博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

井戸端会議

2015年04月15日 | 読書・映画

 最近「月夜の傘」(久松静児監督、壺井栄原作 1955年制作)という映画を見ました。60年前の映画です。特に期待して見たわけではないのですが、思いのほか面白かったです。「井戸端会議」という言葉がありますね。よく知られている言葉だと思いますが、本物の井戸端会議の場面をご覧になった方はいらっしゃいますか?私は見たことがありません。この映画の見所は、その井戸端会議の場面なのです。映画の舞台は小田急線梅ヶ丘駅近くの新興住宅街です。まだ上下水道がなく、もちろん洗濯機などどこの家にもない。それで、その地域の主婦たちは共同の井戸に集まって洗濯をし世間話をする。これが正に本物の井戸端会議です。冬は水が冷たくてつらいのではと思うのですが、登場人物が井戸水は年間を通して水温が一定しているので冬は暖かく夏は冷たいので、それほどつらくはないと語ります。

 近所に住む音楽家の息子を若くして亡くした婦人が、遺品のピアノを売りたいという話をもってきます。価格は20万円。当時の大卒初任給は1万円もしなかったでしょうからこれはなかなかの大金です。井戸端会議のメンバーの主婦たちがお金を出し合って買おうという相談をします。ある主婦が夫に相談すると夫は「ピアノを買うくらいならテレビを買おうよ」と言います。主婦は「テレビなら近所の蕎麦屋に行けば見ることができる」と答えます。というわけでテレビもない。各家庭の電化製品と言えば、ラジオと照明ぐらいしかないようです。しかし現代のような電化製品が無くても、中高小学生の子供たちは集まって歌を歌うことで楽しんでいます。十分に文化的な生活を送っています。

 私は1960年に生まれたのですが、私が生まれるわずか5年前には、都内の住宅街でも、こういう状況だったというのは新鮮な発見でした。 

 井戸端会議の場面のスチール写真がこちらにあります。 ⇒ http://www.nikkatsu.com/movie/20055.html


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