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『二番目の悪者』は相当の…

2021年12月08日 | 絵本
 読み切ると18分程度になる。読み聞かせに使った絵本としては『リンドバーグ』に次ぐ長さだ。内容は高学年以上だろう。今回、PTA研修として親子一緒の機会に恵まれ、時間が30分あるというので取り上げてみた。歯ごたえというか読みごたえ十分の一冊である。練習も含め、10回以上は通読したが足りない。


『二番目の悪者』
 (林 木林・作  庄野ナホコ・絵) 




 自らの外面に自信たっぷりの金色のライオンが、その行動で信頼を集める銀のライオンを貶めようと画策し、偽りの噂をばらまき、結果国が滅亡する話である。「ほんとうにこれがつくり話だと言えるだろうか」というプロローグが、作者の訴えたいことをずばりと記している。フェイクニュースという現実にも重なる。


 真っ赤な表紙絵が印象深い。またどのページも写実的なタッチを使い、展開に合わせて描かれるが、どこか演劇の舞台を見るようなイメージもあり、語りの重要性に気づかされる。金色のライオンの狡猾さや、初めは信じないが徐々にその言葉に翻弄されていく複数の動物たちの心理など、会話の文章にも流れがある。


 これはきっとBGMなどを準備し、複数の読み手で行ったら面白くなるというアイデアが浮かぶ。しかしそれはまたいつかの機会と考え、一人で多人数に聴かせるとしたら、正攻法だが「語り」と「台詞」の読み分けになる。複数の動物たちの会話はテンポなどで変化をつけたい。いい物語だが相当の覚悟も必要だ。