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羽生生純「恋の門 ハンディ版 (5)」

2005-07-23 09:14:32 | 書評
「この作品の存在そのものが芸術たり得ている」かぁ…………


羽生生純「恋の門 ハンディ版 (5)」。

「生活の柱だった恋乃の勤めていた会社がつぶれて、さぁー大変」というのが前回までの粗筋。


失職してしまった恋乃は、どういうわけか真面目に働こうとはしません。
普通に仕事を探そうともせず、一攫千金を狙ってネズミ講にはまったり、安易に風俗に走ろうともします(結局、蒼木に止められますが)。

これまで普通のOLをしていたのに、どうして恋乃が正業を探そうとしないのか、それがちょっと不可解です。

強いて言えば、蒼木に頼っているということなのかな?


そんな生活の柱にならざる得なくなった蒼木ですが、ついにプロになるべく編集部に持ちこみを行います。
そこで、蒼木の作品を編集者は、こう言います。

何が言いたいの?
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (5)」16頁 Beam comix
まぁ相変わらず石が貼ってあるような漫画ですからね。
むごい言われ方をされても、仕方ないですね…………。

描かれている内容の前に
この作品の存在そのものが芸術たり得ていると思う
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」134頁 Beam comix
などと言われたこともありますが、プロの編集者に言わせると、こう言うことになります。
さっき君は読む前から僕に色々説明してくれたんだけど
もしこの作品が掲載されたら君は本を買ってくれた人全員に 今みたいに
「この作品は普通の漫画じゃなくて」って説明してまわるのかって事なんだよ
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (5)」18~19頁 Beam comix
芸術であれば価値があると思っていた蒼木にしてみれば、自分の作品のみならず、自分自身を根幹から否定されたようなものでした。

で、まぁ、一応青春ものなんで、自己を喪失して茫然自失になるのですが、お約束で、彼の敵であった父の病死を契機に立ち直り、また漫画に手を染め始めます。(こういう流れは、ホント、手本通りといっていいくらい、オーソドックスです)


そして、蒼木と同じく漫画家を志す木背が登場。

「恋愛は三人でするもの」といったのは、柄谷行人だったかな?

毬藻田という、恋乃にちょっかいを出すキャラがいましたが、彼は父親的人物。
かつては売れっ子漫画家であった毬藻田は、打ち倒す存在であっても、競い合うものではりません。
それに比べて、木背は、蒼木と立場を同じくするもの。
この物語の性質上、漫画で争うだけではなく、恋乃をも争うことになります。


で、最終巻へ。


恋の門 (5)

エンターブレイン

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