博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

安保法制に賛成する論理

2015年09月20日 | 時事

 安保法制は遂に成立してしまいましたが、これを廃止にもっていく努力を私なりにしていきたいと思っています。ところで安保法制に賛成する人々は、どのような理由で賛成しているのでしょうか。BLOGOSというオンライン論集がありまして、面白い特集をしています。「安保法制に賛成派の有識者は国会で何を語ったか」というテーマで、様々な立場からの賛成論を紹介しています。例えばこちらです ⇒ http://blogos.com/article/134475/

 まだすべての有識者の賛成論を読み終えてはいませんが、いくつか共通する論点が見えてきました。それらについて私なりに少し考えたことを書いてみたいと思います。数多く提起されている論点として、中国・北朝鮮の脅威が挙げられています。確かに北朝鮮の核武装や中国の軍拡や南シナ海や尖閣諸島周辺での行動は日本の安全保障にとって脅威とは言えるでしょう。しかしこうした日本周辺の国際環境を言うのであれば、1970年代から80年代半ばまでの冷戦期のソ連の脅威はもっと深刻ではなかったでしょうか。特に旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した1979年からしばらくの間はソ連が今にも日本に攻めてくるような論調がマスコミに蔓延していたことを私はよく覚えています。その時代の日本政府は自民党単独政権の時代でしたが、一貫して集団的自衛権の行使を否定していました。これはどういうことなのでしょうか?当時のソ連より現在の中国・北朝鮮がより危険であるという理由は何なのでしょうか?

 理由を考えてみますと、おそらく米国の影響力が当時よりも現在は減退している認識が日本政府当局者の中にあるのでしょう。中国の経済成長に伴う軍拡に対して、もうかつての米ソ角逐のような対応はとれない。だから日本も自前で相応の対応をすべきという認識が日米の政府当局者の間にあるということなのでしょう。

 それならそれで話は分かるのですが、問題は「日本の自前での相応の対応」の中身です。先ず尖閣諸島への中国の不法行動の抑制ですが、これは従来からある個別的自衛権の行使の範囲の案件です。集団的自衛権が行使を想定する案件では明らかにありません。次に南シナ海での中国の行動への対応ですが、南シナ海には日本の領土領海はないので直接の係争はそもそも生じません。ただし南シナ海は中東と日本を結ぶタンカーの航路(シーレーン)があるので、これを中国が妨害するという事案は想定できなくもないですが、仮にそういう事案が生じた場合は中国による公海自由航行権の侵犯ということで、先ずは日中二国間の問題ということになります。やはり集団的自衛権を行使する場面は想定しずらいのです。

 結局、具体的な想定事例として考えられる事案は、安倍総理がこの8月まで「ホルムズ海峡での戦時状態が継続してる中での機雷掃海」を挙げていた事例ぐらいしかないのです。ところがイラン大使からの反論もあったせいか、8月以降は総理自身がこの想定を引っ込めてしまいました。また朝鮮半島で紛争が発生した際に、日本人避難者を便乗させた米軍艦船を自衛隊が護衛する事例を、やはり安倍総理は挙げていました。しかしこの想定も中谷防衛相自身が国会答弁でその可能性を否定してしまったのでした。こうなると支離滅裂としか言いようがないのです。こんな支離滅裂なロジックで国家の政策が決まっていくのだとしたら、これこそ日本国民の全然にとって脅威以外の何物でもないのではないでしょうか。


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