すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

株式会社の全面参入、認可外保育所の拡大と小規模保育奨励が安倍の「待機児童解消加速化」プラン

2013年05月13日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

シリーズ 《アベノミクス版「子ども子育て支援ー待機児童解消加速化」プラン批判 》前回①では、ー安倍首相の「3年間抱っこし放題」発言、自民党の「育児休業3年延長方針」について書きました。今回はその続き、②です。

「待機児童解消加速化」プラン掲げ、安倍政権が子ども子育て支援法の二年前倒し運用

株式会社の認可保育所参入を自治体に促迫 

・・・・5月2日規制改革会議で厚労省が方針表明

 厚労省は、この5月2日、規制改革会議において、「株式会社の認可保育所参入」を広げるように地方自治体に要請して自治体に認可の積極的緩和を促迫するという方針を表明しました。これが財界と安倍政権の意を受けたものであることは言うまでもありません

  現在の制度でも認可保育所の設置主体に制限はなく、株式会社の参入は認められています。しかし、認可するか、認可しないかは都道府県や政令指定都市などの地方自治体に裁量権があり、「保育の質に不安がある」「認可を求めている株式会社には経営上問題がある」などの理由で、株式会社を排除するケースは多々ありました。

 これに対して、「子ども子育て新システム」への反対を無視して昨年8月22日に野田政権下の自公民合意に基づいて成立した「子ども子育て支援法」によって、同法に基づいて2015年4月にスタートする新制度では、国や自治体が定める認可基準以外では、「資金・財産」「経営に必要な知識、経験」「設置者・経営者の社会的信望」の三点をクリアしさえすれば、要件を満たす株式会社として原則認可される仕組みとされたのでした。

  厚労省の子ども子育て支援法の2年の運用前倒しは、財界と一体の自民党・安倍首相の4月19日の「成長戦略スピーチ」での以下(※下記引用・抜粋参照)のツルの一声に対応したものです。

                001
              5月2日朝日新聞夕刊1面トップ

「子ども・子育て支援新制度」のスタートは、2年後を予定しておりました。しかし、そんなに時間をかけて、待ってはいられません。状況は、深刻です。

 そのため、今年度から、このプランを直ちに実施します。

 平成2526年度の二年間で、20万人分の保育の受け皿を整備します。さらに、保育ニーズのピークを迎える平成29年度までに、40万人分の保育の受け皿を確保して、「待機児童ゼロ」を目指します。 (「成長戦略スピーチ」から抜粋)

 この「待ったなし」で安倍首相が「直ちに実現」と言っている子ども子育て支援法の「子ども子育て支援法の運用二年前倒し」「五年間で待機児童ゼロ」の「待機児童解消加速化」プランの狙いは、要約すれば以下の点にあります。

  (1) 「待機児童問題」の深刻な重大社会問題化の中で、7月参議院選を前に「子ども子育て支援」で女性票目当てに、5月5日の子どもの日を前に、「待機児童解消加速化」プランを安倍首相と自民党が前面に押し出したという点にとどまりません。この短期シリーズでの①(前回)で触れたように、

  (2) 9割非正規化による「成長戦略」のカギをなすものとして30代の女性労働力の根こそぎ動員、そこでネックとなってくる待機児童問題の「解消」を掲げないわけにはいかないという政策テーマがあります。さらには、

 (3) 保育・子育てを市場として民間企業に全面的規制緩和で解禁・開放し、財界と歴代自民党の積年の目標であった福祉解体・保育民営化を一気に促進するものです。「待機児童解消の加速化」とは保育解体、「子ども子育て支援」の大ウソによる全面的民営化そのものです。

 (4) 認可保育所における株式会社立保育所による公立保育所の駆逐、乳幼児保育への株式会社立の認可外保育施設・小規模保育の全面的参入によって、政府財界からみたとき保育所が砦となってしまっている公務員労働組合運動・自治体労働運動、保育職場の団結を一掃するという狙いがあります。

「待機児童解消」目的は大ウソ、保育(福祉)の解体、株式会社への開放ゆるすな!

 (1) 「株式会社の認可保育所参入」については、文字通り保育の市場開放を求める株式会社のために行われるのであって、子どもの保育のために行われるものでもなければ、就労と子育てのはざまで苦しむ働く女性と共働き世帯をはじめとした労働者家庭のために行われるものでもありません。ここは自明ですが、あいまいにしてはならない点です。財界と企業の「保育は自治体にやらせず企業に委ね、企業のカネ儲けビジネスに開放しろ、保育から国や自治体も手を引き、保育を明け渡せ」の要求通り、そして国の「国の財政も火の車だ、減らせるものはとことん減らせ、この際、国のカネを保育には回せない」という財政緊縮・福祉きりすて・民営化政策のために、この「株式会社の認可保育所参入」の「待ったなし」「直ちに実現」が行われるのです。

  遡れば、小泉構造改革・規制緩和のもとで、保育所の設置基準は、入所枠でも入所児童数比の職員数比率でも大幅あるいは無制限に緩和・弾力化され、業務委託化・民営化が始まっています。その際に掲げられたのが「待機児童解消」でした。児童福祉法に基づく保育所の設置基準を潜脱した無認可保育所が民間企業・民間個人のカネ儲けのために乱立され、ちびっこ園・全国チェーンでの乳幼児の年間10件にものぼる保育児童の死亡事故が社会的に発覚したとき、国は規制基準として保育所設置基準を無認可保育に厳格に適用し規制を強め、公立保育所の増設・強化をはかるのではなく、逆に「監督下に置く」という名目で、無認可保育を認可外保育所として「合法化」し、届け出を受け報告を受けることで容認し、あわせて、保育所の区分を認可保育所と認可外保育所とし、「無認可保育」という表現をやめ、そういった定義もやめました。国と歴代与党政権は、公立保育所の増設によって保育ニーズに対応するのではなく、民間の導入・活用を福祉としての保育にかわるものとして制度・政策にビルトインし拡大し続けてきたのです。小泉規制緩和、石原都政や東京・杉並区山田前区政をはじめとする「待機児童ゼロ作戦」は、常に、この保育民営化、保育規制緩和の旗印とされてきました。

  民主党政権による「子ども子育て新システム」も、野田政権下の自公民合意による「子ども子育て法」も、安倍政権によるこのたびの「子ども子育て支援法」の運用前倒し-「待機児童解消加速化」プランも、この「待機児童解消」「待機児童ゼロ」を看板に、公的保育(福祉)の解体、保育の市場化、民営化・規制緩和を究極まで推し進めようとするものなのです。

 (2) 安倍首相の「待機児童解消加速化」プラン、とりわけその「柱」として標榜されている「株式会社の認可保育所参入の判断の即時緩和」については、共働き世帯の激増、さらにはダブルジョブ、トリプルジョブなしには生計を賄えない世帯の増加によって、親の就労のために保育に欠ける子どもが大量に発生し保育所に入れない子ども(待機児童)が激増している状態に対して、これを打開し保育を十全に「保育が必要なすべての母親、世帯」に保障するために出されているものではまったくありません。

  ここであらためてハッキリさせなければならない問題は、「待機児童」とは何か、という問題です。2~4万円の保育費なら子どもを預けることもギリギリ何とかできる、やはり認可要件・設置基準というものがあって子どもを安心して預けられるところがよいと思って認可保育所に入所を希望しても、入所希望者が多くて入れない、さらに入所条件、選考基準が厳しすぎて審査で落とされて入れない子どもを指すということです。ここには、重大なうえにも重大、深刻なうえにも深刻な問題があるのです。つまり単なる「空き」待ち、単なる「待機」ではないという問題があるのです。

  言い換えれば、保育を必要としている共働き世帯、すなわち世帯の収入総額から公立保育所を含む認可保育所にしか預けられない水準の世帯で、申し込んでも既に枠が一杯で入所できない、又は就業日数・就業時間、両親の定収額等々のさまざまな理由で入所が拒まれているケースの総数が待機児童数なのです。

  厳格に言えば、本来なら保育所に入れるべき子どもがありながら、公立にも民間認可保育所も入れられず、入所申込そのものもあきらめざるを得ない、現にそうなっている、「公式の入所希望者数」にはカウントされない世帯の児童数もこれに加えるべきでしょう。

 (ⅰ) 【親の就労のために保育に欠ける子どものための福祉として保育があり、保育所はその福祉の施設なのです。この「福祉」という保育の本来の本旨に立って考えることが大切です。保育所に入れることもできない、施設による保育が受けられない子どもとその世帯に対して、社会・国・自治体がどうするのか、これこそが「待機児童」問題と呼ばれている社会問題の本質です。単なる「保育所の空き待ち」「待機」の問題ではありません。つまり福祉としてあるべき保育の欠如・不足・不備・瓦解・解体の現状の問題として、「待機児童」と呼ばれている社会問題はアプローチされ解決されなければならないということです。】

 (ⅱ) 【ここでの深刻かつ重大な“余談”として言えば、これは、戦後の今も、自衛隊や日米安保や沖縄の現実とその悪化や社会保障制度の法律も含めた改廃や労基法の改悪や民営化・非正規化や原発事故や福島圧殺によって、実際には形骸化・空洞化・ないがしろにされていながらも、国家の統治規範(最高法規)たる『日本国憲法』に「改廃」の手がまだ具体的には加えられていない現行憲法の改悪・解体(安倍首相いうところの「憲法改正」 に手をつけるということです。憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)、25条(生存権、国の社会的使命)、27条(勤労の権利)、98条(最高法規の遵守)、99条(憲法尊重擁護の義務)のすべてに反し、否定するのが、「保育に欠ける子ども」「保育に欠ける子どもを抱える世帯」を制度的実体的に排除・切り捨てるアベノミクス(新自由主義)版「子ども子育て支援」「待機児童解消加速化」だからです。】

 踏み込んではっきりさせなければならない点は次の点ではないでしょうか。このような待機児童を抱えた労働者世帯とは、実際には、20代から30代の若い非正規世帯がその圧倒的過半の実体をなしているということです。その子どもたちとは、3歳未満児が大半です。ここに「待機児童問題」といわれる問題の深刻さがあります。

  ③ 株式会社立の認可保育所は、こうした非正規世帯には子どもを入所させたくても選考基準が厳しすぎて入れられないという厳しい現実があるのです。

 

 両親が、ともに就業時間が週5日・1日7時間(休憩時間1時間は別)を満たさなければ、認可保育所の入所の選考基準では受け入れてもらえないというのが実際には今では一般的になってしまっています。認可保育所への入所とは、非正規共働きにとっては「針の穴にラクダを通す」ほどの、ほとんど無理不可能な難関なのです。さらに「非正規共働き」というだけで、ろくに相談に乗らずまともな選考審査もせず、「収入の不安定性」を理由に門前払いで断られるという現実が実際にはまかり通っているのです。

 株式会社立の認可保育所は、たとえ国や自治体が定める設置基準やガイドラインに適合した認可保育所ではあっても、子ども子育て支援法のもとでは、入所は保護者と企業との自由契約のシステムです。入所させるかさせないかは、企業の一方的裁量によって決まります。

   つまり、子ども子育て支援法で児童福祉法や「自治体の実施義務」「児童福祉の措置義務」から基本的に自由(無規制)となった株式会社立の認可保育所の増加は、もっとも保育が必要な非正規世帯、そこに累増している待機児童の問題を、解消・解決するようなものではまったくないのです。

  福祉としての保育を否定・解体し、それにかわるものとして、就業形態や経済状態によって「受けられる世帯」と「受けられない世帯」が生みだされる「子ども子育て支援サービス」の制度に切り替えられ、株式会社は専らその「受けられる世帯」を対象としてその「子ども子育て支援サービス」を提供するものだからです。政府が言う「就業と子育てに苦しむ女性に活躍してもらうために、ネックとなっている待機児童問題の解消のために、株式会社の認可保育所参入を促進し、保育の受け皿を前倒しで準備し確保する」というのが、大ウソであることは、まずもって明らかです。保育の本旨に立った「保育に欠ける子どもとその世帯」すべてに対する福祉でない限り、「待機児童」問題と言われているこの保育の問題は解決されないのです。福祉とはそういうものであり、保育とはそういうものです。「待機児童解消加速化」はそうした、すべての人々に保障されるべき福祉、すべての子どもに保障されるべき保育とは、縁もゆかりもない、その対極にある福祉切り捨て、保育解体です。

これが保育・子育てに苦しむ非正規世帯への「保育・子育て支援」だとでも安倍首相は言うつもりか?!

・・・・認可外保育所への支援と小規模保育の拡大促進とは親たちにとっては、高い利用料を苦労して無理やり工面したうえ、行われる保育への不安を抱えながら、子どもが命を落とす保育事故の危険さえ潜むところへ白紙委任するようなものだ。

 安倍政権は、この株式会社の認可保育所参入の緩和・促進とともに、「待機児童解消加速化」プランの実際のウエイトを認可外保育所への支援の強化による増設と小規模保育の奨励・促進(20人以下の小規模保育、事業所内保育、保育ルーム・保育ママによる預かり保育、保育ママの居宅訪問保育等々)に置いています。安倍首相は4月19日の「成長戦略スピーチ」では「待機児童解消加速化」プランについて、以下のように言っています。

「全国で最も待機児童が多い」という状況から、あの手この手で、わずか3年ほどで、待機児童ゼロを実現した市区町村があります。「横浜市」です。

やれば、できます。要は、やるか、やらないか。

 私は、待機児童の早期解消に向けて、このいわば「横浜方式」を全国に横展開していきたいと考えています。

 まず、これまで国の支援対象ではなかった認可外保育施設についても、将来の認可を目指すことを前提に、力強く支援します。

 これまで支援の対象としてこなかった20人未満の小規模保育や、幼稚園での長時間預かり保育も、支援の対象にします。

 さらに、賃貸ビルなども活用して、多様な主体による保育所設置・新規参入を促すとともに、事業所内保育の要件を緩和して、即効性のある保育の受け皿整備を進めてまいります。

 安倍首相がここで言っている「横浜方式」については、「待機児童解消加速化」プランの実体モデルとなっているので、このシリーズでは、次回③で見ていきます。

 ここでは予め、それに先だって次のことを指摘しておきます。

(1)認可外保育所やいわゆる小規模保育は、認可保育所に入所できない「待機児童」、前述申し上げた点からいえば、その過半をなす非正規共働き世帯の子どもたちの保育の受け皿になり得るでしょうか?

 確かに認可外保育所や小規模保育は、認可保育所のように設置基準や認可要件といったものからは自由ですから、施設数は増やせ、枠としての入所・預かり枠は大きくなるでしょう。

 認可保育所の場合のような入所条件や選考基準もほとんどありません。言いかえれば、保育料金(カネ)さえ払えれば入所させられるでしょう。

 だが、まさにその保育料金(カネ)の問題、認可外保育所や小規模保育たとえば保育ルームや保育ママの場合には、料金の問題が、今度は認可保育所入所の場合の入所倍率、選考基準にかわる《最大の難関》です。現在、実際の可外保育所の保育料金は概ね認可保育所の場合の2倍前後ですが、3倍にもなるところもあるのです。認可外保育所は認可保育所の場合よりもはるかに高いのです。おまけに入所では、認可保育所では求められることもない預かり金まで事前に高額とられます。認可外保育所や小規模保育は、保育を売っているのです。買う金(保育料)がなければ保育は受けさせることはできません。子ども子育て支援法の新制度では、認可保育所への株式会社参入以上に、この認可外保育所や小規模保育の保育料金の問題に、制度のギラギラした本質が現れていると指摘している人も少なくありません。カネがなければ子どもに保育を受けさせられない、いっさいはカネ次第だからです。

 非正規共働き世帯にとっては、両親がともに昼夜分かたずボロボロになるまで働いて稼いでもその何割かが保育料として払う金に消えるのです。認可保育所の保育料金でも厳しいのに、これでは認可保育所に子どもを入れられなかった非正規共働きの世帯にとっては、認可外保育所や保育ルーム・保育ママは、最後の「助け舟」「頼みの綱」にもならないのです。

 しかも、公立保育所や認可保育所のように基準や要綱があって設備やスタッフの水準が確保されている場合と違って、そういうものがない認可外保育所や小規模保育では、子どもを安心して預けることができるでしょうか。子どもがを預けるにも不安を抱かざるを得ないところに、共働きでやっとのことで稼いだなけなしの金をはたいてわが子を預けるしかないというのは、地獄の苦しみに等しいことです。そう思います。

 要するに、安倍首相が言っていること、やろうとしていることは、株式会社の認可保育所参入にせよ、認可外保育所支援にせよ、小規模保育の拡大にせよ、保育を必要としている非正規共働き世帯には、保育などまったく保障しない、保育で苦しんでいる非正規世帯などどうなってもかまわない、というに等しいことです。何が、どこが、「待機児童解消加速化」でしょうか!安倍首相の言っていること(「待機児童解消加速化」)とやっていること(非正規世帯の保育のきりすて)はまったく真逆です。だから大ウソとだまし討ちだというのです。

(2)安倍首相「待機児童解消加速化」プランには、本当に、あげればきりがないほど、怒りに堪えない、ゆるせない点が山ほどあります。

 ◆前掲引用の通り、安倍首相は「あの手この手で待機児童ゼロ実現」「要はやるか、やらないか」「賃貸ビルなども活用」「多様な主体」「即効性のある保育の受け皿」・・・と非常に乱暴で粗雑な手法で「待機児童解消」のためには何でもありといわんばかりです。

 ◆認可外「保育所」、小規模「保育」と「保育」とは言うけれど、肝心の保育の中身については安倍首相は触れるところがありません。これでは、公立保育所に入れられず、民間の認可保育所からもはじかれて、喉から手が出るくらい、藁にもすがる思いで、「子どもの保育」「保活」で苦しんでいる渦中の20代、30代の親であっても、「ちょっと待って」「これでは自分の子どもを安倍首相があげるあの手この手においそれと委ねるってことにはならないのではないか」「いったい子どものこと、子どもを預ける私たちのことを何だと思っているのよ」と考えるのも当然です。

 ◆「賃貸ビルの活用」とか「事業所内保育」とか「あの手この手」を並べていますが、安倍首相は、いま保育所に入れられず「保活」で苦しんでいる世帯の身になって考えたことがあるでしょうか?安倍首相が「保活」に苦しんでいる人間の立場に置かれたら、自分の子どもをさまざまの設置基準が義務付けられている公立保育所や認可保育所ではないところに、預けられるでしょうか?

 ◆まるでコインロッカーに子どもを出し入れする、とにもかくにも預け先さえあればどこでもかまわない、そういう感覚で、いま「保活」で苦しんでいる親たちがいるとでも考えているのでしょうか? 子どもの命と安全、育ちにかかわる保育の問題をこれほど軽々に扱う宰相もいないのではないでしょうか?

 ◆親代わりになって、子どもの命と安全、育ちを預かり、自分の目が子どもに届き、見守ることができる環境、条件、施設空間、複数の経験と知識がある資格を有するスタッフが十分に配置されていて、一瞬目を離したらその一瞬が子どもの死亡事故につながりかねないという緊張ある保育の仕事でスタッフが全神経を集中してチームプレーで臨んではじめて、百人百様に個性があり年齢も特徴も成長段階も異なる子ども、とりわけ乳幼児の保育に責任をとれる職場・・・それが本来の保育の現場であり、保育の仕事というものです。こういう保育のイロハと言うべき連綿たる日常の仕事に、まるで無知無理解なのが、安倍首相の「待機児童解消加速化」プランの「やるかやらないか」「あの手この手」「即効性」の発想ではないでしょうか?

 ◆保育現場では、小泉規制緩和以来、保育事故は画然と増え続け、とりわけ、「子ども子育て支援新システム」議論開始以来、社会的に明らかにされただけでも1年間に10数件の乳幼児の死亡事故が、この数年、続いています。こういう子どもの命と安全の問題、責任を伴っているのが保育だということ、そしていま保育現場が危なくなっているという問題を、一度でも安倍首相は今度の「待機児童解消加速」プランで考えたことがあるでしょうか?一瞬でも子どもの動きから目が離せない、しっかりした体制とスタッフと職場環境・保育スタッフの労働条件なしには保育重大事故が絶えないのが保育の現場です。安倍首相のスピーチからは、そうした保育の現場に対する認識の一かけらも、保育所や小規模保育に子どもを預けて働きに出る親の気持ちに対する思いも気遣いの一かけらもまったく感じ取ることはできません。安倍首相の「待機児童解消加速」プランからわかるのは、子どもを預かる「場所」、「器」、「箱」、「入れ物」さえあれば、預かる「人」さえいれば、それを揃えさえすれば、いま深刻な社会問題にもなっている「待機児童」問題に蓋ができるのではないかという安直で粗雑な発想、無責任な考え方だけです。

 ◆いや、それさえも資本のカネ儲けの道具にしようとしているということです。認可外保育所、小規模保育、事業所内保育、保育ルーム、保育ママ(預かり、居宅派遣)・・・・、すべて企業にかかればカネ儲けの道具です。企業として仕切り、コ―ディネートし、パート・アルバイトを多用し、ピンハネし、・・・・。そこでは必ず子どもの命にかかわる重大事故が起きます。事故はそこで働くスタッフ、パート、アルバイトのせいで起きるのではありません。少なくとも、これからは、「待機児童解消加速化」プラン、そうです、安倍首相あなたが引きおこすのです。

《次回に続く》 ③「横浜方式」とは何か

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする