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羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」

2005-07-12 08:46:24 | 書評
父、登場。


羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」。

なんだかんだで、蒼木門と証恋乃の二人の生活が始まります。

蒼木門にしてみると、衣食住(さらに性)を無条件で与えてくれる証恋乃。
証恋乃にしてみると、理想のコスプレの相手となってくれる(そして自分の世界を、より完璧に再現してくれるアイテムとしての)蒼木門。

まぁ、そんな歪んだ補完性を持った二人(世のカップルなど、多かれ少なかれ歪んだ構造を抱いているのでしょうけど)。

強いて言うと、二人の関係は母子に擬せられるのでしょうか?

蒼木門にとって証恋乃は、自分を無条件に保護してくれる存在。
証恋乃にとって蒼木門は、自分の保護下に置いておきたい存在。


が、子はいつか親から独立していくもの。

蒼木門も、ついに(というか、ようやく)、バイトを探し自立の道を歩もうとします。

そして見つけた店が、「ギャラリーバー ペン」。店内に多数の漫画を並べた、漫画喫茶ならぬ漫画酒屋です。
そこのマスターは毬藻田。彼は、蒼木の作品を見て、バイトの採用不採用を決めると言い出します。で、あの石の張り付いた漫画(?)を見せるのですが、毬藻田の返答ははっきりしたもの。
彼女を愛しているなら
今すぐ こんな事で時間を潰すのを止めて
まともな職を探せ
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」118頁 Beam comix
まぁ順当な回答です。
が、考えて見ますと、これまで蒼木作品を理解できない人間は多くいましたが、蒼木の作品が理解できないこと事態を理解してくれる人間はいませんでした。

例えば、彼の父。
あんなポンチ絵は
絵とは認められん
ただの落書きだ
羽生生純「恋の門 ハンディ版 (3)」41頁 Beam comix
と言うだけ。高い壁となっていますが、彼を導いてくれることはありません。

で、登場が、毬藻田。
蒼木の作品が他人には理解できない、そして理解できないからこそ芸術とうそぶくしかない、単なる自己満足でしかないことを、眼前に突きつけます。

ようは、父の代わりです。


しかし、それは、証恋乃にとっても同じ、というのが皮肉な話。

「ギャラリーバー ペン」で蒼木が働き始めたことで、証恋乃との間には、ちょっとした齟齬が生まれ、それは徐々に大きな溝となり、ついには大喧嘩となってしまいます。

息子にとっての父性が乗り越える対象だとすると、娘にとっての父性は往々にして永遠の保護者となっています。(物語上でも、恋乃の父(両親)もコスプレイヤーであることが明かされています。つまりは、恋乃にとって父性は対立するものではなく、融合する対象となっている)

そんなわけで、恋乃は全て受け入れてくれる毬藻田のもとに走ります。

さて、どうなるんでしょう? で続く、です。


恋の門 (3) ハンディ版

エンターブレイン

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