子供のころ浅間神社(静岡市)は遊び場だった。
浅間神社をいまでも「浅間さん」と呼んでいる。
4月、桜満開の下での浅間神社は、まさに色彩の世界に入り込んだようで
子供にとってはロマンチックな異空間だった。
昼間は色彩豊かな楼門や大拝殿の彫刻を眺めることが出来、夜はサーカス小
屋の前で不思議で妖艶な光景をながめることができた。
サーカス小屋のおじさんが時々中の様子を見せてくれたり、サーカス一座の
少女達が化粧する様子をじっと眺めたりするのだった。
このように子供のころ、浅間さんの中で色彩に触れたり神秘的な体験をした
せいか、幻想的で夢物語的な絵が好きになったのだろう。
この絵は昭和20年・小学校1年生の時に静岡で空襲に合い病弱な母親と一
緒に裏山の賤機山に逃げた時の残像だ。子供のころに浅間さんで体験した
色彩感覚が忘れられず、10数年前に描いた懐かしい絵だ。