すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

読み返すべき人を悼む

2023年12月05日 | 雑記帳
 最近続く訃報に心が重い。作家、伊集院静。その著作はかなり読んでいる。小説、エッセイ共に文庫版が多かったが、7,8割程度は読了しているはずだ。その出自や経歴はドラマのようであるが、まさしく生き方そのもので体現されていた。「男が憧れる男」という形容が似合うのは、時代の流れだけではなかった。


 10年ほど前に、初めてのミステリ作品として書かれた『星月夜』を読んだメモは半端に分析じみでいるが、やはり魅力的で一昨年再読した時に妙に心に残った。グラスを持てば、名曲『愚か者』が胸をよぎる。やはりあの曲はやっぱり「ショーケンバージョン」の方が似合わないか、伊集院さんよう、と呟きたくなる。


 詩人三木卓。その名は学生の頃から知っていた。そして教科書にある『お手紙』の訳者として強くインプットされた。図書館に務め、印象深い一冊に出会う。読み聞かせる機会は少なかったが、結構この絵本は読み込んだ。意外な文章を新聞や雑誌等で目にした記憶がある。「新書をよく読む」を老境の支えにしたことだ。





 脚本家山田太一。ドラマのクレジットにその名を見つければ、忘れず観るようにしてきた一人だ。数々の名作がある。多くのヒット作はもちろん、あまり知られていないところで印象深い作品は、『ありふれた奇跡』という十数年前の連続ドラマだ。仲間由紀恵と加瀬亮の主演。調べたら2009年のフジTV放送である。


 今でも「山田太一脚本だなあ」と強く感じたポイントを覚えている。それは「言い淀み」や「間投詞」が多いことだ。スピード、パフォーマンス、コミュニケーション等々。世の中でもてはやされるスマートな語や姿からかけ離れていた演技が、実は人間の本性の一つではないか。ギクシャクする通じ合いこそ太くないか。