3月16日のCNNの報道によれば、 北朝鮮で先週、最高人民会議(国会に相当)代議員選挙が実施され、金正恩(キムジョンウン)第1書記の側近らが代議員に選出されたとのことです。同記事によりますと、正恩氏の体制下で初となった代議員選挙は、9日に投票が行われた。中央選管の発表によると、選挙の賛成率は100%。北朝鮮メディアは13日、「北朝鮮の全人民が選挙に参加した」と伝えた。代議員選挙は各選挙区に1人ずつ立候補する、事実上の信任投票であるとのことです。
同記事のソースです ⇒ http://www.cnn.co.jp/world/35045279.html
朝日新聞の記事では、この選挙では候補者の顔ぶれは一部を除いて公表されておらず、選挙区の数も明らかにされていないが,2009年3月の前回選挙では687人の候補者全員が当選し、投票率は99.98%、信任率は100%だったそうです。同記事ではさらに驚くべき事実が記述されています。北朝鮮で〔3月〕9日に実施された最高人民会議の代議員選挙を前に、中国に逃れていた脱北者の一部が秘密裏に北朝鮮への「一時帰国」を試みた。投票せずに脱北が発覚すると,残してきた家族に危害が及ぶことを恐れての行動だ。過去の選挙では毎回100%かそれに近い投票率があり、危険覚悟で故郷をめざした。中国にいる脱北者らの証言によると、過去の選挙でも国民全員の投票が原則だったが、家族らの代理投票が可能だった。ところが今回は投票者の本人確認が徹底され、投票しない場合は理由を徹底調査するとの情報が流れたとのことです。
選挙で投票しないと政府に迫害されるというのもすごい話です。日本で選挙のたびに投票率が下がるということが報道されますが、北朝鮮では投票しないと命にかかわるようです。最高指導者は3代にわたって世襲ですし、およそ北朝鮮ほど民主主義と縁遠い体制は他にないでしょう。
ここで私は強い疑問を持ちました。これほど非民主主義的な体制の北朝鮮が、なぜこれほどまでに手間暇をかけて選挙や投票といった「民主主義の手続き」にこだわるのでしょうか?そんな面倒なことは一切やめてしまってもよいように思いませんか?どうせあらかじめ決まった候補者しか当選しないのですから。しかも北朝鮮から脱出した人々に命がけで投票のために国内に戻ってこさせるというのはいったいどういうことなのでしょうか。命がけで戻ってきても別に意中の候補に投票できるわけでもないのです。北朝鮮の正式国名もそうです。朝鮮民主主義人民共和国といいますが、およそ「民主主義」とも、「人民」とも、「共和国」とも無関係の体制です。いっそ「高麗王国(金朝)」とか、「金氏朝鮮」とかに国名を変えてしまった方が、より実態を正確に表しているでしょう。
しかしそれはどうしてもできないようです。どれほど実態が非民主主義的であっても、あくまで「民主主義」の体面を取り繕わなければならないようです。これはなぜなのでしょうか?(続く)