アリの会話
一昨日NHKEテレで再放送された「サイエンスZERO アリに言葉あり」は面白かった。話題はアリの音によるコミュニケーションで、岡山理科大学教授の村上貴弘さんのユニークな研究が紹介された。
研究対象にされたのは中南米に生息するハキリアリ。わたしはこのアリにサンパウロ大学の研究室でお目にかかったことがある。
100万匹単位の大家族集団で、その名の通り木の葉を切り取って巣に運び、キノコを栽培してえさにしている。農業をするアリともいわれる。
テレビ画面を撮影
分業が発達していて、葉の切り取り、切り取った葉の運搬、キノコの栽培、清掃、幼虫の世話など30種類くらいの仕事に分かれているという。
地下に作られる巣は大きくて、トラックが上に乗っかると沈んでしまうという話を聞いた。
ハキリアリが何か音を出しているということは以前から言われていたが、村上さんはこの音を拾う特別なマイクを作って、ハキリアリの音を解析した。10種類以上の音があるという。以下番組で紹介されたことを記述する。
葉を切り取るときに音を出す。無用で切り取る必要のない葉の上ではこれとは違った音を出す。切り取るときの音は他のアリを誘導する。
巣を壊すと女王アリが音を発する。部下のアリを鼓舞して巣の修理と外敵の警戒に当たらせる。
音を出さないようにすると、アリはキノコを育てなくなる。音が聞こえないようにするとアリはウロウロするだけで社会的行動をしなくなる。
ハキリアリの近縁種を調べると、進化の順が新しくなるにつれて集団が大きくなり、音を出す頻度が増加する。大きな社会集団の維持には、音によるコミュニケーションの必要性が増加しているといえる。
アリは音を出すものと出さないものの2種類に分かれる。腹部と胸部の境目にある腹柄節が2個あるアリは音を出す。腹部の上部に表面がギザギザの発音器官があり、これをこすって音を出す。打楽器のギロと同じ仕組みである。
ギロ
音の受容器官は肢にある。空気の振動でなく、肢が接触している枝ような固形物を通ってくる振動を受信する。
わたしは。アリがフェロモンによって情報伝達をするのは知っていたが、音でコミュニケーションを取っていたことは知らなかった。
村上さんの発見は、世界で初めてだそうである。耳では感じることのできないかすかな音を拾い、それらの音の持つ意味を解明した、ユニークなそして粘り強い研究の成果に心から拍手を送りたい。
ハキリアリは農業害虫で、農薬によって駆除されている。村上さんは音を通じてハキリアリとコミュニケーションをはかり、うまく共生できないかと考えている。
そんなことができたらなんと素晴らしいことだろう。
STOP WAR!