長野で俳句旅(後半)
9月1日のブログに書いた、夏井いつきさんとROLANDさんによる『よみ旅』(NHKEテレ)長野編の後半である。昨晩の放送を録画しておいて観た。
今回は中信地区の松本市と安曇野市が訪問先だった。
お二人は松本城にのぼり、そこで見た木組みの技術を受け継ぐ松本家具の工房を見学した後、土蔵造りが並ぶ松本市仲町通りを通って、句会の会場へ。投稿された118句から選ばれた5句が紹介された。
大網悦子様:薫風やスタジアムには山雅旗
大網さんは13年来の地元サッカーチーム「山雅」のファン。はじめは何も知らずタダ券で試合を見に行ったが、応援の人たちが楽しそうで仲間入りした。日本アルプスをバックにしたアルウィンスタジアムで応援するのは気持ちよさそうである。「山雅」は一時J1に昇格し、応援する地元の熱気もすごかった。しかし、コロナ禍を境に観客数が激減し、現在はJ3の9位である。一頃あった熱気は醒めたように見えたが、J3では観客動員数1位とか。なんとなくほっとした。
高山良一様:雪の肌葉っぱで隠す朴葉餅
高山さんは木曽在住。寒さのせいで柏が育たないので、柏餅の柏の代わりに朴の葉で餅を包む。懐かしいお菓子だ。葉っぱを広げると葉の香りを漂わせた餅の白肌が現れる。小豆餡と味噌餡があった。高山さんは48歳で脱サラし、2千万円の借入金でストーブの販売を起業した。以来30年、借金は20年で完済した。ストーブは一家団欒の中心として家に置くものと、設計士にもお願いしてストーブを売り込んでいる。
佐々木由美様:老親と待つ「昆布ニュース」夏の山
佐々木さんは夫と娘を東京に残して両親の介護で実家に戻っている。次男が北海道に就職したので、つながりを求めて、利尻昆布のオーナー募集に応募し、一口株主になった。昆布が送られてきて両親と味わうのを楽しみにしている。突っ張りでお互いに喧嘩をしていた長男が、今は祖父の介護を熱心にしてくれている。佐々木家の氷河期は過去のものとなった。
上条千恵子様:漬物鉢今はメダカの棲みかなり
お母さんが亡くなって、粕漬けや糠漬けに使っていた鉢が不要になり、孫が大好きなメダカが泳いでいる。お母さんの存命中に、もっといろいろなことを教わっておけばよかったと悔いている。亡くなる2日前に栗の渋皮の剝き方を教わって、それだけはできるようになった。
鈴木美樹様:葉桜や収骨室を後にして
鈴木さんのお父さんは、この4月に亡くなった。朝起きてこないので行ってみたらベッドで亡くなっていた。その前日、お母さんに自分の骨は焼き切って拾うなんて面倒なことはしないようにといい、死ぬ直前にファンヒーターをつけて家を温めてくれた。家族のことを気遣ってくれたお父さんに思いをいたし、収骨室をすがすがしい気持ちで後にした。俳句は夏井さんのテレビで勉強していて、この句ができたのがお父さんの月命日で、思い切って投稿した。季語の葉桜には、花が散った寂寥と新たな葉が出てきた明るさが込められていて、季語に自分の思いを託したこの句は素晴らしいと、夏井さんが激賞していた。わたしは自分の身に引き寄せて、いいなあと思った。
夏井さんとROLANDさんは安曇野の山葵田を訪ねている。扇状地伏流水が安曇野で湧き出す日本アルプスの雪解け水に恵まれ、安曇野の山葵栽培は百年の歴史を誇り、生産量は全国で一番になっている。訪問先の生産者の望月さんは、自分の作った山葵を世界に広めたいと思っている。
そこで詠んだ夏井さんの一句:山葵田のみづ百年を湧く大志
STOP WAR!