博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

タラを食べる

2007年05月19日 | 読書・映画
 ダイアモンド氏の一つの答えは北アメリカ大陸から移動してきたイヌイットの人々との抗争に敗北したということと、もう一つはノルマン人の意識に求められるとしています。
 彼らはヨーロッパから持ち込んだ牛や豚、羊や山羊などの牧畜を生業としました。牧畜はグリーンランドの脆弱な土壌にダメージを与え、深刻な侵食をもたらしました。さらに気候の寒冷化が追い打ちをかけ次第に食料不足に陥っていたものと思われます。全く不思議なことに彼らは魚を食べなかったようなのです。彼らの遺跡からは魚の骨が全く出土しないのです。グリーンランド近海は極めて水産資源の豊富な海域であるにも関わらずです。また現代のアイスランドや彼らの故郷のノルウェーが世界的な水産国であること考えるとこれは全く不可解な事実です。
 ダイアモンド氏はおそらく赤毛のエイリークが魚を食べて食中毒になった経験があり、そのために魚食をタブーにしたのではないかと推理しています。さらに彼らがヨーロッパのライフスタイルにこだわったことも原因ではないかと推測しています。彼らはヨーロッパのそれに負けない聖堂を建設し、当時ヨーロッパで流行していた服を着ていたといいます。ついでに食生活もヨーロッパのそれにこだわり続けたのではないかという推測です。こういう意識が厳しい極北の植民地を4世紀にわたって維持させた原動力になった一方、彼らの破滅の原因になったのではないかと考察しています。
 本当は自然条件の変化で牧畜が成り立たなくなった段階で、食糧源を水産物に転換すべきだったのでしょう。しかし彼らはそれを拒んだ。一方イヌイットの人々は自然条件に適合した水産資源の獲得法をマスターしており、厳しくなっていく環境を生き抜くことに成功していました。ノルマン人がイヌイットの人々と共存して彼らに水産物の獲得法を学ぶことができたとすればおそらく彼らは生き抜くことができたと思われます。でもそうはしなかったのですね。イヌイットとは共存するどころか初めて出会ったイヌイットの人をいきなり刃物で刺すような野蛮な真似をしています。さらにヨーロッパからの交易船も途絶えるともう彼らを助けるものはいなくなってしまったのでしょう。
 一方、アイスランドの人々も同じように牧畜を生業にしていましたが、グリーンランド同様に土壌の侵食が始まります。すると彼らはきっぱりと牧畜に見切りを付け水産業に転換しています。これがアイスランドの文明が今日まで千年以上続いている原因です。これまた不思議なことです。アイスランドのノルマン人もグリーンランドのノルマン人も全く同じ民族なのに(そもそもグリーンランドのノルマン人はアイスランドから渡来したわけで)こういう違いが生じているのです。
 たとえ自然環境の悪化という条件があっても意識の転換によって運命を変えることができる。グリーンランドとアイスランドの事例はこうした教訓を含んでいるようです。
※アイスランドの地図はウィキペディアから引用させていただきました。

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