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羽生生純「恋の門 ハンディ版 (4)」

2005-07-16 08:41:32 | 書評
芸術は爆発だぁ!


羽生生純「恋の門 ハンディ版 (4)」。

ちょっとした諍いから、恋乃はマンションを飛び出して毬藻田のもとに走ってしまいます。
翌朝、恋乃は戻ってきますが、彼女が一夜をどのようにすごしたのか、蒼木には分かりません。恋乃は、
彼は私のコスプレを見ても笑ったりせずに「おいで」って言ってくれたわ
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (4)」12頁 Beam comix
と言うだけで、詳細は語りません。

そのため、かつて漫画家だったという毬藻田に、恋人まで奪われてしまうのではないかと、蒼木は苦悩します。
そして、毬藻田と対決を決意し、自然と彼の過去(漫画)と対峙することになります。

毬藻田のかつての作品を読み、なぜ漫画家を諦めることになったのか知ることになったのですが…………。この過去というのが、存外、ありがちなエピソードになっています。
一人の男と一人の女が出会い、漫画家で成功することで二人の生活は豊かになったが、多忙な彼は相手をしてくれなくなり、女の心は満たされない。ついには、
私と漫画とどっちが大事?
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (4)」44頁 Beam comix
と言われてしまう始末(ベタだな)。
そして、女は去り、漫画は行き詰まる。
だが、漫画が書けなくなってしまったことで、女は戻ってくる。
が、生活の基盤を失った男に女は愛想を尽かして、やはり去っていってしまう…………。

つまりは、毬藻田の過去によって、生活を優先させるか? それとも、作品を優先させるか? という永遠(ありがち)の課題が提示されるわけです。(「生まれ出ずる悩み」!)


で、まぁ、毬藻田の間には、なにも無かったということが分かり、蒼木と恋乃の間は修復されます。

しかし、恋乃の会社が倒産するという事件によって、作品と生活という課題が彼ら二人にも現前してきます。

前回、二人の関係を、母子関係に擬せられる、と書きました。

 蒼木門にとって証恋乃は、自分を無条件に保護してくれる存在。
 証恋乃にとって蒼木門は、自分の保護下に置いておきたい存在。

ということなのですが、この関係が、恋乃の失職によって崩れてしまいます。

養おうにも金がない、養われようにも金がない、ということです。


これによって、蒼木の肩に一気に生活の重石がのしかかってきたのですが…………で、次巻に続く、です。


恋の門 (4) ハンディ版 Beam comix

エンターブレイン

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