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投票法成立―「さあ改憲」とはいかぬ
。。。 社説 2007年05月15日(火曜日)付
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憲法改正の是非を問う国民投票法が成立した。野党第1党の民主党も含め、政党間の幅広い合意を目指してきたが、結局、自民と公明の与党が野党の反対を押し切った。
いまの憲法ができて60年。初めて国民投票の手続きを定める法律をつくろうというのに、こんな形の決着になったのはきわめて遺憾である。
衆参各院で3分の2の賛成がなければ発議すらできないという憲法改正の規定は、改正にあたって国民の幅広い合意形成を要請したものだ。そのルールを定める話なのに、参院選への思惑といった政党の損得勘定が絡み、冷静な議論ができないまま終わってしまった。
最低投票率の問題をはじめ、公務員や教員の運動に対する規制など、詰めるべき点を残したままの見切り発車である。18項目にもわたる付帯決議でそうした問題の検討を続けるとしたが、ならばじっくりと論議し、結論を出してから法律をつくるべきではなかったか。
さて、投票法の成立を受けて、安倍首相は7月の参院選で改憲を問う姿勢をますます強めている。
そもそも投票法の成立を急いだのも、それが目的だった。中川秀直自民党幹事長は、今度の選挙で選出される参院議員について「任期6年の間に必ず新憲法発議にかかわることになる」とまで語り、自民党議員の当選には改憲への信任がかかっているとの考えを示した。
改憲の中身として首相が語るのは、自民党が昨年発表した新憲法草案だ。その根幹は9条を変えるところにあると言っていいだろう。
自民党案の9条部分を読んでみよう。
9条2項の戦力不保持や交戦権否認の規定は削除され、代わりに「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」といった文言が入る。
つまりは、現在の自衛隊ではなく、普通の軍隊を持つということだ。自民党は、今後つくる安全保障基本法で自衛軍の使い方をめぐる原則を定めるとしている。だが、たとえ基本法に抑制的な原則をうたったとしても、憲法9条とりわけ2項の歯止めがなくなれば、多数党の判断でどこまでも変えることが可能だ。
集団的自衛権の行使に制約をなくし、海外でも武力行使できるようになる。いつの日か、イラク戦争で米国の同盟国として戦闘正面に立った英国軍と同じになる可能性も否定されないということだ。
首相は憲法を争点にするというのならば、自衛軍を持つことの意味、自衛隊との違いをもっと明確に語る義務がある。「戦後レジームからの脱却」といった、ぼんやりした表現ではすまされない。
投票法ができたといっても、自民党草案や自衛軍についての国民の論議は進んでいない。参院選ではそこをあいまいにすることは許されない。
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