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古田武彦「まぼろしの祝詞誕生~古代史の実像を追う~」 ②「天つ罪・国つ罪」の解釈

2017年06月29日 | 古代史
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●「まぼろしの祝詞誕生~古代史の実像を追う~」から、“天つ罪”“国つ罪”の要旨のみ抜萃(要約・文責は当方)

●天つ罪
<畔放(あはなち) 溝埋(みぞうめ) 樋放(ひはなち)  頻播(しきまき) 串刺(くしさし)>
・8つのうち、5つが“農業破壊”の仕業。いづれも水田の管理・秩序破壊の行為。
・なぜ、“天つ罪”なのか・・・(一般的な“タブー”に加えて、ここでは・・・)
 天孫降臨に伴う、天国の人々(侵略者)による破壊行為・・・豊かな縄文水田(板付遺跡・菜畑遺跡など)・水田耕作の民たちへの侵略行為
<生剥(いきはぎ) 逆剥(さかはぎ)>
・(従来説では“馬の皮を剥ぐ”云々となっているが、必ずしも馬とはかぎらず)従来の、動物や魚の皮を剥ぐには一定の神聖なルールがあった。それを天国かた来た者はそのルールを無視して行った・・・従来、石や貝の刃で剥いでいたものを金属器(銅や鉄)の刃で行った。その罪。あくまで推量で一つの仮説だが検証に値する一仮説と思う。
<糞戸(くそへ)>
一個の、あるいは多数の人間(男たち)の、威圧による暴力行為と解すべき。 
●国つ罪
(「天つ罪」が天つ国側からの「加害」ともいうべき罪を述べているに対し、“社会的”な罪のくさぐさが述べられているよう・・・)
<生膚断(いきはだたち) 死膚断(しにはだたち)>
(倭人伝には、“黥面文身”“尊卑差あり”など、倭国の男子は顔面・身体などに入れ墨をしていたことが述べられている)
 敗れた男たち当人の“かくかくの身分”という証拠物を消し去る行為。奪、身分の行為。
<白人、こくみ>
(これらは自然の病気か・・・はだの白くなった人、白はたけ。こくみ:こぶのできること。これらは外見上異様に見えるため、これを当人(もしくは祖先)の犯した罪によるものとみなしたのではないか・・・)
<己(おの)が母犯せる罪 己が子犯せる罪 母と子と犯せる罪 子と母と犯せる罪 畜犯せる罪 >
(一般的な罪とは別に・・・)
 このような異常行為が発生すべき時はいつか・・・戦争や征服戦争という異常な時期こそ生じうる、自明のことではないか。特に、“征服した側”より“征服された側”に生じやすい現象ではないか・・・。
<昆虫(はうむし)の災 高つ神の災 高つ鳥の災 >
 ・ヘビやムカデの類は、すなわち「神」だった・・・縄文期の「蛇神信仰」など
 ・高つ神・・・縄文期の高地性集落の人(=神)たち
 ・高つ鳥・・・高地性集落の人たちがシンボル化していた神鳥
これらの反乱・敵対を“災い”として否定するもの
<畜仆し(けものたおし)、蠱物(まじもの)する罪>
このような“のろい”、縄文期以来の旧信仰を否定。かつ、今後は天国側の者たちが行っても、これらの罪はこの“大祓”によって無罪放免するという立場。

・以上、これらには、一般的な「罪」と天孫降臨に伴う特殊・歴史的な「罪」の二面性があるが、この祝詞が直接問題にしているのは、前者の上に立った後者。
・この祝詞の基本の思想性・・・これらのえすべての「罪」の“免除”を宣言すること、その国家的儀式にあった。

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●<参考>ウィキペデイアの「天つ罪・国つ罪」から・・・
・天つ罪・国つ罪(あまつつみ・くにつつみ)とは、神道における罪の観念で、『延喜式』巻八「祝詞」に収録される大祓詞に対句として登場する。古きに倣い天津罪・国津罪とも表記される。
<概要[編集]>
・天つ罪・国つ罪は、宗教と政治と法制が密接であった古代日本における「罪」に対する考え方を窺い知るのに重要であるが、本居宣長以来指摘されているように天つ罪・国つ罪は宗教的に関わりの深い「罪」を挙げたものであり、これらに属しない世俗的な「罪」が存在していた事は『古事記』・『日本書紀』の中にも記されている。
・折口信夫は、天つ罪は元は「雨障(あまつつみ)」で、梅雨の時期に農民が忌み蘢ることを指していたが、それが「天つ罪」とされ、日本神話におけるスサノオ命が高天原で犯した行為(岩戸隠れを参照)と解釈されるに至り、それに対応するものとして「国つ罪」が作られたという説を唱えている。
<神社等[編集]>
・神社本庁およびその配下の神社で用いられる大祓詞では、天津罪・国津罪の罪名が省略され「天つ罪 国つ罪 許許太久(ここだく)の罪出でむ」と表現される。
<詳細[編集]>
・「六月晦大祓(みなづきごもりのおおはらひ)」、別称「中臣の大祓」では、「天の益人(ますひと)らが過ちおかしけむ雑雑(くさぐさ)の罪事(つみごと)は」に続いて、天津罪と国津罪の詳細が述べられる。
・大祓詞による天つ罪・国つ罪は以下のものである。なお、大祓詞には罪の名前が書かれているだけで、特に国つ罪についてそれが何を意味するかについては諸説がある。
<天津罪[編集]>
・大祓では、『古事記』や『日本書紀』に記す素戔嗚尊(スサノオノミコト)が高天原で犯した行為であるゆえに、天津罪をわけるとされている。しかし、全て農耕を妨害する人為的な行為であることから、クニ成立以前の共同体社会以来の犯罪との説もある。

畔放(あはなち) - 田に張っている水を、畔を壊すことで流出させ、水田灌漑を妨害することとされ、『古事記』・『日本書紀』にスサノオ命が高天原において天照大神の田に対してこれを行ったと記している
溝埋(みぞうめ) - 田に水を引くために設けた溝を埋めることで水を引けないようにする灌漑妨害で、これも『古事記』・『日本書紀』に記述がある
樋放(ひはなち) - 田に水を引くために設けた管を壊すことで水を引けないようにする灌漑妨害で、『日本書紀』に記述がある
頻播(しきまき) - 他の人が種を蒔いた所に重ねて種を蒔いて作物の生長を妨げること(種を蒔く事で耕作権を奪うこととする説もある)で、『日本書紀』に記される
串刺(くしさし) - 『日本書紀』には、その起源をスサノオ命が高天原において天照大神の田を妬んでこれを行ったと記しているが、その目的は収穫時に他人の田畑に自分の土地であることを示す杭を立てて横領すること、とする他に、他人の田畑に呪いを込めた串を刺すことでその所有者に害を及ぼす(または近寄れないようにした上で横領する)という呪詛説、田の中に多くの串を隠し立てて所有者の足を傷つける傷害説、家畜に串を刺して殺す家畜殺傷説の3説がある

生剥(いきはぎ) - 馬の皮を生きながら剥ぐこととされ、『日本書紀』にスサノオ命が天照大神が神に献上する服を織っている殿内に天斑駒(あまのふちこま)を生剥にして投げ入れたとその起源を記していることから、神事(ないしはその準備)の神聖性を侵犯するものとされるが、本来は単に家畜の皮を剥いで殺傷することとの説もある
逆剥(さかはぎ) - 馬の皮を尻の方から剥ぐこととされ、『古事記』『日本書紀』に生剥と同じ起源を記していることから、これも神事の神聖性を侵犯するものとされるが、本来は単に家畜を殺傷することとの説があるのも同様である

糞戸(くそへ) - 『古事記』『日本書紀』にはスサノオ命が高天原において天照大神が大嘗祭(または新嘗祭)を斎行する神殿に脱糞したのが起源であると記していることから、これも神事に際して祭場を糞などの汚物で汚すこととされるが、また「くそと」と読み、「と」は祝詞(のりと)の「と」と同じく呪的行為を指すとして、本来は肥料としての糞尿に呪いをかけて作物に害を与える行為であるとの説もある

<国津罪[編集]>
・国津罪は病気・災害を含み、現在の観念では「罪」に当たらないものもある点に特徴があるが、一説に天変地異を人が罪を犯したことによって起こる現象と把え、人間が疵を負ったり疾患を被る(またこれによって死に至る)事や不適切な性的関係を結ぶ事によって、その人物の体から穢れが発生し、ひいては天変地異を引き起こす事になるためであると説明する。

生膚断(いきはだたち) - 生きている人の肌に傷をつけることで、所謂傷害罪に相当する
死膚断(しにはだたち) - 直接的解釈では、死んだ人の肌に傷をつけることで、現在の死体損壊罪に相当し、その目的は何らかの呪的行為にあるとされるが、また前項の生膚断が肌を傷つけられた被害者がまだ生存しているのに対し、被害者を傷つけて死に至らしめる、所謂傷害致死罪に相当するとの説もある
白人(しらひと) - 肌の色が白くなる病気で、「白癩(びゃくらい・しらはたけ)」とも呼ばれ、所謂ハンセン病の一種とされる
胡久美(こくみ) - 背中に大きな瘤ができること(所謂せむし)

己(おの)が母犯せる罪 - 実母との相姦(近親相姦)
己が子犯せる罪 - 実子との相姦
母と子と犯せる罪 - ある女と性交し、その後その娘と相姦すること
子と母と犯せる罪 - ある女と性交し、その後その母と相姦すること(以上4罪は『古事記』仲哀天皇段に「上通下通婚(おやこたわけ)」として総括されており、修辞技法として分化されているだけで、意味上の相違はないとの説もある)
畜犯せる罪 - 獣姦のことで、『古事記』仲哀天皇段には「馬婚(うまたわけ)」、「牛婚(うしたわけ)」、「鶏婚(とりたわけ)」、「犬婚(いぬたわけ)」と細分化されている

昆虫(はうむし)の災 - 地面を這う昆虫(毒蛇やムカデ、サソリなど)による災難である
高つ神の災 - 落雷などの天災とされる
高つ鳥の災 - 大殿祭(おおとのほがい)の祝詞には「飛ぶ鳥の災」とあり、猛禽類による家屋損傷などの災難とされる
畜仆し(けものたおし)、蠱物(まじもの)する罪 - 家畜を殺し、その屍体で他人を呪う蠱道(こどう)のことである

なお、『日本書紀』神功皇后摂政元年2月の条にある「阿豆那比(あずない)の罪」(2社の神官を一緒に埋葬すること)もこれに准じる[要出典]ものである。また、『皇太神宮儀式帳』には川入(川に入って溺死すること)[要出典]・火焼(火によって焼死する事)[要出典]を国つ罪に追加している。

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