わたしたちの涙で雪だるまが溶けた
-子どもたちのチェルノブイリ-<o:p></o:p>
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抜粋による連載(第48回)<o:p></o:p>
【 第六章 森よ、河よ、草原よ・・・ 】<o:p></o:p>
小麦の種をまくのが夢だ<o:p></o:p>
アレクセイ・ヒリコ(男) ジリチ村 キーロフ地区<o:p></o:p>
不幸は巨大な鳥のように黒い翼をこの土地の上にひろげ、次の犠牲者を探している。僕は最近までは、新聞やテレビや、そして母や祖母や先生の語る悲しい話からチェルノブイリの悲劇について知るだけだった。<o:p></o:p>
ここジリチはとても美しいところである。ここにはブルゴグ領土の旧屋敷が、十七世紀の記念建造物として残っている。村は巨大な菩提樹の古木や、堂々とカシの木や、魔法使いのようなカエデの並木に囲まれている。ソフホーズの公園には、木の葉が騒がしく音を立てている。村では春になると明るいピンクの花が辺りに咲き乱れ、いい香りでいっぱいになる。花々は人々を喜ばせ、楽しませる。ここでは、夏はもっと美しい。小さなドバスナ川が、心地よい音を立てて僕たちのそばを流れている。僕はその川のひんやりと澄んだ水で泳ぎ、川辺で日光浴をし、友だちと遊ぶのが大好きだ。特に洗礼者ヨハネ祭の日はとても楽しい。草原には大きな火がたかれ、少女たちは川面に花輪を流し、おばあさんたちは心のこもった歌を歌う。<o:p></o:p>
僕には、父、母、兄弟姉妹がいる。僕はみんなが大好きだ。一番下のレーナが生まれたのは一九九三年の夏だった。彼女はとてもきれいでかわいい女の子だった。僕はよく彼女と遊び、彼女の子守をした。だが、レーナは死んでしまった。まだ、たったの生後五か月だった。<o:p></o:p>
僕の家には不幸が居着いてしまった。父と兄たちの目は悲しみに染まってしまった。母が苦しみをこらえ、僕たちに涙を見せないようにしているのを見ると僕はたまらなくなる。母は穏やかで優しく、働き者だった。以前は楽天的で明るく、僕たちに冗談ばかり言っていた。<o:p></o:p>
僕には分かっている。僕たちの不幸の原因はチェルノブイリだ。レーナの病気は脳水腫だと、母はボブルイスクの病院で告げられた。僕たちはレーナのために小さな墓を作り、そのそばにモミの木を植えた。僕たちは度々そこへ行き、僕たちが彼女のことでいかに苦しんだか、そして、彼女をいかに愛しているかを話すのだ。<o:p></o:p>
最近、僕の学校で健康診断が行われた。僕も検診を受け、甲状腺に異常があると言われた。医療相談を受けるためにモギリョフの病院に送られた。健康診断の結果は正しかった。甲状腺肥大の第二期だった。何人かの友だちは第三期だと診断された。僕はよく頭痛がする。目も悪くなり、眼鏡をかけることになった。放射能の影響を低くするために、クルミ、オレンジ、バナナ、パイナップルなど外国の果物をとるように言われる。でもそんなものがどこで手に入れられるというのか。<o:p></o:p>
二年前、僕たちのクラスは療養のため、クリミヤに行った。僕はそこが大変気に入り、みんな目に見えて元気になった。今はもうクリミヤへの旅行もない。療養所の利用券が手に入らないそうだ。いろんな困難があることは分かる。しかしただ一つ理解できないのは、なぜ僕たち子どもが一番苦しまなければならないのか、ということだ。<o:p></o:p>
僕は生きて学校を卒業したら、すでに二人の兄が通っているコルホーズの技術学校に入学したいと思っている。僕は農学者になってこの土地と運命をともにしたい。僕はこの広い大地を治療し、小麦の種をまくことを夢見ている。僕は社会に必要な人間になり、多くの苦しみを見てきたベラルーシのために働きたいと思っている。でも一体、僕の夢は実現するのだろうか。<o:p></o:p>
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