても、シカのけん引力はイノシシと変わらないくらいのパワーだった。ふだんは、歩行がてら気ままに食害しているので、「まあしょうがないかー」くらいで済んでいたのだが、イノシシと変わらない戦跡を残していった。オスジカの剛毅な角が今回は網に絡まって仇となった。角のない雌だったらとっくに自由への逃走を実現できたであろうに。
防獣の支柱はいかにも軟な代物だった。予算がないからつい安物買いに走ってしまったのも失敗だった。これからは金網を使っていかないとだめかもしれない。いなせなハンターも下は金網で上は網にする二重構造にするのがいいと助言してくれた。
使用した鉄の支柱ポールもかなり折れ曲がってしまった。折れた支柱は、害獣からのものだけでなく突風・強風によって折れ曲がったものも少なくない。これでは、やや太い竹で代用してもじゅうぶん機能するのがわかった。手間はかかるがまわりの放置気味の竹林を活用すれば一石二鳥だ。問題はオラのからだがいつまでもつのかが課題ではあるが。
シカが引っ張り込んだ網の残骸がまだ放置されたままだ。どうにも、片付ける気にはまだならない。春本番でやるべき野良仕事が山積しているからでもある。防獣柵の補修と構築は冬仕事としてやってきたので、目途がついたばかりだった。そして、いよいよ畝立てだ・種まきだといろいろな算段が脳神経をかけめぐっていたところだった。
そういえば、角に網が絡みついたオスジカはいま、どこでどんな思いで生きているだろうか。まもなく狩猟期間が解禁になるという。すると、このオスジカはいかにも目立ってしまい狩猟のかっこうの対象となってしまう。願わくば山里に来ないで山奥での暮らしを模索してもらいたいと思うばかりだが。山奥ではガザ地区と同じで暮らしていけないかもしれない。